作曲者別CDリスト 

1枚(1組)のCDが、1人の作曲家の作品で構成するアルバムを纏めました。
2人以上の作曲家が1枚(1組)に収録されているCDは「演奏家別CDリスト」をご参照下さい。



C.V.Alkan

演奏者 Huseyin Sermet & Jean-Claude Pennetier
収録曲  
C.V.Alkan Trois marches pour piano a quatre mains op.40
  Allegro Barbaro op.35, Trois petites fantaisies op.41, Trois preludes op.31 を併録
CD番号 Auvidis Valois V-4808
録音データ Dec/97
演奏評/資料評価 ☆☆/★★★★
備考 現存する録音としては唯一。曲のアウトラインを把握する上では良い演奏ですが、それ以上の何物でもありません。
ちょっとあっさりと弾きすぎの感があります。折角唯一の演奏ならば、もっともっと“聴かせても”よいのでは、
欲求不満を感じる演奏です。その意味で残念。



A.Arensky

CDタイトル Suites for Two Pianos
演奏者 Stephen Coombs , Ian Munro
収録曲  
Anton Arensky Suite No.1 op.15
  Suite No.2 op.23 "Silhouettes"
  Suite No.3 op.33 "Variations"
  Suite No.4 op.62
CD番号 Hyperion CDA66755
録音データ 4-5/June/1994
演奏評/資料評価 ☆☆/★★★
備考 端正で模範的な演奏。しかし面白みがあり、楽しく聴くことができる。購入しても損はない。
でも、折角なら、もうすこし「羽目を外した」ほうがよかったのではないか、
というのが正直な感想。



J.S.Bach

演奏者 Sontraud Speidel , Evelinde Trenkner
収録曲  
J.S.Bach Brandenburgische Konzerte No.1-6(BWV 1046-1051) (arr.M.Reger)
CD番号 Mabringhaus und Grimm MDG 330 0653-2
録音データ Furistliche Ritbahn,Arolsen June/95
演奏評/資料評価 ☆☆☆/★★★★
備考 さまざまな意味で、不気味な録音です。何故にこれほどまでに「弾きにくい」曲を録音する意義があるのでしょう。
しかも楽譜を見ていない(あるいは弾いたことのない)人が聴けば、「何の苦労もなくブランデンブルグ・コンセルトを連弾でやっただけ」としか
聞こえない、この曲を。そして不気味なのは、この演奏者である中年の女性たちが、楽譜に忠実にかつ堅牢に演奏している点です。
確かに、レーガー編曲のこの曲を、世に知らしめるという意義は絶大です。しかしながら、この曲を弾く「苦難」と「知らせる」ということを
天秤に掛けたら・・・。常人なら、ちょっと理解不能でしょう。だって、この録音を聴いているだけなら、あたかも何の苦労もなく、
ありきたりの編曲を弾いているように聞こえるのだから。



M.Balakirev

CDタイトル Balakirev Oeuvers pour deux pianos
演奏者 Elena Winther , Vladimir Pleshakov
収録曲  
Milli Barakirev Thamara - Poeme Symphonique , for a piano 4 hands (arr. A.Glazounov)
  Sur la Volga
  Suite
  Deux fragments de l'opera feerique (arr. Composer)
  30 Chants populaires
CD番号 Dante PSG9640
録音データ 1995
演奏評/資料評価 ☆☆☆/★★★★
備考 CDの盤(ジャケットではない)にまで、この夫婦デュオの「ツーショット」が焼き付けられている強烈なCD。
この「仲の良さ」には、私たちも脱帽です。しかも演奏が実に素晴らしい。
タイトルのdeux pianosは、ウソ。ほとんどが連弾作品で、1台で演奏しています



L.Bernstein

CDタイトル West Side Story
演奏者 Katia Marielle Labeque
収録曲  
L.Bernstein Symphonic Dances from West Side Story for 2 pianos & Percusion, Jazz Drums (arr. Irwin Kostal)
  Songs from West Side Story for 2 pianos (arr. Irwin Kostal)
CD番号 CBS MK45531
録音データ 1998
演奏評/資料評価 ☆☆☆/★★★★
備考 原曲は言わずと知れた、ブロードウエイ・ミュージカルの傑作。そこからBernstein自身の“編曲”でも知られる「Symphonic Dances」と「唄集」を2台ピヤノに編曲して収録です。これが絶品!思わず、自分でも弾いたみたくなってしまうような編曲です。実にうまく原曲をピヤノに乗せ変えた、と言う意味で一聴の価値ありです。そして、切れの良い、しかも十分に旋律を歌いきった演奏。録音も芯をとらえながらも、かなり長い残響と十分な音の広がり。

