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CDタイトル: Rachmaninoff Complete Works for Two Pianos
        and Piano Four and Six Hands
曲目:S.V.Rachmaninoff
    2台のピヤノのための組曲第1番「幻想的絵画」 Op.5
    2台のピヤノのための組曲第2番 Op.17
    ロシヤ狂詩曲(2台ピアノのための)
    ピヤノ連弾のための6つの小品 Op.11
    ピヤノ6手連弾のための2つの小品
    ピヤノ連弾のための「イタリアン・ポルカ」
    シンフォニック・ダンス Op.45 (2台ピヤノ版:作曲者自編)
    ピヤノ連弾のためのロマンス ト長調
    前奏曲 嬰ハ短調 Op.3-2 (2台ピヤノ版:作曲者自編)
演奏: Ingryd Thorson & Julien Thurber
CD番号: PAULA PACD 46

S.V.Rachmaninoffの書いた連弾曲および2台ピヤノ曲の、ほぼ全てを収録した貴重なCD。資料的に貴重なばかりでなく、演奏もなかなか立派で、聴いていて大変に楽しめます。もちろん曲によっては、「別の演奏者の方が良い」というものもありますが、総じて快速な中にも重量感を感じさせ、切れ味良く、そしてスケールの大きい演奏を聴かせてくれております。

中でも聴き所は、「6手連弾のための2つの小品」。特に「ロマンス」が素晴らしい! テルツォの静かなモノローグに、セコンダが加わり、プリモが「これでもか」という叙情的な旋律を繰り出します。そしてそれが段々と盛り上がってテルツォが堂々と主題を奏でるクライマックスへ・・・。そのダイナミクスと表情の変化には、小品の演奏ながら目を見張るものがあります。この曲、何種類かのCDを聴きましたが、この演奏が断然トップ! この演奏に耳慣れてしまうと、他の演奏が冗長に聞こえてしまいます。ちなみにこの曲、譜面を見ると簡単そうですが、きれいに合わせ、うまく表情を付けようとすると、かなり厄介な代物です。それをものの見事に弾ききっているのが、何とも言えず聴いていて快感です。なおこのCDで6手の作品には、どのパートか分かりませんが「David Gardiner」という人が加わっております。

その他の曲の演奏も誠に立派で、聴いて損はないCDと言えましょう。「6つの小品」もなかなかの出来です。Rachmaninoff自身の編曲による「前奏曲 嬰ハ短調 Op.3-2」など、とても面白く弾いておりますよ。

なお「編曲物」に関しては、作曲者自編の曲のみを取り上げています。

このCD、2001年7月30日現在で現役。「amazon.com」で容易に入手できます。
(2001年7月30日記)

CDタイトル: Wagner Higlights -- Arranged for Two Pianos by Max Reger
曲目:R.Wagner
    「タンホイザー」序曲 (M.Reger編曲)
    「タンホイザー」 --- ヴェヌスベルグ・バッカナーレ(P.Dukas編曲)
    「ワルキューレ」 --- ヴォータンの別れと魔の炎の音楽(M.Reger編曲)
    「ニュルンベルグのマイスタージンガー」前奏曲(M.Reger編曲)
    「トリスタンとイゾルデ」 --- 前奏曲と愛の死(M.Reger編曲)
演奏: Yukie Nagai & Dag Achatz
CD番号: BIS CD-976

いつも高度な2台ピヤノのアンサンブルを聴かせて下さっている、永井幸枝氏とダグ・アシャツ氏による、Max Reger編曲によるWagnerの名曲集です。これまで数々の「編曲物」を演奏会で取り上げ、そして録音してきたお二人ですが、このCDでも名演を聴かせてくれます。

CDタイトルは「Wagner Hilights --- Arranged for Two Pianos by Max Reger」となっておりますが、Paul Dukasによる編曲が1曲だけ混ざっております。

Reger編曲というと、何だか難解そうですが、そうした“心配”はまったくありません。むしろ非常にピヤニスティックであることに驚かされます。“2台のピヤノ”という楽器構成による書法を極限まで追求した、非常に素晴らしい編曲です。原曲の良さを維持したまま、聴き手や弾き手を2台ピヤノの世界に引きずり込みます。まるで、あたかも最初から2台ピヤノ用の曲であったかのように。

