pug ! 今週の1枚!
! バックナンバー !
! Vol.12 !
pug


CDタイトル Delius, arr. Warlock: for Piano Four Hands
曲目 F.Delius、P.Warlock編曲による連弾版
    (1)春初めての郭公を聞いて
    (2)川辺の夏の夜
    (3)夏の庭で
    (4)北国のスケッチ
    (5)ダンス・ラプソディ第1番
    (6)ダンス・ラプソディ第2番
演奏 小川典子+Kathryn Stott
CD番号 BIS CD 1347

「Deliusの管弦楽曲をピヤノで鳴らす」。多くの方には、ちょっと想像できないことでしょう。「いったいどんな音になるの?」と思われる方が殆どのことと思います。

実はDeliusの主要な管弦楽曲のいくつかは、連弾用に編曲されているのです。Peter Warlock(本名:Philip Heseltine:1884〜1930)という作曲家が、この連弾編曲を手がけています。この編曲、大変に優れていて、連弾曲としてみても実に面白い。そして普段接しているDeliusとは、また違った響きに接することができるのです。

そんなWarlockによるDeliusの連弾用編曲だけを集めたのが、このディスク。ここではWarlockが手がけたすべての連弾用編曲を収録しているのが特徴です。しかも弾き手は、小川典子さんとKathryn Stott女史。この素晴らしい組み合わせが、目の覚めるような演奏を聴かせてくれます。

原曲と比較すると、響きは硬質になり、透明感が出ています。そして、まるで墨絵でも見ているような感じに。しかもその墨絵は、輪郭が非常にくっきりして。自分たちで弾いてみても分かったのですが、この高度な演奏を聴いて、そうした感をいっそう強く持ちました。

編曲そのものはとても良くできているのですが、管弦楽と同じテンポで弾いたら、やはりだらけた感じになってしまうでしょう。ところがこの2人は、テンポをやや早めに取り、全体を引き締めております。良い意味で模範的な演奏と言えましょう。「模範的」と言うと、「教科書的模範さ」と受け止められてしまうかも知れませんが、そうではありません。演奏として「よくぞ、ここまで完成度が高められた」との意味で「模範的」という言葉を当てはめました。胸のすくようなDeliusです。

小川さんとStottさんの2人にとって、これが初めてのデュオ録音になります。大変に息の合った演奏で、連弾曲のディスクとしても、とても楽しめますよ。

ちなみに、このディスクの企画を立てたのが、わたしたちの友人のMさん。MさんはこれまでにもBISレーベルが出した、永井幸枝さん+Dag Achatz氏の、いくつものデュオの名演をプロデュースして来ました。今回の録音の企画をMさんから聞かされたのは、もう3年近く前になるでしょうか。企画を伺って「実に面白い。是非実現させて下さい」と申し上げたわたしたち。

ところが楽譜探しが難航しました。企画立案当時は、全部の楽譜が絶版だったのです。ところが本当に偶然、このディスクに収録したうちの4曲の楽譜を、わたしたちが入手しました。そこで「録音で使っていただけるなら」と、喜んで楽譜をお貸ししたわたしたちです。それが、こんな素敵なディスクとなって返ってきました。望外の喜びです。

連弾になったDeliusの管弦楽曲。とても素敵。是非、大勢の方に聞いて頂きたいものです。普段接しているDeliusとは、“別の顔”を見ることができますよ。

楽譜は収録曲のうち、「夏の庭で」と「ダンス・ラプソディ第1番」がUniversalから出ており現役。容易に入手できます。「春初めての郭公を聞いて」と「川辺の夏の夜」はOxford Univresity Pressから出ていましたが絶版、その他はAugenerから出ていましたが絶版です。ただし、絶版楽譜も英国やオランダの古書店に出る機会が多いので、インターネットで丹念に古書店のサイトをウオッチしていれば、入手できる可能性が高いです。

Londonに、わたしたちがいつもネット経由で中古楽譜を購入している楽譜屋さんがあります。昨年Londonを訪れた際に、この楽譜屋さんにも行きました。お店の方と雑談していたら、在庫リストにDeliusの「夜明け前の歌」の連弾譜があった。で、「これ、ありますか?」って聞いたら、「ずっと前、日本人が買っていったよ。ひょっとしてあなたじゃない? 家に帰って、良く見てよ」。はい、やはりわたしたちでした。…と言うわけで、楽譜はかなり流通しています。

このCDは出たばかりなので、当然現役。オンラインですと国内では「Tower Records」のWebサイトで購入できます。ずばり「これ」。海外のサイトでは、「amazon.de」で入手できます。「これ」です。(2003年12月22日記)

CDタイトル Eacapades
曲目 (1)G.Rossini:セビリヤの理髪師・序曲(A.Schoenberg編曲)
    (2)A.Lortzing:刀鍛冶・序曲(A.Schoenberg編曲)
    (3)O.Nicolai:ウインザーの陽気な女房たち(A.V.Zemlinsky編曲)
    (4)W.A.Mozart:魔笛・序曲(A.V.Zemlinsky編曲)
    (5)M.Reger:愛国序曲(作曲者自編)
    (6)X.Scharwenka:南国の絵(オリジナル連弾)
    (7)K.H.Pillney:流行歌の羽目外し(オリジナル連弾)
演奏 Evelinde Trenkner & Sontraud Spidel
CD番号 MDG 330 1134-2

