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曲目 P.Dukas: 魔法使いの弟子
           Rabinovitchによる2台ピヤノ用編曲
    R.Strauss: 家庭交響曲 Op.53
            O.Singerによる2台ピヤノ用編曲
    M.Ravel: ラ・ヴァルス
            作曲者自身による2台ピヤノ用編曲
演奏 Martha Argerich & Alexandre Rabinovitch
CD番号 TELDEC 4509-96435-2

管弦楽から2台ピヤノへの編曲物ばかりを集めた1枚。しかし、そうした曲たちも、このデュオの手にかかると、あたかも最初からピヤノ・デュオであったかのように鳴り響きます。3曲を収録していますが、聴き物はDukasとRavel

まず、Dukasの「魔法使いの弟子」。原曲は非常に色彩的な楽しい管弦楽曲として知られていますね。映画のオールド・ファンには「ファンタジア」で使われたこともある懐かしい曲でもあります。あの「ミッキーマウス」が「魔法使いの怠慢な弟子」に扮して、水と箒の大群に襲われる映像は、音楽と非常にマッチして素晴らしいものでした。「ファンタジア2000」でも、この映像のみレプリントされていましたね。評者はこの曲を聴くと、いつもあの映画のシーンを思い出してしまいます。その豪華絢爛な管弦楽曲を、演奏者の片方であるRabinovitchが2台ピヤノ用に編曲し、演奏しています。

実は「魔法使いの弟子」には作曲者自身の手による2台用編曲があります。これはDurandから楽譜が出ており、容易に入手可能です。評者はこれを完全に読んだことはないのですが、斜め読みしたところ、なかなか優れた編曲です。こうした編曲があるのに、なぜRabinovitchが改めて2台ピヤノ用編曲を作ったかについては分かりません。ただ、このRabinovitchによる編曲もなかなか素晴らしく、2台ピヤノによる演奏効果を存分に発揮できるような出来になっています。はじめの神秘的な序奏から、2台ピヤノでなければ表現できないような形になっているのが、さすがです。その魅力を余すところ無く伝えたのが、この演奏。目眩く管弦楽が、20本の指と4本の足によって、まったく別の魅力を備えた曲として再現されているのです。編曲愛好者にとっては、たまらない編曲/演奏ではないでしょうか。

楽譜を参照していないので、正確なことは申し上げられませんが、アンサンブルの上でかなり難しい編曲になっているようです。特に「箒が最初に動き出すシーン」の「合わせ方」など、絶妙なアンサンブル力が必要となります。何故、楽譜も見ないのにこんなことが分かるかと申しますと、1997年11月に、このデュオが日本で演奏会を催した際、この曲が含まれておりました。評者は幸いにも、Argerichさまにかなり近い場所で、この演奏を聴くことができたのです。その際感じたのは、あのArgerichさまが恐ろしい集中力で、この曲の演奏に臨んでいたことです。常にRabinovitchの目をじっと見ながら、ひとつひとつのフレーズを弾いていく。「ああ、合わせが余程微妙で難しい曲なのだなぁ」と感じた評者です。これは会場でなければ分からなかったことでしょう。もちろん、このCDからは、そうした緊張感は伝わってこず、むしろ楽しげに弾いているようにすら感じさせます。非常にスケール感の大きな演奏で、これはどなたにも楽しんで聴いて頂けることでしょう。ちなみに、Rabinovitch版の楽譜は出版されておりません。

もうひとつ。Ravelの「ラ・ヴァルス」も、大変に優れた演奏。もし、この2台版「ラ・ヴァルス」の演奏で、ひとつだけ挙げろと言われたら、文句無くこの演奏を推挙いたします。以前ArgerichさまはFreireと組んで同じ曲を録音していました。これはこれで非常に素晴らしい演奏だったのですが、Rabinovitchとの再録音は、これを上回る、目の覚めるような出来映えです。確かに、アンサンブルの緻密さ、という観点から判定するとFreire盤に軍配が上がります。ただし、微妙な表情付けの面白さや全体を覆う巨大な構成感と演奏スケールは、Rabinovitch盤が他を圧倒します。この演奏、2台版「ラ・ヴァルス」の究極の「かたち」を示したものではないでしょうか。少なくとも評者は、そう感じます。楽譜はDurandから出ているほか、日本ではヤマハミュージックメディアが「ラヴェル ピアノ作品集」というものを出しており、この「第5巻 作曲者自身の編曲による2台ピアノ」の中に含まれております。ヤマハ版はDurand版のコピーで、両者に相違はありません。

なお、もう1曲入っているR.Straussの「家庭交響曲」(2台ピヤノ版)。あのOtto Singerによる編曲です。確かに面白い編曲で演奏も素晴らしいのですが、さすがに通して聴くと、ちょっとくたびれます。楽譜の出版元は、ずいぶんと調べたのですが、これを執筆時点までには判明しませんでした。ご存じの方がいらしたら、どうぞご一報下さい。どこから出ていたかは不明ですが、絶版であることは確実です。

