とても楽しい(?)、典型的なミニマル・ミュージック。2台のピヤノまたは2台のマリンバの為の作品です。ただし、曲の雰囲気だけでも味わおうという場合は、後述するように1台4手の連弾による演奏も可能です。
楽譜の指定通りに演奏するには、両奏者ともに抜群のリズム/テンポ感が必要。「指を早く動かす」という面での難しさはさほどではありませんが、テンポの維持/変化と合奏に関しては、難易度が非常に高い。はっきり言って、この曲、パソコンかUNIX機に自動演奏させれば簡単に再現できます。現実に楽器で合奏するよりプログラミングした方が、はるかに楽です。しかしながら、それを「生身の人間」で演奏する点が、この曲の面白さでもあります。
さて、演奏。曲は作曲者の指定した32個の「フレーズ」で構成します。第1奏者は、最初のテンポを最後まで維持します。第2奏者は「フレーズ」の最初は第1奏者と同じテンポで。そして徐々にテンポを上げていき、次の「フレーズ」で再び元のテンポに戻します。すなわち、2人の奏者は、「フレーズ」を徐々に「ずらし」ながら、あるときぴったり合って、また徐々に「ずれて」いって、また、ぴったり合って・・・。という演奏を繰り返します。第1から第15フレーズまで、第1奏者はまったく同じ「フレーズ」の繰り返し。16「フレーズ」目以降は、徐々に最初の「フレーズ」を短縮していきます。この「ずれ」の効果が、微妙な陰影を作るのです。これが完璧に演奏できたら、さぞ美しいことでしょう!
なお楽譜には、演奏方法およびリハーサルの方法が、かなり細かく記載してあります。奏者の演奏位置(図参照)のほか、「マリンバの場合は、各奏者とも1オクターヴ下げて演奏する」「マリンバの場合、200人以上入るホールで演奏するときは、マイクロフォンによる拡声が望ましい」など。きちんとしたコンサート向けの演奏や練習はもちろんのこと、ちょっとしたお遊びで演奏する場合でも、これらの楽譜記述を熟読することをお勧めします。
この曲。お遊びでやるなら、連弾でも演奏可能です。第2奏者を1オクターヴ上げる、または第1奏者が1オクターヴ下げて弾けば良いのです。作曲者の意図をある意味で「無視」することになるため、正式な演奏会向けにはお勧めできませんが、楽しんだり本番前の練習をする上では、こうした方法を取ることも可能です。
また、ピヤノやマリンバ以外の演奏も考えられます。例えば「箏」や「十七絃」。これは実に面白い演奏になるでしょう。マリンバを箏や十七絃に、そのまま置き換えれば良いわけですから。チェンバロでやっても、楽しいかも知れませんね。