CDのタイトルは「Eacapades」。つまり「羽目外し」。何か奔放なことをやってみよう、という意気込みの連弾曲ばかりを集めたディスクです。それにしては全体的にかなり「まとも」な曲が並んでいるのですが、タイトルから言うと、最後に収録されているK.H.Pillney作曲「流行歌の羽目外し」がこのディスクの「中核」になっているのかも知れません。

最初に言ってしまうと、この録音、ピヤノ・デュオ愛好者や演奏家にとって、大変に興味深いものです。まず、演奏が非常に素晴らしい。Evelinde Trenkner & Sontraud Spidelの組み合わせは、これまでもBach作曲・Reger編曲の「ブランデンブルグ協奏曲」や「管弦楽組曲」といった、様々なピヤノ・デュオ編曲---それも演奏困難なものばかり---に挑み、目の覚めるような演奏を残しています。その実力が遺憾なく発揮されているのが、このディスク。デュオの楽しさ、そして編曲物やパロディ物が、決して代用品やお遊びだけのものでないことを、しっかりと示しているのです。大変に優れた録音と言えましょう。

K.H.Pillney作曲の「流行歌の羽目外し」ですが、これは面白い! 親しみやすい主題を次々変奏するのですが、その変奏が、J.S.Bach、W.A.Mozart、F.Schubert、F.Mendelssohn、Rossini、Verdi、Puccini、Reger、Schoenberg、Lisztのそれぞれのパロディになっています。これが実に面白く出来ている。この主題を与えられたらBachがMozartが、きっとこんな曲を作ったろうな…と思わせるような、それは楽しい変奏曲です。いずれも良く出来ているのですが、特にRegerとSchoenbergでは無茶苦茶笑えます。最後はLisztの「ハンガリー狂詩曲」のパロディで華麗に締める。大変に面白い曲です。先に申しましたように、演奏も優れておりますし。是非、この曲は「ピヤノ・デュオ業界」で広めたいですね。幸いなことに楽譜はBritkopf & Haertelから出ており現役。出版番号は「EB6813」です。

その他の収録曲も注目のものばかり。

G.Rossiniの「セビリヤの理髪師・序曲」(A.Schoenberg編曲)、A.Lortzing「刀鍛冶・序曲」(同)、O.Nicolai「ウインザーの陽気な女房たち」(A.V.Zemlinsky編曲)、W.A.Mozart「魔笛・序曲」(同)…といった、聴衆に馴染み深い曲の連弾用編曲。これ、みんな素晴らしい編曲ですよ。このCDを聴いたら「レパートリにしたい」と仰るかたも、大勢いらっしゃることでしょう。それ程に素敵な編曲であり、演奏なのです。

上記は、いずれもUniversalから全曲の編曲が出ていたのですが、現在確認できる現役楽譜は「セビリヤの理髪師」と「魔笛」です。それぞれ「序曲」だけの単独では出ていません。演奏なさる場合には、全曲版の楽譜を購入する必要があります。

「どうして、ここに録音されているのだろう?」と思うのが、RegerとScharwenkaの作品。Regerの「愛国序曲」は、原曲の管弦楽曲ですら滅多に聴けない作品です。評者はその存在は知っていましたが原曲を聴くことなく、初めてこの作曲者自身による連弾用編曲で「音」を聴きました。実に堂々とした素晴らしい作品です。残念ながら、この連弾楽譜は絶版の模様で、どこから出ていたのか判明できませんでした。

Scharwenkaの「南国の絵」は、とてもピヤニスティックな連弾オリジナル曲。Augenerから出ていましたが、現在は絶版。入手は極めて困難です。

このCDは、2003年12月8日時点で現役。オンラインですと「amazon.de」で入手できます。(2003年12月8日記)

CDタイトル 1001 Nights
曲目 (1)M.Balakirev: イスラメイ(B.Yoffeによる2台用編曲)
    (2)A.Borodin: 中央アジアの草原にて(S.T.Tirpanによる2台用編曲)
    (3)N.Rimsky-Korsakov: シェエラザード(作曲者自編の連弾版)
    (4)K.Ince: シェエラザード・アライヴ(2台)
    (5)F.Say: セヴンレア・ダイア(M.Schnakによる2台用編曲)
    (6)W.A.Mozart: トルコ行進曲(S.T.Tripanによる2台用編曲)
演奏 Ferhan & Ferzan Oender
CD番号 EMI 7243 5 57672 2 6

まさに「取れたてのピヤノ・デュオ」。演奏はトルコ共和国出身の新鋭「Ferhan & Ferzan Oender」(ファミリー・ネームのOeはOウムラウト)。Vivaldi「四季」の2台ピヤノ版の録音(「今週の1枚 バックナンバー Vol.4」参照)で鮮やかな演奏を聴かせてくれた彼女たち。今度は、Rimsky-Korsakovをメインに据えた録音で登場です。この演奏では、冴えたテクニックとアンサンブルに加えて、「上品な色気」が加わりました。