このCD、2002年8月5日時点で現役。オンラインですと「amazon.de」で入手できます。(2002年8月5日記)

CDタイトル:Ferruccio Busoni Das komplette Werk fur 2 Klaviere
曲目 F.Busoni: (1)J.S.Bachのコラール“幸なるかな”による即興曲
           (2)自動オルガンのための幻想曲
           (3)協奏風二重奏曲
           (4)対位法的幻想曲
演奏 Isabel & Jurg von Vintschger
CD番号 Jecklin-Disco JD 579-2

CDのタイトル通り、Busoniの2台ピヤノ用作品をすべて聴くことができる1枚。演奏は全曲を通じて、謹厳実直そのもの。まったく「遊び」といったものが感じられない演奏です。それだけにBuzoniの意図した音がダイレクトに伝わって来ると言えましょう。華やかさこそありませんが、アンサンブルも個々のテクニックも完璧で、模範的な演奏です。逆に聴く人によっては、あまり面白い演奏ではないと感じるかも知れませんね。

ここで取り上げた作品は、いずれも2台ピヤノを非常に効果的に使ったものです。それに、比較的親しみやすいものばかり。とは言うものの、そこはBusoni。(3)の「協奏風二重奏曲」を除いて、対位法を駆使した作品のオンパレード。のめり込んで聴くと、ちょっと疲れてしまうことがあるかも知れません。どれも大変にピヤニスティックで面白いのですが。

さて、作品。(1)の「J.S.Bachのコラール“幸なるかな”による即興曲」は、J.S.BachのコラールBWV.517を主題として展開する一種の変奏曲。主題が対位法的に変化していく過程がとても面白く聴けます。このデュオの良い意味での「くそ真面目」な演奏がBusoniのガッチリした対位法を、より明確に提示してくれます。かなり迫力のある演奏ですよ。

(2)と(3)はW.A.Mozart作品の編曲物。(2)は「自動オルガンのための幻想曲 ヘ短調」(Kv番号不明)を2台ピヤノ用に編曲したもの。1922年の作品。元曲を知らないので何とも言えませんが、楽しく聴けます。編曲物としてとても優れた1曲であると言えましょう。

(3)はピヤノ協奏曲第19番 Kv.459の終楽書を2台ピヤノ用にしたもの。ただし、管弦楽部分を第2ピヤノとしたのではなく、独奏ピヤノ/管弦楽の全パートを2台のピヤノへ完全に再配分しています。それだけに2台ピヤノ曲として、楽しく聴くことができますね。この曲では、和声および対位法の面ではBusoniらしさがまったく感じられません。あくまでもW.A.Mozartの世界です。原曲そのものもとても華やかで楽しい曲ですが、この編曲ではそれが一層強調されております。演奏時間も7分半と短めで、2台ピヤノ・コンサートのアンコールにもってくるには適切な曲ではないでしょうか。この演奏を聴いたら「わたしたちも、やってみたい」と思われる方も多いことでしょう。この演奏で難を言えば、冒頭で申し上げたように、「遊び」がないこと。これだけ楽しい曲ならば、もう少し肩の力を抜いた演奏で聴きたいと感じました。

最後の(4)は30分を越える大曲。元々はピヤノ独奏曲で3つの版があります。この2台用ヴァージョンは第4版に当たります。J.S.Bachの「高きにいます神に栄光あれ」と「フーガの技法」の主題を対位法的に劇的に展開します。そして冒頭から最後に至るまで「B-A-C-H」の音型があちこちで聞こえます。曲はなかなか変化に富んでおり、じっくり聴いていると非常に面白いのですが、聴き終わった後に、疲労感を覚えるのは否定できません。弾くという観点では、非常に纏めにくい曲であると言えましょう。それを32分にわたって、たっぷりと聴かせてくれる、このデュオの演奏は大変に優れたものと言えます。ただし優れているとは言え、曲そのものが聴き手に元気のあるときでないと聴き切れない代物であることは否定できません。

楽譜ですが、(1)、(3)、(4)は、いずれもBreitkopf & Hartelから出ており現役。容易に入手可能です。(2)のみ、どの出版社から出ているのか散々探しましたが、とうとう不明。ご存じの方がいらっしゃいましたらご一報下さい。このCDは2002年7月22日時点で現役。オンラインでは「amazon.de」で入手可能です。(2002年7月22日記)

曲目 G.Gershwin: パリのアメリカ人(作曲者自編による2台版)
    P.A.Grainger: 「ポーギーとベス」による幻想曲
演奏 Katia& Marielle Labeque
CD番号 EMI CDC 7 47044 2(注:旧盤番号:復刻版は下記参照)

聴く人を幸せな気持ちにしてくれる、それは素敵な1枚。大変に面白い演奏で、このデュオの代表的録音であるにも関わらず、長らく廃盤同様で入手は極めて困難でした。ところが、ここにきてこの名盤が復活。こちらで急遽、取り上げることにした次第です。