その名編曲を、永井+アシャツ組は編曲の素晴らしさを前面に押し出して、緻密なアンサンブルと切れ味の良いタッチで弾き切っております。Wagner作品の4手用編曲としては、Yaara Tal & Andreas Groethuysen組が連弾版の、それは素晴らしい名演を収めたCDを出しています。この永井+アシャツ組はTal & Groethuysen組のCDと双璧をなす名演奏といって良いでしょう。聴いて損はありません。

この演奏を聴いて、レパートリにしたいと思われる方もいらっしゃることでしょう。Reger編曲はPetersから、Dukas編曲はDurandから出版されておりました。残念ながら、いずれも絶版です。しかし幸いなことに、Petersから出ていたReger編曲は、コピー譜が入手できます。ご興味のある方はPetersにメールで問い合わせてみては如何でしょうか? PetersのWebサイトからメールを出すことができます。ちなみにメール・アドレスは「info@edition-peters.de」です。NYやLondonにもPetersはありますが、コピー譜の依頼はFrankfurtの、このアドレスにするのがベストです。メールは英語で大丈夫。なおDukas編曲ですが、Durandがコピー譜作成依頼に応じてくれるかどうかは分かりません。念のためファクシミリ番号を。日本からですと、001-33-1-45-636291。同社のWebサイトはありません。

余談ですが、このCDの解説はドイツMax Reger InstituteのSusanne Poppeさんとおっしゃる方が執筆していらっしゃいます。この解説が実に秀逸。

このCD、2001年7月22日現在で現役。ただしオンラインで購入するのは難しいようです。お近くのCDショップに出向いて発注して下さい。なお日本国内では、キングインターナショナルが日本語解説を付けた直輸入盤を出しています。CD番号は「KKCC-2291」。ちなみにこの日本語解説、連弾研究の第一人者である松永晴紀先生が執筆していらっしゃいます。この解説も実に読み応えがあります。(2001年7月22日記)

曲目:F.Liszt ハンガリー狂詩曲 第2番 (連弾版:L.Windsperger編曲)
         さらば楽しまん(フモレスケ) (連弾版:作曲者自編)
         祝典ポロネーズ (連弾オリジナル)
         クリスマス・ツリー (連弾版:作曲者自編)
演奏:Pinucia Giarmana & Alessandro Lucchetti
CD番号: GALLO CD-817

リストの連弾曲ばかりを集めた、貴重なCD。リストの1台4手作品を、これだけまとめて聴けるCDは、ほとんど見当たりません。この連弾曲たちを、イタリー出身のデュオが、明瞭なタッチかつ快活な演奏で纏めております。実に爽やかな演奏です。これで録音がもう少し良ければ、言うことなし。残念ながら、あたかも薄い霧がかかったような音色で、ピヤノの音が、やや遠方に捉えられております。録音で、相当損をしていますね。それでも連弾好き、特にリストおよび後期ロマン派が好きな向きには、堪えられないCDと言えましょう。

最初の「ハンガリー狂詩曲第2番」は、原調の嬰ハ短調をハ短調に移調した編曲物。詳しくは「こちら」をどうぞ。この演奏、かなりの「快速テンポ」で、グイグイと曲を弾き進めています。それでも「軽い調子」になっていないところが、大変に評価できます。通常ですと11分前後で演奏する曲ですが、ここでは10分6秒で弾いています。聴いていると、かなり速く感じますね。

2番目の「さらば楽しまん」は、男声合唱と管弦楽のための作品の連弾用編曲。原曲は1869年の作品です。タイトル通り、とても華やかで楽しい曲ですよ。で、楽譜を見てみたくて探したのですが、どこから出ているのか、とうとう分かりませんでした。Editio Musica Budapestあたりが怪しかったのですが、最新カタログに見当たりません。他のデータベースも検索したのですが、分からず仕舞い。原曲の楽譜なら(こんな珍しい曲にも関わらず)簡単に入手できるのですが・・・。残念・・・。リストの作品カタログを参照すると、この曲以外にも作曲者自身による合唱曲の連弾用編曲が幾つもあることが分かります。しかし現在出版が確認されているのは「十字架への道標」のみです。これはEditio Musica Budapestから出ています。