中核となるRimsky-Korsakovの「シェエラザード」(連弾版)のほか、一般に言われるオリエンタル調の曲目ばかりを集めて録音しています。中には彼女たちのために書かれた作品も。聴いていて、とても楽しいCDです。

メインの「シェエラザード」は、作曲者自身による連弾版。この曲の演奏は、現在複数のCDで聴くことができます。いずれも個性的な演奏で優劣が付けがたいのですが、もっとも「色気」があるのが、このOenderの演奏です。ひとつひとつのフレーズをたっぷりと歌い、非常にスケール感の大きい演奏。そこに彼女たちならではの、素敵な「色気」が全体に漂っております。それを文章で表現するのは、大変に難しいのですが。おそらく、ほんのちょっとしたフレーズの作り方なのでしょうけれど。細部に渡って、非常に凝った工夫が見られます。しかもそれが、実に自然に流れている。

もちろん確固たるテクニックに支えられた演奏なので、本当に身を任せても安心です。もう、冒頭のユニゾンから、その曲作りに驚かされます。「ああ、これなら40分間聴いてもいいな」と思うような。とても堂々とした演奏です。そこに先ほど申し上げた「色気」が覆うのです。色気と言っても、決して聴衆に媚びているという意味ではありませんよ。演奏から立ち上がる、爽やかな香りです。第3楽章「王子と王女」で、それは最高潮にタッチます。一転して第4楽章の「バグダットの祭り、海、青銅の騎士の立つ岩での難破、終曲」。ここでは機関銃のような連打があるのですが、それを鮮やかに処理しています。若さ爆発の「シェエラザード」。一聴の価値はあります。

その他の曲も実に面白い選曲。Barakirevの「イスラメイ」は、2台のピヤノを効果的に使った編曲。実は「イスラメイ」、S.Lyapunovが管弦楽に編曲しているのですが、評者の聴く限り、この管弦楽編曲を2台用に再編曲したもののように感じました。

Borodinの「中央アジアの草原にて」は、これも2台なのですが、ピヤノの内部奏法を効果的に使った、大変に面白い編曲。これは是非とも楽譜を出版してもらいたいですね。Inceの「シェエラザード・アライヴ」は、Oenderたちのために書かれた2台ピヤノのための曲。幻想的な2台の対話に加えて、両奏者の「声」が加わります。なかなか素敵ですよ。

このCDで取り上げられた曲の楽譜ですが、「シェエラザード」を除き、全て未出版。詳細は分かりませんが、どうやらこの録音のために編曲されたもののようです。入手は極めて困難でしょう。「シェエラザード」のみはKalmus/Warnerから出ており、容易に入手可能です。

このCDも2003年10月末に出たばかりで現役。オンラインですと「amazon.de」で入手できます。(2003年11月25日記)

CDタイトル Johann Christian Bach
        Complete Works for Piano Four Hands
曲目 J.C.Bach: ソナタ Op.15/5 2台のピヤノのための
           ソナタ Op.15/6 連弾のための
           ソナタ Op.18/5 連弾のための
           ソナタ Op.18/6 連弾のための
    W.F.E.Bach: 連弾のためのソナタ ハ長調
              4手のためのデュエット ニ長調
              4手のためのデュエット ト長調
演奏 Piano Duo Genova & Dimitrov
    (Agrika Genova & Liuben Dimitrov)
CD番号 SWR CPO 999 848-2

CDのタイトルは「Johann Christian Bach Complete Works for Piano Four Hands」とありますが、J.C.Bachだけでなく“親戚”のWilhelm Friedrich Ernest Bachの連弾作品も含んでいます。

J.C.Bachは大Bachの末っ子。彼が生きた時代は1735〜1782年。楽器でいうとチェンバロ全盛時代です。この時代に残されたピヤノ・デュオ(連弾も2台も)のオリジナル作品は、それほど多くはありません。まだ、こうした演奏形態が一般的でなかったからなのでしょうね。そうした中にあって、このCDに収録された曲は、非常に生き生きした作風で、ピヤノ・デュオ(当時で言えばチェンバロ・デュオ)の面白さを、全面に出した作品となっています。

あまり誉められたことではありませんが、評者はこの録音を聴くまで、J.C.Bachの作品をほとんど存じ上げませんでした。きちんと聴くのは初体験。それまで、あまり興味を持っていなかったからでしょう。聴いてびっくりです。実に素晴らしいピヤノ・デュオだったから。

もっとも、これは演奏が良いからそのように感じたのかも知れません。「Piano Duo Genova & Dimitrov」(Agrika Genova & Liuben Dimitrov)は、原曲がチェンバロのために作曲されたということを念頭に置かず、あくまで現代のグランドピヤノでどこまで表現できるかを追求しているようにきこえます。それは、とても健康的な音楽で、非常に伸びやか、そして新鮮な躍動感にあふれています。タッチは比較的硬質で明るい音色。聴いていて、本当に爽やかです。評者は古典派以前の作品には、ほとんど興味を示さなかったのですが、こうした演奏ならすんなりと受け入れられます。ピヤノ音楽がお好きな方、評者と同じような感覚をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

