! 今週の１枚！ |
曲目 ： C.Saint=Saens： Beethovenの主題による変奏曲（2台オリジナル） 序奏とロンド・カプリチオーソ（Debussyによる2台用編曲） オンファールの糸車（作曲者自編の2台） 英雄的行進曲（作曲者自編の2台） アルジェリア組曲（G.Faureによる連弾編曲） スケルツオ（2台オリジナル） 演奏 Vilija Poskute & Tomas Daukantas CD番号 Ars 38 008 大変にシャープで切れのあるSaint=Saens。何から何まで新鮮です。 Saint=Saensは、オリジナル、自編、他編で、かなり多くのピヤノ・デュオがあります。しかも、その楽譜の大半は現役で容易に入手可能。ところがどういう訳か、一般の演奏会で取り上げられるのは、このCDの冒頭に収録されている「Beethovenの主題による変奏曲」くらいなもの。なぜか、それ以外の作品は忘れられてしまっているような状態です。 そんな今、是非お聴きいただきたいのが、このCDです。「おっ、これだったら演奏会で使えるぞ」という曲が満載。Saint=Saensのピヤノ・デュオを見直すきっかけになるようなディスクと言えましょう。 最初に収録してある「Beethovenの主題による変奏曲」。2台ピヤノ用のオリジナル名曲ですが、最近では“弾き古された”印象があります。曲の内容から言えることなのですが、よほど新鮮なことをしないと聴衆は付いてきてくれません。録音にしたところだって、新鮮味がないと、「あ、またこの曲か」という感じになってしまいます。そのあたりのことを、Vilija Poskute & Tomas Daukantasのデュオは、相当に意識しているのでしょう。作品を徹底的に分析し、再構築して新しい世界を提示しようという姿が見られます。だからこそ、新鮮に聞こえるのではないでしょうか。この曲の新たな（良い意味での）模範演奏として、是非多くの方に聴いて頂きたい演奏です。評者もたくさんの演奏でこの曲を聴きましたが、久しぶりに「うん、これだっ！」と感じました。 「序奏とロンド・カプリチオーソ」は、本来はヴァイオリン独奏と管弦楽のための作品。これをC.Debussyが2台ピヤノ用に編曲しています。この編曲が面白くて、「ヴァイオリン＋管弦楽」を見事に2台ピヤノで表現しているのです。それも原曲の存在を感じさせないくらい、自然な2台ピヤノ曲として。それをPoskute & Daukantasは、非常に的確かつ楽しく演奏しているのですね。これは面白い！ 「オンファールの糸車」と「英雄的行進曲」は管弦楽曲からの作曲者の自編ですが、これだけ素敵な演奏ならば、あえて元の管弦楽曲を意識する必要はないでしょう。もう、これだけで、立派な2台ピヤノ用のコンサート・ピースですよ。それが、この演奏からは、実によく伝わってきます。 「アルジェリア組曲」。これも元々管弦楽のためのエキゾチックな作品ですが、それをG.Faureが連弾に編曲しています。Faureの編曲技法は大変に素晴らしく、楽譜を見るだけでも元からの連弾曲だったように感じます。そこに見られる「連弾の楽しさ」を十分に踏まえ、Poskute & Daukantasが演奏しています。これは一聴の価値ありです。 最後に収録してある「スケルツオ」は、2台ピヤノ用のオリジナル。もしこの演奏をお聴きになったら、プログラムの真ん中あたりに挟んだり、演奏会のアンコールで弾きたくなる方が大勢いらっしゃるのではないでしょうか。これはそうした説得力を持った名演です。 幸いなことに、楽譜は全部現役。Durandから出ており、容易に入手可能。このCDは出たばかりで、オンラインですと「amazon.de」で入手できます。ずばり「これ」。Saint=Saensのピヤノ・デュオの魅力を的確に伝えるCDとして、是非多くの方に聴いて頂きたいです。ちなみにCDの表書きには「Vol.1」となっているので続編があるのでしょう。そちらにも期待したい演奏者です。加えてCDのあちこちに、このデュオの“らぶらぶ写真”があるのですが、演奏は全然ベッタリしていません。念のため。（2005年7月19日記） |