切れの良いタッチ、完璧なアンサンブル、弾けるリズム、そしてフレーズの「息」をたっぷりとっての「歌」。2台ピヤノ演奏の、ひとつの究極の姿を示しているCDです。録音も残響をたっぷり拾いながら音像が乱れることがありません。一言で言えば「ゴージャス」。こうした録音方法は、必ずしも万人に好まれるものではありませんが、評者には演奏の良さを際だたせるように聞こえました。

まずはGershwin。2台版の「パリのアメリカ人」としては最良の演奏といえましょう。楽譜のあちこちに手を入れて、効果的な演奏を狙っていますが、それが良い方向に出て、大変に成功しております。第一ピヤノでは、楽譜にない内部奏法を使ったりもして。でもそんな「改変」は、同時収録の「ポーギーとベス」に比べれば可愛いもの。とても魅力的な演奏です。

原曲は管弦楽曲ですが、楽譜には何故か「Original Version」と記載されております。ひょっとしたら、オーケストレーションの前に、まずGershwinが2台版を完成させていたのかも知れません。何はともあれ、管弦楽とはまったく異なった魅力を持った版です。Labequeは、その魅力を完全に楽譜から引き出し切っておりますね。なお、この演奏では終始、第一が向かって右側、第二が左側で弾いております。左右の交代はありません。

圧巻は、同時収録のGrainger。ベースはGershwinですが、音楽は完全にGraingerのものになっています。そのGraingerをLabequeは、楽譜には滅茶苦茶手を入れるは、左右は頻繁に交代するわで、かなりハチャメチャな演奏を繰り広げます。そのハチャメチャぶりが何とも楽しい!

この演奏を聴いた当初、楽譜が入手できなくて、「ふーん、こんな曲なんだ」と思いこんでいた評者。後になって楽譜を入手し、参照してびっくり。あまりに手を入れているので、途中何カ所かで譜面を追っていけなくなったくらいです。その後、「楽譜通り」に弾いている演奏を聴いて、ちょっと物足りなくなった評者です。もっともさらに後になって、楽譜通りに弾きながらも大変に優れた演奏に出会い、今では楽譜通りでも満足している次第です。これと全く同じことを、松永晴紀先生が「お楽しみはピアノデュオ」(春秋社)の中で書かれていらっしゃいます。

ただし、ハチャメチャといっても、楽曲の良さを失わない、ぎりぎりの線を追求しているのが、このデュオの凄いところでしょう。聴いているだけで、本当に幸せになる演奏です。

楽譜はいずれもWaner Bros.から出ており現役。Gershwinは、第一と第二が分冊で、1セット購入すれば演奏できます。Graingerの方はスコア形式で、演奏には2冊用意する必要があります。

CDは「Encore」というレーベルから復活しました。CD番号は「CDE5752242」で、オンラインでは「amazon.co.uk」のみで入手可能です。現物を見ていないので分かりませんが、ひょっとするとジャケット写真が変わっているかも知れません。(2002年7月15日記)

CDタイトル Edvard Grieg Klaviermusik zu vier Handen
曲目 E.Grieg: (1)トロルドハウゲンの婚礼の日 Op.65-6
            (A.Ruthardt編曲)
          (2)ホルベアの時代から Op.40 (第2、3、5曲のみ)
            (T.Kirchner編曲)
          (3)ワルツ・カプリス Op.37 (連弾オリジナル)
          (4)ノルウエイ舞曲 Op.35 (連弾オリジナル)
          (5)演奏会用序曲「秋に」Op.11 (作曲者自編)
          (6)2つの悲しい旋律 Op.34 (作曲者自編)
          (7)2つの交響的小品 Op.14 (作曲者自編)
演奏 Das Kolner Klavier-Duo (Elzbieta Kalveage & Michael Krucker)
CD番号 Berlin Classics 0017072BC

著名な連弾曲がありながら、それらをCDで聴く機会の少ないGrieg。その意味で、この作曲家の連弾曲の全貌をほぼ俯瞰できるこのCDは、大変に意義のあるものと言えましょう。演奏もかなりの水準で、滅多に聴くことのできないGriegの連弾曲の本質を非常に鋭く突いております。しかも、資料的価値をはるかに超えた、聴いて楽しい演奏です。

有名どころでは連弾オリジナルの、(3)ワルツ・カプリス(4)ノルウェイ舞曲。大変に生き生きした演奏です。絶妙なアンサンブルで、迫力も満点。歌うところはたっぷりと歌わせるのですが、「演歌調」になっていないところに好感が持てます。泥臭さを完全に排した、清冽なGrieg。これは、このCD全体を通じて言えることなのですが。リズムとタッチの切れも良いですね。さして難曲ではないこの2曲を、スケールの大きな演奏で聴かせてくれます。連弾演奏者や愛好家には「耳にタコ」の曲かも知れませんが、それでも聴いて損はない演奏でしょう。ちなみにこの2曲、とても有名なのに、ほとんど録音がありません。評者が把握しているのは、他に2種類でしょうか。

その他の収録曲は、すべて編曲もの。(1)「トロルドハウゲンの婚礼の日」はピヤノ独奏曲「抒情小曲集・第8集」の第6曲が原曲。非常に華やかな編曲を、それは楽しく弾いております。連弾に編曲した効果が、とても良く現れている演奏です。

(5)は管弦楽のための「演奏会用序曲・秋に」の連弾用編曲。これは原曲のそのまた原曲が「9つの歌 Op.18」の第4曲「秋の嵐」。編曲のそのまた編曲という代物です。あまり期待して聴かなかったのですが、どうしてどうして。なかなか堂々たる連弾曲で、とてもピヤニスティックです。演奏者の纏め方がうまいのでしょうか?