演奏に関して、まったく同じことがW.F.E.Bach(1759〜1845)の作品についても言えます。ここに収録された作品の正確な作曲年代はよく分かりませんが、1770年代、あるいはそれ以前と思われます。やはりチェンバロ全盛期の音楽です。先ほどのJ.C.Bachのところで申し忘れましたが、このCDに収められた作品は、すべて2楽章形式。すなわち古典派の3楽章ないしは4楽章形式が完成する前の世代の作品です。

Piano Duo Genova & DimitrovはW.F.E.Bachの作品に関しても、チェンバロを意識することなく、現代のピヤノでできることを思う存分表現しています。それがこれらの作品に新しいいのちを吹き込んでいるのですね。

これは一聴に値するCDです。「チェンバロの作品は、チェンバロでなければヤダ」と仰る方も、是非お聴きになって下さいな。これらの曲の新しい姿を発見できるかも知れませんよ。

楽譜はJ.C.Bachの2台作品がSchottから、連弾作品がC.F.Petersから出ており現役です。この出版情報は松永晴紀先生がご提供下さいました。松永先生、ありがとうございました。なお、W.F.E.Bachの作品に関しては、出版元が分かりません。御存知の方、ご一報頂ければ幸いです。

CDは2003年11月17日時点で現役。オンラインですと「amazon.com」で購入できます。(2003年11月17日記)

曲目 C.Debussy: (1)白と黒で
            (2)小組曲
            (3)夜想曲から、「雲」「祭り」(M.Ravel編曲)
            (4)6つの古代のエピグラフ
            (5)リンダラハ
演奏 Katia & Marielle Labeque
CD番号 Philips 289 454471-2

Debussyのピヤノ・デュオを集めた録音はたくさん出ておりますが、このLabequeによるものはその中でも突出した1枚。例によってこのデュオ特有の生き生きして、輝かしい響きに満ちあふれております。

特に素晴らしいのは「小組曲」。全体的にかなり早めのテンポ。そして音色は硬質。もちろん「連弾の楽しさ」は聴こえるのですが、それ以上にきりりと締まった“透徹の美”のようなものを感じさせます。Duo Crommelynckによる、聴き手を思わずほっとさせる温かな名演がありますが、Labequeのこの演奏は、その対局にあります。かといってKontarskyのような冷め切った演奏とも違います。内面に熱を宿しながら、それをわずかに感じさせつつ、鋭敏にデュオを展開している・・・そんな演奏です。いわゆるDebussy好きの方からは、あまりお好みになれない演奏かも知れません。ただ、“楽譜からできること”をほぼ完全に再現し、彼女たちならではの持ち味が十分に生かされています。究極の「小組曲」と言えましょう。

まったく同じことが「6つの古代のエピグラフ」にも言えます。音自体は少ないし、Debussyで言えば後期にあたる作品。簡素な書法が特徴です。それを非常に艶っぽく、しかも聴き手に媚びることがないように、やや付き放つように弾いています。正直言って、作品自体はあまり面白くないピヤノ・デュオ作品(弾いても、聴いても)なのですが---作品の完成度は別にして---それを最後まで一気に聴かせてしまうLabequeの表現力は素晴らしいものがあります。

2台ピヤノ用の「白と黒で」も、とても楽しく聴くことができます。2台のピヤノの対話が絶妙で、それは素晴らしい。この曲をここまで自由奔放に表現した録音はないのでは・・・と回想する次第です。

同じく2台用の「夜想曲」(M.Ravel編曲)も、目の覚めるような出来映えなのですが、残念ながら、「雲」と「祭り」しか収録されていません。これで「シレーヌ」が入っていれば、この演奏を録音紹介のまっさきにもってきたことでしょう。これだけ立派な録音なのに「シレーヌ」が入っていないのは本当に残念。

何はともあれ、Debussyのピヤノ・デュオを弾きたい・聴きたい・・・と仰る方には、是非とも聴いて頂きたい演奏です。

楽譜は全て現役。(1)はDrand、PetersDover、(2)はやはりDrand、PetersDover、(3)はJobert、(4)はDrand、PetersDover、(6)はJobertから、それぞれ出ています。

このCDも2003年11月10日時点で現役。オンラインですと「amazon.com」などで入手できます。(2003年11月10日記)

曲目 J.Brahms: 交響曲第4番 ホ長調 Op.98 (作曲者自編による連弾版)
           交響曲第1番 ハ短調 Op.68 (同上)
演奏 Duo Crommelynck (Patrick Crommelynck & Taeko Kuwata)
CD番号 Claves CD 50-9012

前回、Brahmsの交響曲第2番と第3番について紹介しました。当然「第1番や第4番はないの?」というご質問が出ることでしょう。もちろん録音はあります。前回紹介したSilke-Thora Matthies & Christian Kohnも録音していますが、わたしたちの「イチオシ」は「Duo Crommelynck」(Patrick Crommelynck & Taeko Kuwata)の演奏です。