「Symphonic Dance」は、打楽器を加えた「ジャズ・セッション」。同じ曲をGuher & Suher Pekinelが録音していますが、編曲が違う上に曲へのアプローチが完全に異なるため、聴きようによっては、別の曲を聴いているようにも聞こえます。Pekinelたちの録音も同じく2台のピヤノに打楽器を加えた演奏。Bartokの「2台のピヤノと打楽器のためのソナタ」と、ほぼ同様の編成です。ただし、Labequeの録音は、2人による打楽器奏のほかにジャズ・ドラムスが加わります。収録曲はほぼ同じ。若干順序が異なるだけです。

どちらも素敵な演奏です。Pekinelの演奏はBartokのソナタに通じる鋭い切り込み。一方Labequeは楽しいジャズセッション。ひとつひとつのフレーズが、実に大きな幅で揺れ動きます。

そして、Symphonic Dance以上に楽しいのが「唄集」。「Something's Coming」「Maria」「America」「Jet Song」「One Hand, One Heart」「I feel Pretty」「Tonight」「A boy like that, I have a love」を収録。どれも管弦楽の動きまで完全に取り込んで、しかも「唄」の旋律を浮き上がらせるような編曲/演奏となっています。演奏中、Katia Labequeが旋律に合わせて歌っているのが、あちこちで聞こえるのですね。これが実に楽しい!

ちなみに、ここで弾かれている「Tonight」は、あのバルコニーのシーンではなく、後半に現れる決闘前のシーン。トニー、マリア、ベルナルド、アニタ、リフの5重唱に加えてジェッツとシャークスのコーラス群による、古今東西のミュージカルの中で最も難しいナンバーの1つ。これを2台のピヤノ用として完全に凝縮している稀に見る好編曲です。この1曲を聴くだけでも、当該CDを入手しただけの価値はあります。
買って損なし! 聴いて損なし!



J.Brahms

演奏者 Duo Crommelync (桑田妙子、Patrick Crommelync)
収録曲  
J.Brahms Symphony No.1 c-minor Op.68 for a piano 4 hands (arr. Composer)
  Symphony No.4 e-minor Op.98 for a piano 4 hands (arr. Composer)
CD番号 Claves CD 50-9012
録音データ Tokyo:May/84(No.1), Veenendaal Holland:Nov/82(No.4)
演奏評/資料評価 ☆☆/★★
備考 均整のとれた高水準の演奏ですが、このデュオならではの「おもしろさ」が多少欠けているのが何とも残念。
このディスクのすぐ後に録音したDebussyの連弾曲集のような、極度の求心性が見られません


演奏者 Martha Argerich & Alexander Rabinovitch
収録曲  
J.Brahms Variations on a theme by Joseph Haydn for 2 pianos op.56b
  Sonata for 2 pianos in F minor, op.34b
  5 Waltzes, aus op.39 for 2 pianos
CD番号 Teldec 4509-92257-2
録音データ Teldec Studio, Berlin, Apr/93
演奏評/資料評価 ☆☆☆☆/★
備考 鮮烈な演奏。あらゆる意味で完璧。力と技巧で、聴く者の心を叩き切る。
ただし、従来型の「深刻なブラームス」を求める方、「ふっくらとした暖かさ」がお好きな方には、明らかに不適。



A.Bruckner

演奏者 Sontraud Speidel , Evelinde Trenkner
収録曲  
A.Bruckner Symphony No.3 (arr. G.Mahler)
CD番号 Mabringhaus und Grimm MDG 330 0591-2
録音データ June/1994
演奏評/資料評価 ☆☆☆/★★★★
備考 実に清冽なBruckner。速いテンポで全曲を弾ききります。ピヤノの音はかなり硬質で、シャープな演奏。
しかも曲の構造をがっちりと抑えています。この中年の女性のおばさまデュオ、実に面白く弾いています。
こうした演奏、「Brucknerヲタク」の方々には受け入れがたいものがあるでしょう。逆にピヤノが好きで
Brucknerに馴染めなかった方には、この作曲家へのすばらしいアプローチとなることでしょう。

