ビゼーの作品 
Georges Bizet
(1838〜1875)

☆ カルメン 第1組曲 ☆
Carmen Suites 1
作曲年代:1872
原曲:歌劇(管弦楽と声楽)
演奏形態:れんだん
編曲者:豊岡 智子 ・ 豊岡 正幸
参照楽譜:音楽の友社(連弾)
参照CD:Live Notes WWCC-7255
DuO T&M(豊岡 智子・正幸)

わたしたちの大切な友人である、「Duo T & M」(豊岡正幸・智子夫妻)の編曲です。非常にピヤニスティックであるだけでなく、演奏効果も絶大です。管弦楽の曲をれんだんに編曲し、「2人だけのオーケストラ」として活躍されるお二人が、自分たちの演奏会のために用意した編曲です。単なる編曲の域を出て、ピヤノ・デュオのための曲として、立派に仕上がっています。

出来・不出来さえ気にしなければ、一般家庭やお友達同士でも、十分に楽しむことができます。わたしたちも、時折ちょこちょこ弾いて、それは楽しんでいます。それに、素敵なコンサート・ピースとして弾く側も、聴く側も、楽しめます。あたかも、最初から「れんだん」として書かれたかのように。

しかし、きちんとした演奏会に持ち出そうとしたら、結構大変かも知れません。2人の奏者の、かなり綿密な打ち合わせが必要です。「歯切れ」が良くないと、曲は死んでしまいます。響きをきれいに出そうとしたら、けっこうペダリングが厄介です。たとえば、セコンダが自分に都合いいようにペダルの踏み換えをすると、プリモの旋律がブチブチと切れます。手の交差はほとんどありませんが、微妙なタイミングでセコンダの右手とプリモの左手を譲り合い、かつ主張しなければならないところが何カ所もあります。きちんとした演奏会で、即興に近い形で演奏するのは、お勧めではありません。それほど仲良しでないデュオの方は、やめた方が無難でしょう。

なお、楽譜が非常に見やすいのは、特筆すべきことです。

☆ アルルの女 第1・第2組曲 ☆
L'arlesienne Suites 1 et 2
作曲年代:1872
原曲:劇音楽(管弦楽と声楽)
演奏形態:れんだん
編曲者:R. de Vibac(らしい)
参照楽譜:Kalmus(連弾)
参照CD:残念ながら連弾のCDは出ていません。

 

原曲を、実に的確にれんだんに編曲しています。ちゃんと「ピヤノ的」に書かれているので、妙な心配はいりません。弾いていて文句なしに楽しめる曲集です。ピヤノで弾きにくい箇所もほとんどありませんし。特に、一番おしまいの「ファランドール」は、素人が弾いていても楽しいですよ。演奏効果も上がります。

2人がきちんと弾けるならば、曲ごとにパートを入れ替えて交互に弾いても良いし、わたしたちみたいに片方がへたくそだったら、下手な方がセコンダを弾くと良いです。

 
☆ 子供の遊び ☆
Jeux d'enfants
作曲年代:1871
原曲:れんだんオリジナル
参照楽譜:International
参照CD
ARN 268170
Floraison du Piano a Quatre Mains en France」 Christian Ivaldi & Noel Lee
Claves CD 50-9214
Duo Crommelync (桑田妙子、Patrick Crommelync)

言わずと知れた、れんだんの「定番」ですね。個人的には、ビゼーの作品の中で、最大の傑作だと捉えております。

特に第1曲の「ぶらんこ」は、ビゼーが書いた中では、最も美的な作品ではないでしょうか。ただしその「ぶらんこ」、ペダリングによほど気をつけないと、音が濁って無様(ぶざま)になります。意外と音が厚いのです。音が濁るばかりでなく、旋律も分散和音の中に埋没してしまいます。そうなると、何のために弾いているのか、分からなくなってしまいます。セコンダの右手、つまり内声部に旋律がくるので、セコンダの左手とプリモは「遠慮」しなければならないし、遠慮してしまうと、まったくつまらない演奏になってしまうし。困ったものです。

第2曲目の「こま」と、第4曲目の「回転木馬」も、素敵な曲です。楽譜は単純ですが、2人できれいに合わせるのは、意外と厄介です。音の粒が揃わないと、ゴミみたいな演奏になります。二人で楽しむ分には良いのですが、ゴミみたいな演奏を聴かされる方にしてみれば、たまったものではありません。やはり、腕と融合力に自信のあるデュオむけの作品です。

ちなみに録音ものをのぞいて、この曲を満足して聴いたことはありません。みんな、ゴミでした。譜面に似ず、厄介な作品です。わたしたちが聴いている録音物は、デュオ・クロムランクとクリスチャン・イヴァルディ&ノエル・リーのCDです。クロムランクの演奏は叙情たっぷり、イヴァルディ&リーは極力ペダルを使わないさっぱりした快速演奏。どちらも素敵です。