「祝典ポロネーズ」。リスト唯一の完全オリジナル連弾曲とされている作品ですね。最初この演奏を聴いて、わたしたちは腰を抜かしました。実はこの曲、わたしたち自身で演奏したことがあったのです。その演奏と全然テンポが違うっ! わたしたちは全曲を約4分で弾いていたのですが、何とこのCDでは3分丁度で弾いています。恐ろしく快速に聞こえました。もちろん「弾き飛ばして」いるのではなく、華やかで実に立派な演奏です。しかしながらテンポがこれだけ違うと、まるで別の曲のように聞こえます。おまけにアクセントの付け方も全然違っているし・・・。自分たち以外の演奏でこの曲を聴いたのは、当該CDが初めて。「この曲は、こうやって弾くモノなんだ・・・」と、ガックリ来たわたしたちでありました。しかし後になって分かったのですが、これは例外的に速い演奏だったのです。松永晴紀先生の「ピアノ・デュオ 作品事典」による「標準的な演奏時間」は3分35秒、その他の方々(CDなど)も4分弱で弾いておりました。何はともあれ、初めてこの曲をこのCDでお聴きになる方、これが「標準」だと思わないで下さい。

そして「クリスマス・ツリー」。この曲の演奏も他の3曲と同様に、かなりの快速ですが、細部まで配慮が行き届いた、素晴らしい出来になっております。

総じて「聴いて損なし」と評価できる立派な演奏です。前述のように録音が良くないのが、非常に残念です。

このCD、2001年7月15日時点で現役。「amazon.com」で簡単に入手できます。(2001年7月15日記)

曲目:W.A.Mozart = E.Grieg
    (Mozart's sonatas rewritten for 2 pianos)
    ピヤノ・ソナタ ト長調 Kv.283/189h
    幻想曲 ハ短調 Kv.475
    ピヤノ・ソナタ ハ短調 Kv.457
    ピヤノ・ソナタ ヘ長調 Kv.533 および ロンド ヘ長調 Kv.494
    ピヤノ・ソナタ ハ長調 Kv.545
演奏:Prague Piano Duo (Zdenka & Martin Hrsel)
CD番号: Praga Digitals : PRD 250 142 (harmonia mundi : HMCD 90)

ともすれば、「キワモノ」扱いされてしまうこともある、これらの曲。そのため、1部の曲、例えば「ソナタ ハ長調 KV.545」などを除いて、その全貌を録音したケースは恐らくなかったでしょう。このCDの解説にも、「W.A.MozartのソナタなどにE.Griegが第2ピヤノを付けた作品の全曲録音は世界初である」と記載されております。

「世界初」でも演奏がダメでは、何の価値もありません。ところがこのCDの演奏は、実に立派です。これらの曲が非常に素晴らしい「2台ピヤノ曲」であることを如実に示しており、その意味で大変評価できます。これを聴くと「キワモノ」どころか、立派な2台ピヤノ曲であることが再認識させられることでしょう。

もちろん原曲は、完全に独立して完成された音楽です。そこに違和感なく第2ピヤノを付け加え、まったく別の音楽にしてしまったのが、このCDに収録された曲たちです。もちろん「Griegの奴、余分なものを作りやがって」という方もいらっしゃるかも知れません。確かに、そうした見方もできないことはありません。しかし、「これらの曲たちは、原曲とは全く別物である」との見方をすれば、それはそれで大変に面白い作品として聴くこと、そして弾くことができることも事実です。まあ、人それぞれによって価値観の違いはありますでしょうけれど。

何はともあれ、チェコ出身の夫婦デュオは、これらの作品を非常に面白く、楽しく、そして素敵に弾いております。正直言って、「これ、こんなに立派で面白い作品だったかしら?」と、少々驚かせられた、わたくしたちであります。以前、Rachmaninoffの「死の島」(連弾版)を収録したCDをこの欄で紹介したとき、「このデュオは、人が殆ど演奏しない曲を、曲の魅力を失わせることなく演奏する」という趣旨のことを書きました。このCDでも、まさにその言葉が当てはまります。