Duo Crommelynckについては、もはや説明は不用でしょうし、あの壮絶な最後については、評者らもあちこちで書いているので割愛させて頂きます。数々の名演を残したDuo Crommelynckですが、交響曲の連弾版も相当数レパートリにしていました。この録音は、そうした彼らの一端を示すものです。

ただ、のちに録音したTchaikovskyの「悲愴」やDvorakの「新世界」などに比べると、この録音はいささか“おとなしい”かも知れません。Tchaikovskyで見せた悲劇性や、Dvorakに於ける壮絶な緊迫感は、この演奏にはありません。どちらかというと、“非常に綺麗に曲を纏めた”という印象が強い録音です。それでも、この曲の録音としては、名演であると言えましょう。

全曲を通して、両曲も均整の取れた演奏ですが、聴き所はどちらもの第1楽章と第4楽章。第4番の第1楽章、枯れ葉の舞い落ちるような分散和音の中に表れる主題を、それは見事に歌い上げています。そして、北ドイツの冬曇りの空から、ほのかにのぞく淡い陽光。ピヤノで「ここまで表現できるのか」と思えるほど、表情は豊かです。

第4楽章はシャコンヌでできていますが、ここでも変奏のたびに表情がとても豊かに変わる。31の変奏を、それで1つの大きな構造物を構築するかのように、しっかりと組み立てています。このあたりの構築性、Duo Crommelynck、さすがです。

まったく同じことが交響曲第1番に関しても言えます。とりわけ、長い序奏の後に堂々たる姿を現す第4楽章の主題。ハ短調から始まり周辺の調性をフラフラしながら、少しづつ少しづつ主題に近づいて行き、ハ長調の主題を歌い出す部分。素晴らしい表現力です。このデュオならではの良さが、全面に出ていますね。

これほど有名な曲ならば、まず、管弦楽の原曲を頭に浮かべる人が殆どでしょう。しかし、この演奏を繰り返し繰り返し聴くと、「ひょっとして、最初は連弾曲だったのではないか」(注:Brahmsはオーケストレーションに先駆けて連弾譜を書いている)と思われる方も多いのではないでしょうか。

ただ、管弦楽を聞き慣れた耳には、余程の名演でなければ、これほどまでに素晴らしい「連弾曲」としてこの曲を聴かせることはできないでしょう。その意味で、Duo Crommelynckの演奏は、この曲にとって、第一級の名演と言えるのです。例え、彼らの演奏の中で地味な存在であったとしても。

楽譜はC.F.Petersから交響曲第1番と第2番が「Band I」、第3番と第4番が「Band II」として出ていましたが、現在では絶版。古本市場でも滅多に出てこなくて、どうしても必要な方はC.F.Petersにコピー譜の作成を依頼して下さい。メールで頼めば、親切に対応して下さいます。

このCDは2003年11月3日現在で現役。オンラインですと「amazon.de」で購入できます。(2003年11月3日記)

曲目 J.Brahms: 交響曲第2番 ニ長調 Op.73 (作曲者自編による連弾版)
           交響曲第3番 ヘ長調 Op.90 (同上)
演奏 Silke-Thora Matthies & Christian Kohn
CD番号 Naxos 8.554822

何度かこのコーナーでも書いたことですが、J.Brahmsは同時代のA.Dvorakと同様に、ピヤノ・デュオが大変に好きだったようです。連弾や2台ピヤノのオリジナル名曲を残しているだけでなく、自身の管弦楽曲や室内楽曲の多くを連弾用に編曲したりしています。以前こちらでもご紹介した「ピヤノ協奏曲第1番」も連弾用に編曲しているくらいです。お節介にもSchumannの「ピヤノ4重奏曲」など、他人の作品まで連弾に編曲しているのですね。余程連弾が好きだったのでしょう。

さて、こうした中で、一般に名曲と言われている4つの交響曲も、作曲者自身の手で連弾用に編曲されています。今回紹介するのは、そうした1枚です。

Brahmsの編曲手法は相当に優れていて、あたかも初めからその曲が連弾曲であったかのように響きます。また何度か楽譜を参照した限りでは、その連弾書法は本当に優れていると見ることができました。

ところがどうでしょう。C.F.Petersから出ていた作曲者自身の手による4つの交響曲の連弾用編曲は、絶版になって久しいのが現状です。同じ出版社なら意外と平凡でさほど優れているとは言えないH.Ulrich編曲のBeethovenの9つの交響曲が全て現役で出ているのに比べたら、著しく不当な扱いを受けているのです。そのためか、優れた連弾用編曲でありながら、演奏される機会も、録音となる機会も、残念ながら本当に少ないのです。

そうした数少ない録音の1つが、今回取り上げたSilke-Thora Matthies & Christian Kohnによる演奏です。アンサンブルや音の作り方にやや荒いところは見られるのですが、スケール大きく、比較的きらびやかな演奏です。録音のせいもあるのかも知れませんが、堂々たる演奏と言えましょう。やや早めにテンポをとって、全体を“硬質”にまとめています。明るい音質なので、“渋さ”は、やや控えめ。でも評者は、このような演奏が好きです。勢いをもって、一気呵成に曲を押し進めていくような演奏が。“渋いBrahms”をお好みの方には、ちょっと向いていないかも知れません。

