其の六:楽譜電網捕獲作戦--壱--
インターネットとファクシミリを使えば、自宅にいながら海外の楽譜が手軽に安価で入手できるようになりました。ここでは、わたくしたちが実際にC.F.PetersとBoosey
& Hawkesに楽譜を発注・入手した実績をご紹介いたしましょう。ただし、商品発注から受領まで、すべて自己責任で実行することが必要です。
楽譜屋さんを訪れ、棚を端から見ていくのは、楽しいものです。特段探している楽譜がなくとも、思いがけない曲を発見したり、記憶の底に埋もれていた曲と出会ったり。でも、必要とする楽譜に、必ずしも巡り会えるとは限りません。また、巡り会えたとしても、現地価格の倍以上という価格付けがなされているケースもざらです。
また、近所に大きな楽譜店がある、という方ばかりではないでしょう。「楽譜店に行けるだけでも幸せ」という環境の方もいらっしゃるでしょう。地方都市に在住の方や、体の具合が良くなくて外出もままならない方など---。
そこで活躍するのがインターネットとファクシミリです。Webによるショッピングの場合、何と言っても、その出版社が出している全商品を一覧できるという点が非常に大きなメリットと言えましょう。そう、あなたは、その出版社の倉庫にいるのと同じ状態に置かれるのです。え? 何故、ファクシミリですって? それでは順を追ってご説明致しましょう。
楽譜の購入をインターネットだけで済ませることができるケースもあります。例えば「音楽之友社」のwebサイト。そして、「貧者の見方・米Dover
Publications」の楽譜などは、「amazon.com」で、安全かつ簡単に購入できます。わたくしたちは「音楽之友社」のサイトでお買い物をしたことがないので、購入結果に関してはご報告できません。でも国内の企業なので、万が一の場合、電話などで簡単に連絡でき、仮にトラブルが発生した際の処理も非常に楽です。
「amazon.com」は、楽譜やらCDやら参考文献やら、それはたくさん購入しました。amazon.comの場合、セキュア・サーバーによる暗号化処理がなされているため、クレジットカード番号やご自宅の電話番号をWebページの発注欄に入力・送信しても、まず安心です。ここですと、楽譜やCD・書籍の選択から配送手配まで、完全にオンライン上だけでできます。発注してしまえば、後は品物が到着するのを待つだけです。わたくしどもは、かなりの回数「amazon.com」で品物を発注しましたが、一度もトラブルはありませんでした(注:初めて注文される方は、サイトの注意書きを良くお読みになって下さいね。amazon.com専用のパスワード管理も重要になりますから)。
さて、他の海外出版社の場合はどうでしょう? わたくしたちが今回試したのは、「C.F.Peters」と「Boosey & Hawkes」のオンライン・ショッピングです。結果から言えば、非常に親切に対応して下さった上、国際宅配便による迅速な配送、発注品目に対する正確な納品--欠品もありましたが、きちんと理由が伝票に明記してありました--のサービスが受けられました。ちなみに、Petersのページからオンライン発注すると、商品の取りまとめおよび決済、配送はBoosey
& Hawkesが担当してくれます。その仕組みを、うまく利用してみました。
まず、Petersのケースです。同社のサイト「http://www.edition-peters.com/」にアクセスして、「SALES CATALOG」をクリックします。すると「検索ページ」が出てくるのですが、ここで「Advanced
Search」を選択します。これを選択すると、最初からジャンルの絞り込みができるなど、非常に検索が楽です。
検索結果が表示されたら、チェックボックスにチェックをすれば、「ショッピング・カート」の中に、自分の選んだ商品が入ります。このあたりの処理は、「丸善」や「amazon.com」などと、まったく同じです。この作業を何回か繰り返し、購入したい商品が揃ったら、チェックアウト。すると、これまで選んだ商品の一覧と、合計価格が表示されます。もし購入を取りやめたい商品があれば、ここから消去することができます。
後は、画面の指示通りに必要事項を記入して、「送信ボタン」を押すだけ。その前に、画面をプリントアウトしておくと良いでしょう(図1)。ここでは暗号化通信はされていませんが、クレジットカード番号の入力がないため、安全です。これで「仮発注」が終わりました。このデータはPetersのLondonオフィスのサーバーに送信されます。
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図1:Petersの発注画面 |