このCD、2001年7月8日時点で現役。「amazon.com」で簡単に入手できます。(2001年7月8日記)

CDタイトル:Romantic Sonatas for Piano Duet
曲目:I.Moscheles : グランド・ソナタ 変ホ長調 作品47
    Z.Fibich : ソナタ 変ロ長調 作品28
    H.Goetz : ソナタ ト短調 作品17
演奏:Anthony Goldstone & Caroline Clemmow
CD番号: Meridian CDE 84237

ちょっと珍しい曲目ですが、聴いておいて損はないCDです。特にFibichとGoetzが素敵です。Moschelesは、作品自体がそれほど面白いものではありませんでした。

いずれも手堅くまとめた演奏ですが、FibichとGoetzに関しては、面白く聴けます。派手ではありませんが、作品の良さを充分に出し切った演奏です。これをお聴きになったら「レパートリにしたいな」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

Fibichのソナタ。初秋の夕暮れを思わせる、非常に叙情的かつピヤニスティックな作品です。第一楽章はソナタ形式、第二楽章は変奏曲、第三楽章はロンド・・・と、かなり古典的な構成ですが、素朴で流麗な旋律と和声には、思わず魅せられてしまうものがあります。連弾用ソナタとしては、第一級品でしょう。楽譜はスイスの「Amadeus」という出版社から出ていて、容易に入手可能です。

一方のGoetzのソナタ。こちらは、何とも言い難い「暗い浪漫」に満ちた名作です。35歳という若さで夭逝した作曲者の、末路を暗示させるような曲です。暗さの中にも、どこかに「光」を見つけようとするような「儚さ」を感じされられる1曲。非常にピヤニスティックであります。楽譜はPetersから現役で出ており、入手も容易です。それなのに、なかなか耳にすることができません。その意味で、かなり不幸な曲です。

こうした素敵な曲たちを、GoldstoneとClemmowのお二人は、実に鮮やかに弾ききっております。ちなみに、このデュオ、1984年にデュオ活動を始めた・・・という以外、経歴などは不明です。何はともあれ、この2曲、聴いて損にはなりません。

で、Moschelesは、どうなの? ・・・曲自体があまり面白くありませんでした。聴いて損をしても、当方では責任を負いかねます。3回聴いて、もう結構。少なくとも、わたしたちにとっては、長いばかりでつまらない曲でした。楽譜がどこから出ていて、現役か絶版か、一応は調べてみましたが、分かりませんでした。興味が涌かなかったので、あまり熱心に調べなかったせいかも知れません。

このCD、2001年7月1日現在で現役。「www.amazon.co.uk」で、簡単に入手できます。
(2001/07/01記)

曲目:J.Bizet : 子供の遊び 作品22
    G.Faure : ドリー 作品 56
    M.Ravel : マ・メール・ロワ
演奏:Katia & Marielle Labeque
CD番号: Phillips 420 159-2

今回は、連弾曲の「定番」とも言える、超有名曲を3曲収録したCDを取り上げてみました。この3曲、わたしたちは複数種の演奏をCDで所有しています。いずれも甲乙付けがたい名演奏です。どれにしようか迷ったのですが、最近入手して---もっとも、録音はやや古いのですが---はっとさせられた、この演奏を選びました。他のCDは、別の曲を含んでいるため、また後日紹介する機会があると考えたことも、このCDを選んだ要因です。

さて、この演奏。普段のLabequeの演奏からすると、かなり「大人しい」部類に入ります。かと言って、面白くないかといえば、さにあらず。抜群に面白い演奏です。叙情性、テクニック、アンサンブル・・・どれをとっても非常に高度で、かつバランスの取れた演奏になっています。いずれの曲も、良い意味での「色気」が感じられる演奏ですね。特に「マ・メール・ロワ」で、これだけの「色気」を感じさせる演奏は、ちょっと見当たりません。

これは、「ピアノ・デュオ作品事典」の著者である松永晴紀・茨城女子短期大学教授もご指摘されていらっしゃることですが、このCD、3つの作品の特性を非常に良く把握し、驚くほど素晴らしく、それぞれの曲を弾き分けております。各作品に対するアプローチが、まったく異なっていて、しかも、曲の特性を鮮やかに引き出している点は、注目に値します。ただし、「家庭的な、ほんわかムード」の演奏をお好みの方には、やや不向きかも知れません。