曲本体に関しては譜面を見ていないので詳細には言及できません。この録音を聴く限りは、ピヤノ曲として
楽しく聴ける「よくできました」の編曲レベルです。
ただし、この作品を編曲したMahler自身の交響曲第6番・連弾版(A.v. Zemlinsky編曲)と比較すると、
やや編曲レベルは落ちます。Zemlinskyの編曲は、管弦楽曲以外の何物でもない原曲を
あたかも最初からピヤノ連弾曲」であったかのように、実に「それらしく」編曲しているので。
Mahlerの第6番を知らない人に曲名を伏せて聴かせたら、絶対原曲が管弦楽だとは分からない。
残念ながらMahler編曲のBrucknerは、そこまでの「境地」に達していません。でも、十分ピヤノ曲として楽しめますよ



C.Debussy

演奏者 Duo Crommelync (桑田妙子、Patrick Crommelync)
収録曲  
C.Debussy La Mar for a piano 4 hands (arr. Composer)
  Marche Ecossaise sur un Theme Populaire (original version)
  Petite Suite
  Six Epigraphes Antiques
CD番号 Claves CD 50-8508
録音データ Tonstudio van Geest, Heidelberg, Jul/85
演奏評/資料評価 ☆☆☆/★★
備考 曲本来の美しさを引き出した名演。特に「海」は緊張感と迫力、繊細さを兼ね備えており素晴らしい。
曲の「弾き難さ」をまったく感じさせません。2人の呼吸が、何とぴたりと合っていること!
他の曲も、このデュオならではの魅力--切れ味が良い中にも、暖かさを含む--でいっぱい。
なお、「民謡を主題としたスコットランド風行進曲」は、コーダの短い「原典版」(通称・モスクワ版)を使用しています



P.A.Grainger

CDタイトル Grainger Piano Music for Four hands Vol.1
演奏者 Penelope Thwaites , John Lavender
収録曲  
P.A.Grainger In a Nutshell
  Spoon River
  When the World was Young
  Molly on the Shore
  Hill Song No.2
  Country Gardens
  Mowgli's Song Against People
  Eastern Intermezzo
  English Waltz
  The Wraith of Odin
  Always Merry and Bright
  The Duke of Marlborough Fanfare
  A Lincolnshire Posy
CD番号 Pearl SHE CD 9611
録音データ BBC Maida Vale studios UK: Mar/89
演奏評/資料評価 ☆☆☆/★★★★


CDタイトル Grainger Piano Music for Four hands Vol.2
演奏者 Penelope Thwaites , John Lavender
収録曲  
P.A.Grainger Children's March: Over the Hills and Far Away
  Shepherd's Hey
  Hill Song No.1
  Handel in the Strand
  Harvest Hymn
  The Widow's Party
  The Lonely Desert Man Sees the Tents of the Happy Tribes
  The Rival Brothers
  The Warriors II (Room Music)
  Two Musical Relice of My Mother
  Let's Dance Gay in Green Meadow
  The Duke of Marlborough Fanfare
  Pritteling Pratelling Pretty Poll Parrot
CD番号 Pearl SHE CD 9623
録音データ BBC Maida Vale studios UK: Mar/89, Jan/91, Jul/91
演奏評/資料評価 ☆☆☆/★★★★


CDタイトル Grainger Piano Music for Four hands Vol.3
演奏者 Penelope Thwaites , John Lavender
収録曲  
C.Scott Three Symphonic Dance (arr. P.A.Grainger)
P.A.Grainger Rond
  Ye Banks and Braes
  Tiger-Tiger
  The Crew of the Long Dragon
  Walking Tune
  Fantasy on Themes from G.Gershwin's "Porgy & Bess"
F.Delius A Dance Rapsody (arr. P.A.Grainger)
E.Grieg Knut Lurasen's Halling II (arr. P.A.Grainger)
R.Addinsell Festival (arr. P.A.Grainger)
C le Jeune La Bel' Aronde (arr. P.A.Grainger : 1st Version)
  La Bel' Aronde (arr. P.A.Grainger : 2nd Version)
G.Gershwin Embranceable You
CD番号 Pearl SHE CD 9631
録音データ BBC Maida Vale studios UK: 1993
演奏評/資料評価 ☆☆/★★★★



