実に渋い小品。演奏会のアンコールに良し、連弾の初級レッスンに良し、発表会に良しと、どなたにもお勧めの小品です。両奏者の手の交差、極端な接近はありません。古風な旋律を2人で楽しみながら弾くことができます。バイエル修了程度の技術で十分に楽しめます
演奏する上での課題は「いかに音を濁らせないか」です。ペダルの使用は、最小限に抑えたほうが綺麗な響きを出すことができるようです。特にトリオの後半、プリモが旋律を、セコンダが原曲ではチェロとコントラバスが下から突き上げるような対旋律を奏でる箇所、セコンダの動きに合わせてペダリングすると、プリモがぶつ切れになります。また主部では意識して旋律を浮き立たせると、とても綺麗に響きますよ。逆に、ちょっとても音が濁ると、非常に汚く聞こえるので要注意。ペダルおよび運指の指定はまったく記載されておりません。自分で工夫する必要があります。
原曲は有名な管弦楽曲。編曲手法には、はっきりいって何の工夫もありません。ただ、管弦楽を4手に移し替えただけ。この程度の処理なら、中学生でもできます。しかしながら、それでも「ちゃんとしたピヤノ曲」になっている点が、何とも不思議です。原曲がもともとピヤノ向きだったのかも知れませんね。また原曲と比較すると、かなり「硬い」イメージの曲に仕上がっています。より古風に響きます。
なお、この曲には2台4手版もあります。同じ編曲者/同じ出版社です。これがまた邪悪な代物で、この連弾版の音を多少厚くして、2台に振り分けただけ。編曲上での工夫は何もないことは言うまでもありません。あまりにも馬鹿らしかったので、立ち読みしただけで購入は差し控えました。2台版の用途としては、2台ピヤノを使った演奏会のアンコール、それも最後で「さあ、これでお終いです」とお客を送り出すことくらいでしょう。