強烈な個性は感じられませんが、これはこれで、連弾Brahmsの交響曲の、ひとつの方向性ではないかと思います。

ちなみにこのNAXOSというレーベル、商品単価が「安い」のが“売り”です。このCDも7ドル98セントで購入しました。ただ、このレーベルの商品は出来不出来が激しく、大変に優れた演奏もあれば、それこそどうしようもないものまであります。まあ、安いですから、失敗してもそれほど「損した」という感はありませんが、やはり不出来なものを掴まされたら頭に来ます。幸いなことにこのBrahmsは、このレーベルとしては上出来な方でした。

なお、楽譜についてですが、先ほど申し上げましたように、現在絶版です。C.F.Petersから、2巻に分けて出版されていました。「Band I」が交響曲第1番と第2番、「Band II」が第3番と第4番です。絶版ではありますが、どうしても必要な方は、C.F.Petersにコピー譜作成の依頼をして下さい。ほぼ確実に作成して下さるはずです。メールで依頼すれば、親切に応対して下さいますよ。

このCDは2003年10月20日時点で現役。オンラインですと「amazon.com」などで入手できます。
(2003年10月20日記)

曲目 M.Ravel : 序奏とアレグロ(2台版:作曲者自編)
           弦楽四重奏曲(連弾版:M.Delage編曲)
    C.Debussy : 弦楽四重奏曲(連弾版:A.Benfeld編曲)
演奏 Joop Celis & Frederic Meinders
CD番号 Classic Talent DOM 2910 63

非常にセンスの良い、フランス物連弾編曲のCD。繊細さを全面に出した演奏は、聴く者を心地よい世界に誘います。…かといって、決してパラパラと弾き流した演奏ではありません。やや線は細いですが、ダイナミクスの幅も兼ね備え、作品のアウトラインをくっきりと描いております。この手の編曲物で…Ravelの「序奏とアレグロ」は、いくつもの素晴らしいCDがありましたが、2つの弦楽四重奏曲に関して…これほどレヴェルの高い演奏がCDで聴けるとは思いませんでした。嬉しい限りです。

19世紀から20世紀前半、特に1930年代まで、交響曲や管弦楽曲のほかに、室内楽曲の連弾用編曲も盛んになされていました。管弦楽の連弾用編曲は、その用途が分かっているのであまり不思議ではないのですが、何故室内楽曲まで連弾に編曲されたのでしょう? その明確な理由は、いまだに掴めていません。でも、数多くの室内楽曲が連弾用に編曲され、出版されてきたのは、疑いようもない事実です。何らかの需要、別の言い方をすれば必要性があったのかも知れません。

ただ、こうした編曲は出来不出来が激しく、すべてが連弾用として適切とは言えません。最初から連弾曲だったかのような素晴らしい編曲もあれば、どうしようもないものもあります。まあ、この辺は、管弦楽曲の連弾用編曲も同じようなものですね。

こうした編曲の中に、DebussyやRavelの作品があります。Durandなどのカタログやさまざまな文献を見ると、彼らの作品のいかに多くが連弾や2台用に編曲されているかが分かります。そう、驚くほどの数になるのですよ。作曲者自身の編曲の他、お節介な他人が、ずいぶんとたくさんの曲を、ピヤノ・デュオ用に編曲しているのです。Faureのピヤノ5重奏曲や、Franckのヴァイオリン・ソナタが連弾用に編曲されていたなんて、御存知でしたか? しかし、一部の作品…特に管弦楽曲は別にして…特に室内楽曲など、編曲はあれど、なかなか録音になっていないのが現状です。これはとても残念なことですね。

そこに登場したのが、このディスクです。はじめに見つけたときには「キワモノが出たな」というのが正直な感想でした。ところがどうでしょう。まるで最初から精緻なピヤノ・デュオであったかのように、それは素晴らしく作品を提示してくれているのです。そして、Ravel自身の「序奏とアレグロ」はもとより、他人が編曲したRavelとDebussyの弦楽四重奏曲の演奏の、何と見事なことか。

ちなみにRavelの四重奏はM.Delageという人が、DebussyのはA.Benfeldという人が編曲しています。それぞれオリジナルの作曲者のピヤノ書法…もっと言えば連弾書法…を徹底的に研究して、「作曲者だったら、こんな風に連弾曲にしたはずである」とまで書き尽くした、それは見事な連弾用編曲になっているのです。そうした編曲を目の覚めるように演奏しているJoop Celis & Frederic Meindersの二人は、大変に優れたデュオと言えましょう。脱帽ですね。是非、1度、お聴きになってみて下さいな。これらの編曲が実に優秀だということが手に取るように分かりますから。特にフランス音楽好きの方にはお薦めです。とても爽やかな演奏ですよ。

楽譜はすべて現役。容易に入手可能です。全部Durandから出ています。なお、このサイトの「楽譜蔵書情報」で、Ravelの弦楽四重奏曲の編曲者がL.Garbanとなっていますが、大嘘です。ごめんなさい。M.Delageの誤りです。