(6)の「2つの悲しい旋律」は、評者がとても好きな弦楽合奏曲。実はこれも、当初は期待せずに聴きました。あの弦の「延び」を、どうピヤノに置き換えているのか、という興味より疑問の方が先に立ってしまって。ところがこれも実に素敵な編曲。やや早めのテンポでさらりと弾いています。とても好感の持てる演奏です。評者はこのCDを手にするまで、この曲の連弾用編曲があることを知りませんでした。聴いて、自分でも弾きたくなってしまった評者です。

(7)「2つの交響的小品」は、作曲者最初期の「交響曲」(作品番号なし)から、第2、第3楽章を取り出して、改めて連弾曲として纏めた1曲。これも聴いてみると、なかなか興味深い連弾曲です。

残念だったのは(2)の「ホルベアの時代より」。これは全曲が連弾用に編曲されているにも関わらず、このCDで取り上げられているのは第2、第3、第5曲のみ。非常に優れた演奏であるので、全曲纏めて聴くことができなかったのは、惜しいことです。CDの収録時間にも余裕があるはずなのに、何とも不思議。残念というほかはありません。

楽譜はすべて「C.F.Peters」から出版。このうち現役は、(1)、(3)、(4)、(7)。 (2)は、つい最近まで現役でしたが、2002年度版カタログからは消滅しています。(5)と(6)は絶版になって久しいです。ひょっとしたらGriegの全集に含まれているかも知れませんが、そこまで調査できませんでした。ご存じの方がいらしたらご一報下さい。

このCDは、2002年7月9日時点で現役。オンラインですと「amazon.de」で入手できます。ちなみに録音は水準の出来。なお、このCDのほかにも、Griegの4手作品を集めたCDを入手しました。そちらも後日ご紹介したいと存じます。(2002年7月9日記)

追記:(1)および(2)をのぞくすべての曲は、Petersのグリーグ全集(Edvard Grieg Gesamtausgabe)の第5巻に収録されており、現役で入手できます。この巻には、劇音楽からの編曲を除く、Grieg自身の手による連弾曲のすべてが収録されている非常に興味深い1冊です。ちなみに「ペールギュント」(全曲)などを含む、劇音楽の連弾用編曲を収録しているのが第6巻です。(2002年9月29日記)

曲目 P.I.Tchaikovsky: 交響曲第5番 Op.64(Taneyev編曲)
                眠りの森の美女 Op.66a から(Rachmaninoff編曲)
                白鳥の湖 Op.20 から (Debussy編曲)
演奏 永井幸枝+Dag Achatz
CD番号 BIS CD-627

初出当時、ピヤノ・デュオ関係者の間で大きな話題になった録音。Tchaikovskyの交響曲第5番を2台のピヤノで弾く。その衝撃の大きさは、忘れることはできないでしょう。そして素晴らしい生命感に溢れた演奏と、非常に優秀な録音。初出から9年がたちましたが、このCDの価値は薄れることはありません。

評者はこのCDが出るまで、Tchaikovskyの交響曲第5番がピヤノ・デュオとして存在することを知りませんでした。さて、どんな結果が生み出されたのだろう・・・興味津々でCDを聴き出したことを、まるで昨日のことのように思い出します。スピーカから流れてきた音楽は、「まぎれもない」ピヤノ・デュオ。それは素敵なピヤノ・デュオでした。管弦楽の原曲とはまったく異なった魅力を備えた、心を奪われるような曲。Taneyevの編曲が実にピヤニスティックで素晴らしい。

その魅力を余すところ無く伝えているのが、永井幸枝氏とDag Achatz氏のお二人。個々のタッチ、粒立ちが実に美しいだけでなく、テクニックもさえ渡る。もちろんアンサンブルも抜群に素晴らしい。まさにピヤノ・デュオの神髄を聴く思いです。そしてこの巨大な交響曲を大きなスケール感で纏めきっております。その実力や、並大抵なものではありません。後年、このデュオを生で聴くことになるのですが、ライヴでは---この曲の演奏ではありませんでしたが---CD以上の迫力でした。