何はともあれ、このデュオが「こんな演奏も聴かせるのか」と、ちょっと意外性も感じさせる1枚です。


このCD、2001年6月23日現在で現役。「amazon.fr」で、簡単に入手できます。
(2001/06/24記)

CDタイトル: こんなときに 〜 ピアノでえがくメルヘン
曲目:三善 晃: 「Cahier Sonore」(カイエ・ソノール:音の手帳) ピアノ連弾のための
           唱歌の四季 2台ピヤノ版  ほか
演奏:田中 瑤子 + 三善 晃
CD番号:フォンテック Fontec EFCD3201

現代音楽の名手だった故・田中瑤子さんと作曲者自身による名演奏。清冽な叙情を湛えたこの演奏は、曲の持つ魅力を充分に引き出しております。この演奏を聴いて、ここに収められた曲たちを弾いてみたくなる方も多いのではないでしょうか。「唱歌の四季」に関しては、「こちら」をご参照下さい。

作曲者が参加した演奏なので、作曲の意図が非常によく伝わってきます。もちろん別の解釈もありうる訳で、わたしたちも「ここは、ちょっと別の表現をとったら面白いかな」というところも何カ所かはあります。ですから、作曲者本人が弾いているということを、聴く上ではあまり意識する必要はないのかも知れません。この演奏に関してもいろいろな評価ができるでしょう。でも、少なくともわたしたちは「名演奏」であると判断した次第です。

ちなみに夫・かずみは、このデュオによる生演奏を聴く幸せに恵まれました。その時の演目は三善さんの「2台のピアノのための響像(I)」でした。これは見事でしたね。余談ですが、たった1度だけ、田中さんとお酒の席をご一緒させて頂いたことがあります。田中さんは、本当に素敵な方でした。このCDの演奏からも、そんな田中さんのお人柄が感じられます。かずみにとっては、懐かしい思い出を含んだCDであります。

なお、このCDには、上記2曲のほか、三善さんのピヤノ・ソロ曲である、「組曲・こんなときに」、「音の森」、「海の日記帳」(注:音の森と海の日記帳は、それぞれ抜粋)が、田中さんの演奏で収録されています。これらも素敵な曲ですよ。


このCD、2001年6月17日現在で現役。国内であれば一般のCD店で入手可能。またフォンテックのWebサイト」でオンライン購入ができます。ただ、このサイト、検索が結構厄介です。海外の方でこのCDを入手したい場合は、フォンテックに直接メールで問い合わせてみては如何でしょうか?
(2001/06/17記)

曲目:S.V.Rachmaninoff:2台のピヤノのための組曲第2番 作品17
               交響詩 「死の島」 作品29 (連弾版:O.Taubmann編曲)
               交響的舞曲 作品45 (2台ピヤノ版:作曲者自編)
演奏:Prague Piano Duo (Zdenka & Martin Hrsel)
CD番号:Praga Digitals : PRD 250 131 (harmonia mundi : HMCD 90)

このデュオ、いくつか入手したCDでは、どれも手堅い演奏を聴かせております。人によっては、あまり面白くない演奏かも知れません。このCDでも「組曲第2番」や「交響的舞曲」の演奏などは、ごくごく大人しい平凡な演奏です。しかし、このデュオの特筆すべきところは、1枚のCDの中で、必ず「世界初録音」、あるいはそれに近い曲目を混ぜていることです。このCDでも、ごく一部の演奏者や研究者の間でしか知られていなかった、交響詩「死の島」の1台4手用編曲を取り上げているのです。

もちろん、このCDの聴き所は、「死の島」。非常に繊細で、息の合った演奏をしています。この曲の連弾用編曲の楽譜は、かなり声部が交錯しており、綺麗に弾こうとしたら相当に神経を使わなければなりません。しかしこのチェコ出身の夫婦デュオは、楽譜の複雑さをまったく感じさせない瑞々しい演奏を聴かせてくれます。この曲が、こんなに素敵にピヤノで響くとは、思いもよりませんでした。