CDは2003年10月6日時点で現役。オンラインですと「amazon.com」などで入手できます。
(2003年10月6日記)

曲目 R.Schumann: 東洋の絵 Op.66
    J.Brahms: シューマンの主題による変奏曲 Op.23
    R.Schumann: ピヤノ四重奏曲 Op.47
              (Brahms編曲による連弾版)
演奏 Yaara Tal & Andreas Groethuysen
CD番号 Sony Classical SMK 87314

素晴らしい躍動感、引き締まった音色、絶妙のアンサンブル、彫りの深い陰影…。ここで収録したSchumannとBrahmsに求められる、おそらく全てを満たした、非常に理想的な演奏の登場です。

以前にもこの欄で書いたことがありますが、Schumannは充実したオリジナル連弾曲と、交響曲の連弾用自編を残しながら、そのほとんどは現役の録音できくことはできません。ここで収録した「東洋の絵」などは、まだ幸せな方で、いくつかの録音を耳にすることができます。しかしながら、このYaara Tal & Andreas Groethuysenの演奏は別格。他の録音を一気に引き離す、素晴らしい出来映えです。

「東洋の絵」。確かに彫りが深くて絶妙の陰影を持たせた演奏です。しかし、妙に重くならず、爽やかな音の流れ。ひとつひとつの音の粒立ちがキラキラしていて、フレーズの作り方も実にしなやか。それでいて、6つの曲を、とても多彩な表情で弾き分けています。このデュオの良いところが全面に出た秀逸な演奏と言えましょう。これを超える演奏をするのは、ちょっと難しいのではないか…と思います。

まったく同じことが、Brahmsの「Schumannの主題による変奏曲」にも言えます。プリモとセコンダの、それは素晴らしいアンサンブルに絶句。10の変奏が、まるでひとつひとつの人格を持つかのように、表情をきれいに変えて演奏しているところなど、本当に素晴らしい! この曲の持つ特性を極限までに追求した演奏と言えましょう。Schumannが天使に教えてもらった…というこの浪漫的な主題をがっちりと変奏するこの曲。ヘタに演奏すると妙に重々しくなってしまうのですが、Tal & Groethuysenの手に掛かると、まるで清冽な谷川の流れのように、爽やかで輝かしい演奏になってしまうところが不思議です。もちろん、Brahms特有の渋みも感じさせますが。とにかく、すべてにおいてバランスの良い、理想的な演奏です。理想的ではあっても、模範ではない…そうした、ちょっと他のデュオでは真似のできない演奏になっています。この曲を演奏しようとする方、必聴ですね。

最後に収録してあるSchumannの「ピヤノ四重奏曲」の連弾版。もうこれには絶句です。編曲は何とBrahms。うーん、こんな組み合わせの編曲があるなんて、このCDを入手するまで存じ上げませんでした。凄い組み合わせですね。このピヤノ四重奏曲には、C.Reineckeの編曲(C.F.Petersから出版。現在絶版)と、J.Erneyの編曲(Universalから出版。現在絶版)の編曲があるのは知っていましたが、Brahmsの編曲もあるのですね。この編曲、原曲を知らなければ、素晴らしい連弾ソナタにしかきこえませんよ。それ程までに完成度の高い編曲です。それをTal & Groethuysenが実に鮮やかに弾いている。この生き生きとした躍動感は、一度聴いたら忘れることはできません。しかし驚きですね。1つのピヤノ四重奏に、少なくとも3種の連弾用編曲があるなんて! Beethovenの交響曲あたりだったら考えられますが、Schumannの室内楽で、こうしたことがあるのですね。

楽譜ですが、「東洋の絵」は、C.F.Peters、International、全音楽譜出版社から出ています。全音版の校訂・解説者は角野裕・怜子先生です。「シューマンの主題による変奏曲」はC.F.Peters、貧者の味方Doverから出ています。「ピヤノ四重奏曲」は、ずいぶんと調べたのですが、出版社は不明。御存知の方、ご一報下さい。これだけは絶版です。中古市場でも見たことはありません。

このCD、2003年9月22日時点で現役。オンラインですと「amazon.de」で入手できます。(2003年9月22日記)

曲目 F.Mendelssohn -Bartholdy
             子供のための小品 Op.72(作曲者自編による連弾版)
             グラン・デュオ Op.3(連弾版)
             7つの無言歌(作曲者自編による連弾版)
             2台ピヤノのための「デュオ・コンセルタント」
               (Moschelesとの合作)
演奏 Monika Egri & Attila Pertis
CD番号 Hungaroton HCD 31855

Mendelssohnのピヤノ・デュオというと、まず思い浮かぶのが、作品83aの「アンダンテと変奏曲」、そして連弾曲としての最難曲とも言われる作品92の「華麗なアレグロ」でしょう。実際、作品番号付きのオリジナル・デュオ曲はこの2曲だけで、後は、作品番号なしのオリジナル曲が2つあるだけ。その作品番号なしのは、あまり大した作品ではないようで、申し訳ないけど、無視してしまって良いみたい。しかし、Mendelssohnのデュオは、これらだけではないことを教えてくれるのが、このCDです。