この録音を聴くと、馴染み深いこの曲の、新たな魅力に出会えることでしょう。楽譜はJurgensonから出版されていましたが、残念ながら絶版。入手は極めて困難です。

同時録音の、バレエから編曲された小品集も見事な出来。「眠りの森の美女」はRachmaninoffの編曲。この編曲は比較的有名ですね。ここでは「序奏:リラの精」「アダージョ:パ・ダクシオン」「ワルツ」の3曲が演奏されています。同じ曲集には「長靴を履いた猫と白猫」「パノラマ」も含まれているのですが、ここでは収録時間の関係からか割愛されています。折角なら、これらもまとめて録音してくだされば、もっと良かったのに。収録曲の演奏が素敵なだけに、とても残念です。楽譜はForbergから出ており、これは現役。以前は入手困難でしたが、最近では比較的容易に入手できるようです。

Debussy編曲の「白鳥の湖」も、とても楽しめます。前週紹介した。Daniel Blumenthal & Robert Groslot組と比較すると、タッチとアンサンブルの精密さが歴然とします。もちろん永井・Achatz組の方に軍配が上がります。前週書きましたように、楽譜はForbergから出ておりましたが、現在絶版で入手は困難です。

ちなみに、このバレエ2曲は、あのLabequeも、それは素晴らしい録音を残しています。聴き比べると楽しいですよ。ただしLabequeの演奏は残念ながら現在廃盤です。

なお、このCDで演奏されている曲は、元々は連弾のために編曲されたものです。それを演奏者の意図で2台のピヤノで演奏しています。欧文の解説書には「2台ピヤノ用編曲」と記載されておりますが、これは明らかな誤りです。

このCD、2002年7月1日時点で現役。オンラインでは「amazon.de」で入手できます。また以前はキングインターナショナルから国内盤も出ておりました(KKCC-2125)。国内盤には松永晴紀先生による、秀逸な解説がついておりました。(2002年7月1日記)

CDタイトル Debussy Arrangements for 2 Pianos
曲目 C.Saint-Saens: 序奏とロンド・カプリッチョーソ Op.28
               エディエンヌ・マルセル
    P.I.Tchaikovsky: 白鳥の湖から
    Gluck/Saint-Saens: カプリース
    R.Schumann:カノン形式による6つの練習曲 Op.56
    R.Wagner: さまよえるオランダ人・序曲
演奏 Daniel Blumenthal & Robert Groslot
CD番号 Marco Polo 8.223378

Debussyが「他人」の曲を2台ピヤノ用に編曲した作品ばかりを集めた、珍しい1枚。Debussyという人が、いかに2台ピヤノに興味を持っていたかを示す、興味深い資料と言えましょう。これで演奏が抜群だったら、なお良かったのですが。残念ながら、両奏者とも、ややタッチが荒い上に、アンサンブルの点でも「やや難あり」です。ただ、Debussyが2台ピヤノをいかに効果的な演奏形態のひとつとして考えていたかを把握することは十分にできます。その意味で、今回はこのCDを取り上げました。

どの曲もなかなか面白く聴けますが、中でも愉快なのはWagnerの「さまよえるオランダ人・序曲」。これは非常に効果的な編曲です。Wagnerの歌劇もうまく編曲すれば、ピヤノでここまで表現できるのか、と思わずうならされてしまいます。別の言い方をすれば、2台ピヤノでなければできないような音像処理をしてある点に注目できます。この分野ではC.Tausigが非常に優れた編曲物をいくつか残していますが、それらと並び賞される編曲と言えましょう。Tausigもそうですが、Debussyのこの編曲も、編曲分野では比較的有名ですが、現在ではほとんど演奏の機会に恵まれないのが残念です。この「オランダ人」、現役の録音は確か、この1種類だけではなかったでしょうか。楽譜はDurandから出ており、ついこの間まで現役でした。現在は、どうなっているのか未確認です。

Saint-Saensの「序奏とロンド・カプリッチョーソ」も傑作。ヴァイオリンと管弦楽のための作品が、見事な2台ピヤノ曲に変身しています。同じSaint-Saens「歌劇・エディエンヌ・マルセル」からも、楽しく聴けます。エディエンヌ・マルセルは評者が原曲を存じ上げないものですから、編曲がどこまで効果的に出来ているのかは、判断のつきかねるところです。ただ、2台ピヤノ曲として聴いていて興味深いのは事実です。楽譜はいずれもDurandから出ており、こちらは現役。

Schumannの「カノン形式による6つの練習曲」のこの編曲は、極めて有名。原曲はペダルピヤノのための独奏曲ですね。この曲の演奏、「もう少し、どうにかならなかったかしら」という出来。あまりお奨めではありません。この曲でしたら、ほかにもっと良い演奏があると思います。Tchaikowskyの「白鳥の湖」から「ロシヤの踊り」「スペインの踊り」「ナポリの踊り」も有名な編曲。こちらも演奏がやや雑なのが残念。これを聴くのであればBISレーベルから出ている永井幸枝+Dag Achatz組の演奏の方が格段に優れております。お聴きになるなら、そちらをどうぞ(おっと、まだこちらのコーナーでは紹介していませんでしたね)。ちなみに楽譜はSchumannがInternationalおよびDurandから出ており、これは現役。TchaikowskyはかつてForbergから出ていましたが現在絶版です。Gluch/Saint-Saensの「カプリース」は、評者にとってあまり面白い物ではありませんでした。楽譜はDurandから出ていましたが絶版です。