Reynaldo Hahn

演奏者 Huseyin Sermet, Kun Woo Paik
収録曲
R.Hahn Trois preludes sur des airs Irlandais
Sept berceuses
Caprice melancolique
Pour bercer un convalecent
Le ruban denoue : Douze valses
CD番号 Auvids Valois V 4658
録音データ June & Dec./91
演奏評/資料評価 ☆☆/★★★★
備考 爽やかで、ほっとする演奏。珍しい演目ですが、単に珍品の録音というだけでなく、実に楽しく聴くことができます。
その点で、秀逸なCDと言えましょう。フランス物、ピヤノ2重奏物がお好きな方、すべてにお勧めです。
もう少し、演奏に切れがあった方が良いのですが・・・。まあ、それは好みの問題でしょう。
なお、ここに収録した魅惑的な曲たち。楽譜は99年3月20日時点で、すべて絶版状態です。
また、CDのタイトルには「Vol.1」と記載されておりますが、いつまで待っても「Vol.2」が出ません。



D.E.Inghelbrecht

演奏者 Daniel Blumenthal , Robert Groslot
収録曲  
D.E.Inghelbrecht La Nursery, for 4 hands , a piano
  Pastourelles(pf. solo)を併録
CD番号 Etcetera KTC 1157
録音データ Aug & Nov / 92
演奏評/資料評価 ☆☆☆/★★★★
備考 作品の持つ魅力を十分に引き出した演奏。やや早めのテンポで弾いています。切れ味良し。
しかも叙情性も十分。文句なし。真剣に聴いても、BGMにしても、どちらでも楽しめるCDです。お勧め。



F.Liszt

CDタイトル The Christmas Tree and other works for piano duet
演奏者 Pinucia Giarmana , Alessandro Lucchetti
収録曲 All arrengemented by composer
F.Liszt Rhapsodie Hangroise No.2, for 4 hands , a piano
  Gaudeamus Igitur for 4 hands , a piano
  Fest Polonase , for 4 hands , a piano (original version)
  Weihnachtsbaum , for 4 hands , a piano
CD番号 Gallo CD-817
録音データ Euphonic Sound Studio- Montebelluna, Italy: 12-14/September/94
演奏評/資料評価 ☆☆/★★★★
備考 極めて「模範的」な演奏。どの曲も歯切れが良く、若干早めのテンポです。
音像がぼやけるなど、録音はあまり良くありません。これでもっとシャープな録音ならば、
聴いた印象もずいぶんと良くなるのでしょうが。決して悪い演奏でないのに、録音で損をしているディスクです



A.Magnard

演奏者 Christoph Keller , Katharina Weber
収録曲  
A.Magnard Suite dans le style ancien op.2, for 4 hands, a piano
arr. by composer
  Six Poemes en musique op.3, Quatre Poemes en musique op.15を併録
CD番号 Accord 200492
録音データ Nov./88
演奏評/資料評価 ☆☆/★★★★
備考 端正そのもの。過不足無のない表現。演奏自体は決して悪くないのですが、何せ曲が「暗い」。
FaureのNocturneをもっと根暗にした感じ。気力のないとき、落ち込んだときに聴いてはならないCDです。
人生に絶望したときに、夏目漱石の「こころ」を読むようなものです。気を付けましょう



G.Mahler

演奏者 Silvia Zenker , Evelinde Trenkner
収録曲  
G.Mahler Symphony No.6 (arr. A. v Zemlinsky)
CD番号 Mabringhaus und Grimm MD+GL 3400
録音データ Furistliche Ritbahn,Arolsen: 9〜10/Apr/91
演奏評/資料評価 ☆☆☆/★★★★


演奏者 Silvia Zenker , Evelinde Trenkner
収録曲  
G.Mahler Symphony No.7 (arr. A. Casella)
CD番号 Mabringhaus und Grimm MD+GL 3445
録音データ Historische Reitbahn,Arolsen: 20〜23/Jan/92
演奏評/資料評価 ☆☆/★★★★



