わたしたちデュオの片割れ(下手な方)が大好きな作曲家です。作品の色彩感と、ラヴェルを「拡張」したような和声の扱い、緊張感、そして流れるような旋律が、どの曲でも魅力です。「サロメの悲劇作品50」(La Tragedie de Salome, Op.50)が最も有名(なよう)ですが、他にも魅力的な作品がいっぱい。こちらに挙げた連弾曲はもとより、交響的協奏曲やピヤノ5重奏曲なども素敵です。でも、いつも、楽譜とCDの入手に時間がかかるのですよね。
結構たくさんの連弾曲とピヤノ2重奏曲を残しています。レパートリーとしては「穴」ですね。楽譜の入手も時間はかかりますが、結構確実に取り寄せることができます。自作の管弦楽曲などを連弾曲に編曲している点も魅力です。
ちょっと地味ですが、演奏効果は上がります。10曲ある小品を全部引き通しても、弾く側も聴く側も、飽きないでしょう。もちろん、中から1曲だけ、あるいは数曲を取り出して演奏しても、まったく差し支えありません。
1つの曲の中で、かなり頻繁に転調があります。それが実に爽やかに響くのです。しかもダイナミック・レンジが非常に広い。
ただし、初心者向けの曲はありません。おまけに、連弾によほど慣れていないと、あちこちでボロが出そうです。交差はあまりありませんが、両奏者の手が頻繁に接近します。フローラン・シュミットの曲は、どれもそうですが、この曲も両奏者がべったり寄り添わないと、弾きづらいですよ。合奏のテクニックがかなり要求されます。わたしたちは、片方に技術的な無理があるので、しばらくは「お預け」状態です。
楽譜をご覧になればすぐにわかりますが、8曲の全部が3拍子系。ワルツかレントラーです。それでも各曲で表情が異なるので、通しで弾いても/聴いても楽しめます。上記「旅のページ」と同様に、何曲か取り出しても、楽しいプログラムが組めるでしょう。どの曲もドイツまたはオーストリアの都市名が表題としてついていますが、「リューベック」「ヴェルダー」「ドレスデン」の3曲は、素人にも楽しんで弾ける曲です。それでも、やはり、2人の手がしょっちゅう接触するのですよね。これ。他の曲を弾くために必要な技術レベルは、ソナタアルバム終了程度でしょうか。加えて、かなりの合奏技術が要求されます。「連弾」と言う面で見ると、中/上級者向けですね。それから、表題は「ドイツの思い出」ですが、ちっともドイツぽくない。他国の人が、無理してワルツを書いたような雰囲気です。各曲の構成は、以下の通りです。
1 | ハイデルベルク | Heidelberg | ロ短調 | Anime |
2 | コブレンツ | Coblentz | 変イ長調 | Un peu lent |
3 | リューベック | Lubeck | イ短調 | Moderement |
4 | ヴェルダー | Werder | ホ長調 | Un peu attarde |
5 | ウイーン | Vienne | ト短調 | Avec violence et agitation |
6 | ドレスデン | Dresde | 変ロ長調 | Simplement et sans lenteur |
7 | ニュルンベルク | Nuremberg | 変ニ短調 | Pas vite |
8 | ミュンヘン | Munich | ト長調 | Tres vif |
楽譜の出来は、いまひとつ。印刷があまりよくないし、めくりずらい。何度かめくっていたら、半分からぱっくり2つに裂けました。わたしたちの手にしている楽譜は、同じ作曲者の「眠りの精の1週間(ヤルマールの夢)」と合本です。
この作曲者の作品中、最も有名な曲でしょう。原曲の管弦楽と女声合唱による演奏は、生ならもちろんCDなどでも、一度聴いたら忘れられない、印象深い曲です。流れるような旋律と、目眩く展開されるオーケストレーション。作品の完成度は非常に高く、密度も高い曲。個人的にも、本当に好きな曲です。
その管弦楽曲を連弾化したのが、この編曲。編曲としては、単に管弦楽を連弾に直したレベルをはるかに超えて、立派な連弾作品に仕上がっています。
全曲を通じて弾くには個々の奏者に、かなり高度なテクニックが必要です。単に指が動くだけでなく、相当高度な表現力も要求されます。合奏のテクニックも、併せて必要です。
試しにわたしたちは、もっとも平易な「プレリュード」から手がけてみたのですが、まず「下手くそな方」がノックアウト。弾けないことはないのですが、合奏がきわめて難しい。旋律が2人/4本の手の間で、頻繁に受け渡されます。接近はもとより、交差も頻繁。
それ以前に管弦楽を耳にした色彩感が、わたくしたちの頭の中に残っております。それをピヤノで再現するのは無理なので、逆に徹底的にピヤニスティックな表情付けが必要だと分かりました。
…と言うわけで、わたくしたちは折角楽譜を入手したのに、練習を中断してしまいました。でも、楽譜は無駄になっていません。管弦楽版を聴きながら参照して、ああでもない、こうでもない、と楽しむことができますから。それに、誰に聴かせるわけでもなく、個人的に遊ぶ分には、ずっこけながらも、とても楽しんで弾いています。そうした面では、十分に楽しめますよ。
もちろん、わたくしたちも両方が「きちんと弾ける方」並のテクニックがあれば、あきらめずにきちんと挑戦するのですが。わたくしたちにとってこの曲は、今後の課題となりました。
腕に自信のある連弾コンビの方、挑戦してみては如何でしょう?
1 | ハツカネズミの婚礼 | La noce des sourie | イ長調 | Anime |
2 | 疲労したコウノトリ | Le cigogne lasse | ニ長調 | Lento |
3 | 眠りの精の馬 | Le cheval de Ferme-o'eil | イ短調 | Assez anime |
4 | 人形「ベルテ」の結婚式 | Le mariage de la poupee Berthe | ト長調 | Paisible |
5 | 不揃いな文字のロンド | La ronde des lettres boiteuses | ニ長調 | Anime, sans exageration |
6 | 絵画の中の散歩道 | La promenade a travers le tableau | (フリギア旋法) | Tres lent |
7 | 中国の傘 | Laparapluie chinois | 嬰ヘ長調 | Assez anime |