ちょっとばかりケチをつけてしまいましたが、編曲物がお好きな方は、お聴きになって損はないCDと言えましょう。CDは2002年6月24日時点で現役。オンラインですと「amazon.com」で入手できます。(2002年6月24日記)

曲目 P.I.Tchaikovsky: くるみ割り人形 組曲 Op.71a (Economou編曲)
    S.V.Rachmaninoff: 交響的舞曲 Op.45 (作曲者自編)
演奏 M.Argerich様 & Nicolas Economou
CD番号 Polydor 410 616-2

かなり有名な録音。知っている人は、みんな知ってる。でも、知らない方もいらっしゃるかも知れません。と言うわけで、知らないと損をする演奏の紹介です。

このCDには、Tchaikovskyの「くるみ割り人形 組曲」と、Rachmaninoffの「交響的舞曲」が収められています。こちらで取り上げるのですから、いずれもピヤノ・デュオ編曲であることは言うまでもありません。で、知らないと損をするのは「くるみ割り人形」の方。

くるみ割り人形。これは一般に馴染みのある、「小さな序曲」「特徴的な踊り」「花のワルツ」で構成する作品71aの2台用編曲です。曲のそこここで、各奏者に対して相当の技巧と、アンサンブル力を要求しますが、松永晴紀先生も「ピアノ・デュオ作品事典」の中でご指摘のように、実に合理的で効果的な編曲です。編曲者はこのCDでArgerich様のお相手を務めているキプロス出身のEconomou。何でもこの編曲は、Argerich様の娘様のために編曲したとのこと。これは余談。

「編曲作品」と、色眼鏡で見てはいけません。原曲の骨格を完全に残しながらも、2台ピヤノでなければできない表現に溢れています。真に素晴らしい2台ピヤノ曲と言えましょう。ある意味で非常に模範的な2台ピヤノ用編曲です。ピヤノ・デュオ愛好家の皆さんには、是非とも楽譜を参照しながら聴いて頂きたい編曲ですね。

編曲が素晴らしい上に、演奏も抜群。この編曲の良さを完全に出し切っています。これ以上の演奏をするのは難しいのではないか、と思わせるくらいに。Argerich様とEconomouが、がっぷり組んで、それは素晴らしい演奏を展開します。録音の何処をとっても面白く聴けるのですが、圧巻は「花のワルツ」。管弦楽で聴くのとは、まったく異なった魅力に溢れています。評者が聴いた数多くの録音の中でも、「聴く人を幸せな気持ちにする」という意味では、1、2を争う演奏と言えましょう。その意味で、この演奏をまだお聴きでない方は、かなり損をしていらっしゃいます。この演奏をお聴きになったら、「自分でもやってみたい」と思われる方が、たくさんいらっしゃるかと存じます。それほどまでに、説得力のある、素晴らしい演奏ですよ。

ちなみに楽譜はBelwin/Warnerから出ており現役。比較的容易に入手できます。

同時収録のRachmaninoff「交響的舞曲」は、Argerich様の演奏としては不出来な方。不出来というのはちょっと不適切かも知れません。別の言い方をすれば、面白くない演奏です。そのためか、後にAlexandre Rabinovitchと組んで再録音をしているのかも知れません。「交響的舞曲」は再録音の方が圧倒的に面白い出来です。聴くのであれば、再録音の方が、絶対のお勧めです。ご参考までに、交響的舞曲の楽譜は、やはりBelwin/Warnerから出ており現役で、入手も容易です。

さて、このCD、残念ながら現在廃盤。でも、がっかりしないで下さい。「くるみ割り人形」の方は、Argerich様がAbbadoと組んだ「Tchaikovsky:ピヤノ協奏曲第1番」のCD(Polygram 449 816)の余白に「おまけ」として再収録されており、2002年6月18日現在、容易に入手可能です。オンラインですと「amazon.com」で購入できます。(2002年6月18日記)

CDタイトル: Nettle & Markham in America
曲目 R.Bernstein: 「ウエストサイド・ストーリ」からの情景
             Nettle & Markham編曲
    R.R.Bennett: 4つの小品組曲
    P.A.Grainger: ポーギーとベスによる幻想曲
演奏 David Nettle & Richard Markham
CD番号 Carlton 30366 01042

実に活きが良くて、楽しい演奏です。取り上げている曲も楽しいものばかり。伸びやかでありながら、鋭く正確なタッチ。そして強力な推進力と抜群のアンサンブル。「聴いて損なし」の1枚です。2台ピヤノの「楽しさ」がいっぱいに詰まったCDです。

Bernsteinの「ウエストサイド・ストーリーからの情景」は、このデュオ自身による編曲。聴けば聴くほどに、実に良くできた編曲です。それを鮮やかに楽しく弾ききっているのがこの演奏。原曲を知っている人にも、知らない人にも充分に楽しめます。ここでは、原曲のハイライトとなるシーン---いわゆる名曲---を集めて編曲しています。ですから内容的には、「シンフォニック・ダンス」の2台用編曲とは全く異なっている点にご留意下さい。