さて、ここまでの処理が終わったら、PetersのLondonオフィスにメールを出します。「わたしは、以下に挙げる商品を貴社のWebから発注したが、情報はそちらに届いているでしょうか? また、クレジットカード番号は、どなたにお知らせすればよいでしょうか?」という内容です(注:メールは、すべて英文で書いて下さい。2バイト・コードがひとつでもあると、文字化けして相手に読めません:以下、同じ)。そのメッセージの後に、自分の発注した楽譜の一覧を付けます。メールアドレスは、Petersのサイトに出ています。するとPetersからメールが帰って来るはずです。「Boosey shop(あるいは別の場所かも知れませんが)に、あなたの住所、電話番号、クレジットカード番号を知らせて下さい」と。
ここで注意すべきは、メールによるクレジットカード番号の送信は絶対に止めた方がいいこと。どこでハッキングされるか分かりません。そこで指定された相手にメールを書きます。「Petersからは、このように言ってきているが、わたしはファクシミリで住所・電話番号・クレジットカード番号をお知らせしたい。ついては、そちらのファクシミリ番号を教えて欲しい」。すると相手からファクシミリ番号を教えてくるので、「オーダー・シート」を作って、ファクシミリで送れば、それでお終いです。ちなみに、わたしの作った「オーダー・シート」のフォーマットは、以下の通りです。
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注:この後に、自分の注文した商品を正確に記載します |
さて、Boosey & Hawkesも「オンラインショップ」を開いています。「http://www.boosey.com/」へアクセスし、「Music Shop」をクリック。さらに続けて出てくるページの「Boosey
& Hawkes Complete Catalogue」をクリックすればOK。あとの処理はPetersと、ほぼ同じです(図2)。「Next」ボタンを押すと、「見積もり」が出ます。
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図2:Boosey & Hawkesの発注画面 |
ただし、「見積もり」が出たら、それをプリントアウトするだけにして下さい。「送信」ボタンを押すと、変なことになってしまいます。そのプリントアウトを、先方にファクシミリで送信して下さい。それで発注は完了です。念のため先方にメールを書いて、ファクシミリが届いたかどうか、確認するのが最良です。
わたくしたちの場合、定額制のプロバイダに加入していること、メールの送受信は「テレホーダイ」の時間にしたことで、この作業でかかった費用はファクシミリ送信代の約80円だけでした。
こうして購入した結果、Petersの分は、送料を含めても日本国内で購入する場合の約半額で楽譜が入手できました。Boosey
& Hawkesは、珍しい(というか絶版になっていた)楽譜をコピー/製本して下さるなど、サービスは満点でありました。なお発注から到着まで19日でした。
ちなみに送料は何冊でも20英ポンド(約3500円)なので、できるだけまとめて購入するのが得策です。何人かで一緒に共同購入するのも、一計です。参考までに、わたしたちが購入した楽譜と代金は以下の通りです。
作曲者 |
作品名 |
英ポンド価格 |
日本円換算
(クレジットカード明細による実際の価格) |
備考 |
Reger |
Burlesques op.58 |
8.75 |
1519円 |
連弾譜1冊 |
Reger |
Variations op.132 |
9.50 |
1649円 |
2台ピヤノ譜スコア1冊 |
Ives |
Quarter-Tone piano peace |
15.50 |
2612円 |
2台ピヤノ譜スコア2冊1組 |
Schoenberg |
5 Orch. Peaces |
10.95 |
1900円 |
2台ピヤノ譜スコア2冊1組 |
Rachmaninoff |
Caprice Bohemien Op12 |
10.95 |
1900円 |
連弾譜1冊 |
Rachmaninoff |
Isle Of The Dead Op29 |
9.95 |
1727円 |
連弾譜1冊 |
Rachmaninoff |
Symphony 2 In Em Op27 |
19.95 |
3463円 |
連弾譜1冊 |
なお、質問や疑問はメールで伝えることが肝心です。「わたしのオーダーは、きちんとエントリされているのか?」、「いつ、そちらから発送してくれるのか?」などです。疑問はメールで完全に解消いたしましょう。これら発注から商品の受領までのことは、すべて自己責任で行って下さい。そして、もしトラブルが発生したら、ご自分で解決して下さい。
なお、わたくしたちは、レンタル専用譜かつ絶版楽譜の発注にも成功しました。これに関しては、完全に「モノ」が到着してから、顛末を報告したく存じます。
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