J. McGuire

演奏者 Herbert Henck , Deborah Richards
収録曲  
John McGuire 48 Variations for Two Pianos
CD番号 Largo 5108
録音データ Hessischer Rundfunk, Frankfurt: 28-30/July/86
演奏評/資料評価 ☆☆/★★★★
備考 ミニマル・ミュージック。1つの主題がほんの僅かづつ変化しながら、両奏者の間で受け渡される。
バックグランド・ミュージックとしては、なかなか良い物。
ただし、真剣になって作品に集中して聴こうとすると、かなりつらいものがある。似たような節が、
延々56分間も流れてくるのだから。そして、演奏はかなり冷静。
その種の音楽が好きな方にはお勧め。それ以外の方は手を出さない方が無難です。
さすがのわたしたちも、弾いてみたいとは思いません



O.Messian

演奏者 Yvonne Lorio, Olivier Messian
収録曲  
O.Messian Vision de L'Amen
CD番号 ADES ADE 650
録音データ 1962
演奏評/資料評価 ☆☆/★★★★(作曲者自身の演奏という特殊事情による評価)


演奏者 Alexander Rabinovitch, Martha Argerich
収録曲  
O.Messian Vision de L'Amen
CD番号 EMI CDC 7 54050 2
録音データ No.1 Studio, Abbey Road, London UK: Dec/89
演奏評/資料評価 ☆☆☆☆/★★


   
演奏者 Katia & Mariell Labeque
収録曲  
O.Messian Vision de L'Amen
CD番号 WPCC-5474 (ERATO 4509-92289-2)
録音データ Paris: Dec/69
演奏評/資料評価 ☆/★★



S.Rachmaninoff

演奏者 Vladimir Ashkenazy & Andre Previn
収録曲  
S.Rachmaninoff Suite No.1 for 2 pianos "Fantaisie-Tableaux" Op.5
  Suite No.2 for 2 pianos Op.17
  Etudes tableaux op.33を併録
CD番号 DECCA 425 029-2
録音データ 1974
演奏評/資料評価 ☆☆/★
備考 1970年代の名録音。そのころこの曲でめぼしい演奏は、これだけでした。それを考えると、現在これだけポピュラーになっているこの曲も、ふた昔前までは「マイナー曲」だったのですね。若干アンサンブルの問題はありますが、演奏自体は決して悪くはありません。かなり「かっちり」と弾いている上に、叙情性も失いません。ただし、あくの強さや強烈な個性はありませんね。その意味で、今聴くと、物足りなさを感じてしまう演奏です。もっともそれも好きずきでしょうけれど。しかしながら80年代以降、Guher & Suher PekinelArgerich(2種)などの録音が続々登場。今やこの演奏も「選択肢のひとつ」となってしまいました。


演奏者 Martha Argerich & Alexandre Rabinovitch
収録曲  
S.Rachmaninoff Suite No.1 for 2 pianos "Fantaisie-Tableaux" Op.5
  Suite No.2 for 2 pianos Op.17
  Symphonic Dances for 2 pianos op 45 arr. By composer
CD番号 TELDEC 9031-74717-2
録音データ 09/1991
演奏評/資料評価 ☆☆☆☆/★
備考 文句の付け所がない、完璧な演奏です。これは脱帽。テンポを極端に揺らしながらも、完璧なアンサンブルを展開します。録音のせいもあるのでしょうが、曲の細部をかなり浮き彫りにした上で、ダイナミズムを全面に押し出しています。ちなみに「縦の和音」をトレモロにするなど、若干楽譜に手を入れた演奏です。それがまた、妙に効果的なのですね。Argerichにとって、Suite No.2Symphonic Dancesは再録音。いずれも前録音を上回る出来映えです。せっかく聴くなら、この再録音がお勧め。特にSymphonic Dancesの旧録音は、Argerichと思えないほどの“醒めた”演奏で、全然おもしろくありません。ちなみに97年12月、わたくしたちは、このデュオの演奏でSuite No.2を目の前で聴いたのですが、この録音よりさらに素晴らしい演奏でした。目の前で展開されている「音楽」が、まるで夢でも見ているかのような出来映えだったので。いずれにせよ、この録音は、買って損なし、聴いて損なし!