この演奏を聴くと、思わず弾きたくなってしまう方もいらっしゃるでしょう。実は以前、この楽譜はG.Schirmerから出ていたのですが、現在は残念ながら絶版。ひょっとしたら版権の関係でBooseyに移った---Bernsteinの作品、および編曲作品は、このケースが多いのです---のかと思って調べたのですが、こちらでも出ておりませんでした。

Bennettの「4つの小品組曲」。実は評者、この曲を聴きたくて、当該CDを購入したのです。個人的にはこの曲がとても好き。2台ピヤノ曲としては比較的有名な作品です。それなのに何故か不思議なことに録音に恵まれません。現在出ているのは海外では2種類、国内では1種類のみです。外盤で出ているもので、1種類は聴くに耐えない代物。最初にそれを購入して失敗しました。で、もしかしてこの演奏なら・・・と思って入手したのが、このCDです。結果は「成功」。実に“快適”な演奏でした。

4曲それぞれ個性があるのですが、それを非常にうまく弾き分けています。その表情の変化がとても面白い。特に第1曲の「悲しみのサンバ」。これをとてもお洒落に弾いています。何度聴いても飽きません。ちなみにこのCDを購入してしばらくは、毎日この曲を飽きずに聴いていた評者です。「ピアノ・デュオ 作品事典」の著者・松永晴紀先生いわく「クールなボサノバ風のしゃれた曲」。

この曲、2台ピヤノ曲としては技術的に比較的易しい部類に入るのですが、流麗に合わせようとするとなかなか難しい。しかもリズムを正確に刻んだ上で余裕を持って旋律を歌わせなければならないので、お洒落に聴かせようとすると、結構厄介です。逆に間延びしてしまうと聴くに耐えない演奏になってしまいますし。それらの難題をうまくクリアして、「こんなに素敵な曲なんだよ」と目の前に展開してくれるのが、この演奏なのです。もちろん「悲しみのサンバ」だけでなく、続く「カントリー・ブルース」、「ラグタイム・ワルツ」、そして「ハードロックのテンポで」と指定された「フィナーレ」も素敵です。

この曲をおやりになろうと思われる方、是非この演奏をお聴きになることをお勧めします。楽譜はNovelloから出ており現役。容易に入手可能です。

最後に収録されたGrainger「Gershwinの“ポーギーとベス”による幻想曲」も、圧倒的な名演。この曲の名演として知られるKatia & Marielle Labequeの演奏(現在廃盤)と双璧をなす快演でしょう。Labequeの演奏が楽譜のあちこちに手を入れ、一部は原型を留めないくらい編曲されているのに対し、Nettle & Markhamの演奏は楽譜通り。楽譜に手を加えず、しかもそこから曲そのものが持つ演奏効果を最大限に引き出しております。実に生き生きした演奏ですね。

楽譜はWarnerから出ており現役。ただし、何故かなかなか入手できません。オンラインの楽譜屋さんでは、どこも「該当作品の楽譜なし」と出てきます。いちばん手っ取り早いのは、「Boosey & Hawks」のオンラインショップにアクセスすると、ちゃんと購入できます。今のところオンラインで購入できるのは、ここだけです。

このCD、2002年6月10日時点で現役。オンラインですと「amazon.de」で入手できます。(2002年6月10日記)

曲目 O.Respighi: ローマの噴水
             ローマの松
             リュートのための古風なアリアと舞曲 (第1組曲・第3組曲)
             以上、作曲者自身による連弾版
演奏 Tiziana Moneta & Gabriele Rota
CD番号 Discantica 16

またまた“珍品”連弾曲の登場です。今回はRespighi。有名な「ローマの噴水」「ローマの松」に加え、「リュートのための古風なアリアと舞曲」を、それぞれ作曲者自身が連弾に編曲したものを演奏した1枚です。これらの編曲は、ほとんど知られていません。評者も、このCDを手にするまでは、その存在を知りませんでした。「どのようなものかしら」と半分いぶかりながら聴いたCDですが、そこに現れたのは、素晴らしい連弾曲でした。

個人的な好みから言えば、特に「ローマの噴水」が素晴らしい! あの壮麗な管弦楽曲が見事な連弾曲に“衣替え”しています。まるで最初から連弾曲であったかのように。Respighiの連弾手法の素晴らしさに、まず感嘆してしまいました。Respighiのピヤノ曲は、それほど広く知られたものは少数です。ともすれば、“ピヤノ曲がやや苦手な作曲家”と見られているかも知れません。ところが、どうして。この編曲を聴く限り、ピヤノという楽器の特性を充分に把握しているばかりでなく、連弾作品の構築に関しても、相当の力量を持った作曲家であることが、如実に把握できます。このCD、普段管弦楽で聴くのとは、また異なった、「ローマの噴水」の一側面を見せてくれるのです。