何度かこのコラムでも紹介した「Duo Egri & Pertis」(Monika Egri & Attila Pertis)。このデュオは、世に知られていない、あるいは知られていても録音が極端に少ないピヤノ・デュオ作品ばかりを録音しているデュオです。このCDでもやってくれました。非常に珍しい、Mendelssohnのデュオ曲ばかりを集めた録音を。

CD冒頭に収録されている「子供のための小品 作品72」。これはもともと、ピヤノ・ソロの曲です。これは比較的知られていますが、それを作曲者自身が連弾にしていたのですね。このCDに出会うまで、評者はその存在を知りませんでした。手元にあるデュオ関連の文献には、まったく記載されていないので。楽譜を参照することができないので確実なことは言えませんしソロとの比較もできないのですが、この録音を聴く限り、とても可愛い連弾曲です。この録音を聴いたら「やってみたいな」と思われる方も多いのではないでしょうか。いかにもMendelssohnらしい、流麗な旋律で満ちています。これを気の合う2人で並んで弾いたら楽しいでしょうね。

続く「グラン・デュオ 作品3」。現在、Mendelssohnの作品3と言うと、ピヤノ5重奏です。本当かどうか分かりませんが、CDの解説によると、ピヤノ5重奏の原曲になったのは連弾曲の「グラン・デュオ」。評者はその「ピヤノ5重奏」というのを存じ上げませんが、この演奏を聴くと、まさに連弾曲そのもののように感じます。演奏時間が約34分、4楽章形式の堂々たる大曲。ちょっと冗長な面はありますが、気持ちよく聴くことができますね。大変に優れた連弾曲です。この曲なら、連弾演奏会の中核に据えても、十分通用するのではないでしょうか。

無言歌」。この作曲者自身による編曲は、かなり有名です。ただ、録音は少なく、なかなか耳にする機会はないでしょう。評者もこのCDで、初めて音として聴くことができました。「無言歌」というと、「ピアノ・デュオ作品事典」の著者の松永晴紀先生がご指摘されているように、「原曲はレッスン用の教材として使われることが多いが、伴奏の書法は多様であり、しかも片手で旋律と伴奏の両方を弾き分けなければならない部分が多い」ため、初心者が弾くには意外と厄介です。ところがこの編曲では、ほとんどプリモが旋律を、セコンダが伴奏を分担し、楽しく弾けるようになっています。さて、それを音にするとどうなるのか。興味津々で聴いたのですが、連弾曲としてなかなか様になっています。まあ普通、この手の曲は録音されることが少ないのは(曲の成り立ちその他から)当然なのですが、こうして改めて音として聴くことができるのは、デュオ愛好者として嬉しいものです。

最後に収録してある「デュオ・コンセルタント」は、MendelssohnとI.Moschelesの合作。これは、C.M.v,Weberの劇音楽「プレチオーザ 作品78」の中に出てくる行進曲を主題として、序奏と4つの変奏曲、フィナーレをつけた作品です。あまり確かではありませんが、いくつかの文献によれば、ピヤノ・ソロと管弦楽のための作品を2台ピヤノのために編曲しなおしたものとのこと。あるいは、2台ピヤノとオプションで管弦楽をつけた作品との記述があります。正確なところは分かりません。Mendelssohnが序奏と第1、第2変奏を、それ以外をMoschelesが作曲しました。聴いている限りは、全然違和感はありません。とても華やかで、素敵な作品ですよ。

・・・とこうして、知られざるMendelssohnのデュオ作品ばかりを集めたのが、このCDです。演奏は例によってとてもシャープで明るく、楽しんで聴くことができます。

楽譜ですが、「無言歌」がBarenreiterから現役で出ているほかは、すべて絶版。出版社も正確には分かりませんでした。御存知の方がいらっしゃいましたら、どうぞご一報下さい。それにしてもDuo Egri & Pertis、毎回埋もれているような作品の楽譜を、どこからともなく掘り出して、CDにしています。いったいどこから探してくるのでしょうか? これはプロデューサが立派なのかも知れませんね。

このCDは2003年9月16日時点で現役。オンラインですと「amazon.com」で入手できます。
(2003年9月16日記)


今週の1枚 バックナンバー Vol.1
今週の1枚 バックナンバー Vol.2
今週の1枚 バックナンバー Vol.3
今週の1枚 バックナンバー Vol.4
今週の1枚 バックナンバー Vol.5
今週の1枚 バックナンバー Vol.6
今週の1枚 バックナンバー Vol.7
今週の1枚 バックナンバー Vol.8
今週の1枚 バックナンバー Vol.9
今週の1枚 バックナンバー Vol.10
今週の1枚 バックナンバー Vol.11
今週の1枚 バックナンバー Vol.13
今週の1枚 バックナンバー Vol.14
今週の1枚 バックナンバー Vol.15
今週の1枚 バックナンバー Vol.16
今週の1枚 バックナンバー Vol.17

トップページへ  楽譜リストへ  CDリストへ

(c) Yumiko & Kazumi 2003