演奏者 Katia & Marielle Labeque
収録曲  
S.Rachmaninoff Suite No.1 for 2 pianos "Fantaisie-Tableaux" Op.5
  Suite No.2 for 2 pianos Op.17
CD番号 Erato 4509-92290-2
録音データ Paris 11/72
演奏評/資料評価 ☆☆/★
備考 実に冷静なRachmaninoff。非常に醒めた演奏です。ここまで醒めきったRachmaninoffは、ちょっと珍しいのではないでしょうか。ただし、アンサンブルは完璧、かつ完全に曲を手中にしています。感情を排した演奏がお好きな方にはお勧めです。



M.Reger

CDタイトル Max Reger ,Das komplette Werk fur zwei Klaviere
演奏者 Isabel & Jurg von Vintcscher
収録曲  
M.Reger Introduktion, Passacaglia und Fuge op.96
  Variationen uber ein Thema von W.A.Mozart op.132a
  Variationen und Fuge uber ein Thema von Beethoven
CD番号 Jecklin-Disco JD 609-2
録音データ 1985
演奏評/資料評価 ☆/★★
備考 曲のアウトラインが解る程度の、つまらない演奏。楽譜を忠実に音にした、という以外の何物でもありません。
この程度の演奏だったら、音大生が学園祭でやった方がずっと楽しく聴くことができるでしょう。
どんな曲なのか知りたい、という方以外はお勧めではありません。
なおop.132aの第8変奏は管弦楽版とはまったく異なる方の編曲
(2台版はこちらがオリジナル。第8変奏に関する管弦楽の2台版編曲は、ここでは使われていない
Schumitt-Rindnerによる)を使用しています。


CDタイトル Reger Piano MUsic for Four Hands
演奏者 Yaar Tal & Andreas Groethuysen
収録曲  
M.Reger 6 Burlesques Op.58
  Introduction and Passacaglia for Organ in D minor (arr. composer)
  12 Waltz Caprices Op.9
  Variations and Fufue on a Theme by Mozart Op.132a
CD番号 SONY SK47671
録音データ 19-22/Nov/90
演奏評/資料評価 ☆☆☆/★★★
備考 人によっては「ちょっと重たい曲目」と感じる向きもあるかも知れない曲たち。それを一気に「聴かせてしまう」録音です。
清冽さと重厚さを兼ね備えた名演。驚嘆すべきは、旋律を実に鮮やかに浮き立たせながら、
作曲者特有の濃密な対位法を全面に押し出す
ことにより曲の構造をはっきりと捉えることができるようにした点。時によっては相反するこの2つの要素を包含し、ちょっと「取っつきにくい」(と言う方もいらっしゃいます)曲を楽しく聴かせることに成功しています。買って損なし、聴いて損なし。



O.Respighi

CDタイトル Respighi ,Musica per Pianoforte a Quattro Mani
演奏者 Tiziana Moneta , Gabriele Rota
収録曲  
O.Respighi Le Fontane di Roma
  I Pini di Roma
  Antiche Arie e Danze per liuto (Suite I & III)
CD番号 DISCANTICA 16
録音データ Studio Tibor Varga, Sion, Svizzera:Nov/96
演奏評/資料評価 ☆☆/★★★★



Florent Schmitt

演奏者 Huseyin Sermet & Kun Woo Paik
収録曲  
F.Schmitt Trois Rapsodies Op.53 pour 2 pianos
  *Sonata Libre en deux parties enchainees op.68 および Hasards op.96 を併録
CD番号 Valois V 4679
録音データ September/1992
演奏評/資料評価 ☆☆☆/★★★★
備考 切れ味の良さと叙情とを兼ね合わせた名演。聴いて損なし。この作曲者で他の作品も、
このくらい素敵な演奏で録音が出ると嬉しいのですが。とにかく、この作曲者、録音が少なすぎます。
なお、第2を弾いている韓国系ピヤニストPaikは、あちこちで素晴らしい録音を残しています。
S.S.Prokofieffの難曲、Piano Concerto No.2は、特に絶品。
管弦楽がちょっと弱いのが「やや難」ですが(Naxos 8.550565)