華やかさにはやや欠ける演奏です。しかし、楽譜の細部まで入念に検討して録音に望んだであろうこの演奏は、「華やかさ」という不足分を補って余りあります。これ1曲を聴くだけのために、このCDを入手しても後悔しません。そもそも、まさか「死の島」の連弾用編曲がCDで聴くことができるようになるなど、思ってもみませんでした。それも、このような高水準の演奏で・・・。

いずれにしても、このデュオの「人が殆ど演奏しない曲を、曲の魅力を失わさせることなく演奏し、録音として世に出す」という姿勢には、とても敬服させられます。ライヴでも、是非聴いてみたいデュオですね。


このCD、2001年6月10日現在で現役。「amazon.com」、あるいは「amazon.fr」で簡単に購入できます。フランスのCDなので「amazon.fr」の方が、確実かつ早急に入手できます。これを書いた時点でamazon.fr」には「24時間以内に出荷可能」と記載されておりました。経験上このサイト、本当に24時間以内に出荷します。
(2001/06/10記)

曲目:A.Arensky:2台のピヤノのための組曲第1番 作品15
                       組曲第2番 作品23
                       組曲第3番 作品33
                       組曲第4番 作品62
演奏:Stephen Coombs & Ian Munro
CD番号:Hyperion : CDA 66755

アレンスキには、2台のピヤノのための組曲が全部で5曲あります。そのうち第5番「カノン形式による組曲」を除いた4曲を収録しています。アレンスキの組曲は、第1番の演奏だけはたくさん録音されていますが、他の曲となると誠に寂しい限り。皆無に等しいのが現状です。どれも浪漫的でピヤニスティックな素晴らしい2台ピヤノ曲用の作品であるにも関わらず。そうした中で、これら秀作の、ほぼ全貌を捉えるのに絶好の録音が、このCDです。

 「珍しい曲の録音」となると、結構酷い演奏が数多くCD化されているのが現状です。しかし、この演奏では、そうした心配はいりません。4曲とも、曲本来の魅力を存分に引き出して、これらの秀作が「埋もれてしまっている」ことの文化的損失を如実に提示しております。

個々の奏者のテクニックは相当にしっかりしていますし、アンサンブルも平均水準をはるかに超えております。いずれもスケールが大きく、メリハリのついた切れ味の良い素晴らしい演奏。特に組曲第4番の第3曲「夢」は出色です。当然、演奏には聴き手の好みがありますが、何はともあれ、この演奏を聴かないのは「損」でしょう。

このCD、ただひとつの欠点は、組曲第5番が収録されていないことにあります。これさえ入っていれば、もう完璧だったのですが。とても残念です。


 なお、このCD。2001年6月3日現在で現役。「amazon.com」で簡単に購入できます。
(2001/06/03記)

曲目:A.Schoenberg:第一室内交響曲(連弾版:作曲者自編)
             第二室内交響曲(2台ピヤノ版:作曲者自編)
             管弦楽の為の変奏曲(2台ピヤノ版:C.Wuorinen編曲)
演奏:Mendelsson Duo (Noriko Ishikawa Kratzer & Manfred Kratzer)
CD番号:Russian Compact Disc : RCD 30106

実に鮮やかな演奏です。第一室内交響曲の連弾版は3種類の演奏をCDで聴きましたが、この演奏がダントツに素晴らしい! 非常にピヤニスティックで、かつ、この曲の持つ浪漫性を、余すところなく伝えております。この曲の演奏としては第一級です。この曲で、まさかこれ程素晴らしい演奏がCDで出るとは思いませんでした。連弾演奏ですと、非常に困難な曲にも関わらず、正直に1台のピヤノで弾いております。曲の内容に関しては「こちら」をご参照下さい。

 その他の2曲、正直言えばピヤノで演奏しても聴いても、あまり楽しくない曲です。それをこのデュオは、実に面白く聴かせてくれます。このデュオ、日本ではあまり有名ではありませんが、非常に注目できる演奏家です。とにかく聴いて損はないCDです。このデュオによる、よりたくさんの演奏を聴くことができることを、切に望む次第です。

 なお、このCD。2001年5月27日現在で現役。「amazon.com」で簡単に購入できます。
(2001/05/28記)


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