ちなみに、CD解説書の1ページ目には、Respighiがどなたかと連弾をしている写真が掲載されております。“やらせ”かも知れませんが、こうした写真を残すこと自体、Respighiが連弾に興味を持っていたことを示す貴重な証拠であると見ることができます。

この連弾用編曲を非常にピヤニスティックでダイナミックに仕上げているのが、Tiziana Moneta & Gabriele Rotaの2人。このCDで聴く限り、「ローマの噴水」も「ローマの松」も、大変に難しい連弾曲なのですが、それを難なく弾きこなし、「こんなに素晴らしい編曲があるんだよ」と、聴く者にその演奏を堂々と突きつけてくれます。個々の技量も相当に高いですし、アンサンブルの精度も抜群。とても安定し、安心して聴くことができる演奏です。

華やかな「ローマの噴水」「ローマの松」から、一転して古風な響きを聴かせる「リュートのためのアリアと舞曲」。ここでもMoneta & Rota組による抜群のコンビネーションが光ります。とてもシックな味わいの演奏。聴いていて、“飽き”をまったく感じさせません。何はともあれ、聴いて損はない演奏と言えましょう。

さて、楽譜。このCDを聴いたら「自分達でも、ぜひやりたい」と思われるデュオの方も多いでしょう。で、散々あちこち調べたのですが、どこから出版されていたものかが、まったく分かりませんでした。日本国内の主立った図書館にもありません。わたしたちはもちろん、友人・知人の蔵書の中にもありませんでした。中古の楽譜市場にも、まったく見当たりません。どうか、この楽譜に関してご存じの方、ご一報頂ければ幸いです

なお、CDは2002年6月3日時点で現役。「amazon.com」で入手できます。(2002年6月3日記)

曲目 G.Mahler: 交響曲第6番 (A.v.Zenlinsky編曲)
演奏 Silvia Zenker & Evelinde Trenkner
CD番号 DG+G L3400

出会った当初、所謂「キワモノ」の類かと思ったCDです。ところが、どうして、どうして。あの目眩く管弦楽が、見事な連弾曲となって、わたしたちの前に現れました。交響曲の連弾用編曲は、世の中に数多ありますが、そのうちの「名編曲」に加えられてしかるべき曲であると存じます。その魅力を、Silvia Zenker & Evelinde Trenkner組が、余すところなく伝えてくれている、それは素晴らしいCDです。

まず、編曲そのものが、非常にピヤニスティック。まるで、元から連弾曲であったかのような出来映えです。編曲者であるZemlinskyのピヤノ曲は、ほとんど知りません。しかしこの編曲を聴く限り、Zemlinskyは、ピヤノ、それも連弾の書法を充分に熟知した作曲家であることが、この編曲を耳にすることで発見できます。譜面(ふづら)自体は、それほど音符が“密”に詰まっているわけではないのですが、実際弾いてみると、驚くほどピヤニスティックです。出だしの数ページなら、ちょっとピヤノを齧った方ならば、どなたにでも弾くことができます。弾いてみると、とても楽しいですよ。

そんな素敵な編曲の魅力を存分に伝えてくれるのが、この演奏。この大曲を、非常に強力な構成力でがっちりとまとめ、飽きずに聴かせてくれます。ZenkerとTrenkner、ただものではありません。優れた編曲に加えて、この優れた演奏。原曲の骨組みをしっかりと抑えた上で、ピヤノ連弾でなければ表現できないようにした編曲。そこから、きれいに各声部を浮かび上がらせて、交錯する音符の列から、見事にその全貌を浮かび上がらせて、聴き手に「これでもか」、と迫ってくる、実に迫力満点の演奏であります。

ただ、何故か、原曲の第2楽章と第3楽章を入れ替えて演奏しています。何はともあれ、1度は耳にしてもよい演奏ではないでしょうか。75分が、あっと言う間に過ぎて行きます。

この楽譜は、独Kahntから出ていましたが現在絶版。ただし、C.F.Petersに依頼すると、コピー譜を作って下さいます。わたしたちも、Petersへの依頼でコピー譜を入手しました。調べた限り、日本国内の図書館には蔵書がないようですし、中古市場でもほとんど出回っておりません。わたしたちの友人が、たまたまウイーンでこの楽譜(古本)を捕獲しましたが、こうしたケースは例外と見てよいでしょう。確実に入手されるなら、Petersへのコピー譜依頼が一番です。この場合、ドイツのPetersに依頼して下さい。NYではダメです。

このCDも廃盤。ただし、同じ演奏者でCasella編曲のMahlerの7番(連弾版)との2枚組CDで、同じレーベルから現役で出ております。CD番号は不明ですが、ASIN番号が判明しています。番号は「B00000K384」。この2枚組CDは「amazon.de」で入手可能です。ちなみに購入者からの評判は「★★★★★」。この演奏を「素晴らしい」と感じたのは、わたしたちだけではないようです。(2002年5月27日記)

※2007年3月12日現在、日本amazon米amazonの在庫を確認しております。

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