F. Schubert

演奏者 Yaar Tal & Andreas Groethuysen
収録曲  
F.Schubert Sonata in C major D.812 "Grand Duo"
  Grande Marche funebre D.859
  Grande Marche heroique D.885
  8 Variations on an Original Theme in A-flat major D.813
  Sonata in B-flat major D.617
  3 Marches militaires D733
  2 Marches caracteristiques D.968B
CD番号 Sony S2K68240
録音データ 26-30/Jun/95
演奏評/資料評価 ☆☆☆/★★★
備考 快速なSchubert!
どの曲もかなり早めのテンポで弾きながら叙情性もたっぷり。しかも各声部を非常にクリアに弾いています。
特に注目すべきは「Sonata in C major D.812 "Grand Duo"」。切れ味抜群のタッチで、聴く者を演奏に引きつけます。
その他の曲も鮮度抜群、感度抜群!正確無比、そして強靱なタッチ。加えてほんのりとした暖かさと心の襞を反映させる陰影。
さまざまな要素がバランス良く配合されながら、強烈な印象を持つ演奏。

妙な例えですが、エイトマンと鉄腕アトムが組んだら、こんなふうに弾くのではないか、と想像させるような演奏です。
エイトマンも鉄腕アトムも人造人間(懐かしい表現ですね)ですが、精密なメカニクスに加えて、暖かい心と陰影を内に秘めています。

このYaar Tal & Andreas GroethuysenのCD、過去のSchubert連弾作品の録音が持つあらゆる価値を、すべて無意味にするような名演です。
日本でも作品の網羅性だけがとりえのSchubert連弾作品集の録音がありますね。特に網羅性が取り柄の録音など、
このCDが現れたことで、まったく無価値になりました。
このCDは、そうした過去の遺物や権威を打ち砕き、Schubert連弾作品に新しい光と力を与えた、画期的な録音です。
買って損なし、聴いて損なし。資料的価値も抜群です。



P.I Tchaikovsky

演奏者 Duo Crommelync (桑田妙子、Patrick Crommelync)
収録曲  
P.I Tchaikovsky Symphony No.6 "Pathetique" for a piano, 4 hands (original work)
  50 Russian Folk Songs
CD番号 Claves CD 50-8805
録音データ Studio Gilbert Steurbaut Gent: Jul/88
演奏評/資料評価 ☆☆/★★★

演奏者 Dag Achatz & Yukie Nagai
収録曲  
P.I Tchaikovsky Symphony No.5 for 4 hands arr.by S.Taneyev
  Excepts from "The Sleeping beauty" arr. by S.Rachmaninoff
  Excepts from "Swan Lake" arr. by C.Debussy
CD番号 BIS CD-627
録音データ 9-12/Aug/93
演奏評/資料評価 ☆☆/★★★
備考 安定した演奏で、安心して聴くことが出来るCDです。特にSymphony No.5は絶品
管弦楽以外での演奏はちょっと想像しにくい曲ですが、見事な連弾曲となっております。
Taneyevの編曲、そしてこの2人の演奏が素晴らしい。
購入してから何度も聴いていますが、繰り返し聴いても飽きのこない、それは素敵な演奏です。
未聴の方、是非のお勧めです
ただし、その他2曲は、インパクトの弱い演奏。白星2つは、それが理由です。
高水準の演奏ですが、面白みに欠けます。
曲の持つ魅力を、完全には伝えきっていません。この意味で「その他2曲」は、あまりお勧めできません。
なお、CDの表記ではすべて「for 2 pianos」となっておりますが、
Symphony No.5とThe Sleeping beautyは「for 4 hands」、つまり連弾演奏が可能です。
原典は連弾用なのですね。Swan Lakeに関しては、原典を見ていないので正確なことは分かりませんが、
音の配分を聴くと、連弾でも演奏できる可能性があります。



A.Yashiro

CDタイトル 矢代秋雄室内楽全集 I
演奏者 安川加寿子、金沢桂子
収録曲  
矢代 秋雄 古典組曲 ピヤノ連弾のための
  ピヤノ・ソナタ、2本のFlとPfのためのソナタを同時収録
CD番号 30CM-50
録音データ Bunka-kaikan Small Hall,Tokyo: 17/Apr/82
演奏評/資料評価 ×:指は回っていない、アンサンブルはバラバラ。 演奏として、これは酷い。
いくらライヴといっても、演奏自体が問題。 「大御所」の演奏だから、といって、
誰も文句は言わないのでしょうか? これでは作曲者の魂も浮かばれまい
演奏の参考としては「反面教師」/本来なら★★★★だが、以上の理由のため評価不能


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Copyright Yumiko & Kazumi 1997-1998