グリーグの作品

Edvard Hagerup Grieg
(1843〜1907)

 

Edvard Griegは、意外と多くのピヤノ2重奏のためのオリジナル曲を残しております。4手連弾が5曲、2台用曲が1曲。オリジナルはこの6曲ですが、編曲物もかなりの数---しかもその殆どが作曲者自身の手による編曲です---が現存しております。ちょっと調べただけでも、4手連弾が9曲、2台ピヤノ用が2曲です。探せば、まだまだ出てくるかも知れません。今のところオリジナル/編曲物合わせて17曲がリストアップできました。「まだまだ、こんなのもあるぞ」とご存じの方、是非とも情報の追加にご協力下さい。以下に、わたしたちがリストアップした17曲の概要を紹介致します。

作品名 作品名欧文表記 演奏形態 原曲 編曲者 出版社 出版の現況
秋の幻想曲 In Autumn fantasy (IM HERBST Op.11) 1 pf. 4 hds. original ----- Peters 絶版
2つの交響的小品 Deux pieces symphonirues Op.14 1 pf. 4 hds original ----- Peters 現役
ピヤノ協奏曲 Piano Concert Op.16 1.pf 4 hds. pf, Orch unknown Peters 絶版
ピヤノ協奏曲 Piano Concert Op.16 2 pfs 4hds pf, Orch P.A.Grainger Schirmer 現役
十字軍の戦士シーグル Sigurd Jorsalfar Op.22 1 pf. 4 hds Orch,Vo,Cho ----- unknown 絶版?
2つの悲しい旋律 Zwei elegische Melogier Op.34 1 pf. 4 hds orch composer Peters 絶版
ノルウェイ舞曲 Norwegische Tanz Op.35 1 pf. 4 hds original ----- Peters 現役
ワルツ・カプリス Waltzer-Capricen Op.37 1 pf. 4 hds original ----- Peters 現役
組曲「ホルベアの時代より」 Fra Holbergs tid Op.40 1 pf. 4 hds pf. solo unknown Peters 現役
ペール・ギュント第1組曲 Peer Gynt Suite No.1 Op.46 1 pf. 4 hds Orch,Vo,Cho composer Peters、音友 現役
古いノルウエーのロマンスと変奏曲 Altnorwegische Romanze mit Variationen Op.51 2 pfs 4hds original ----- Peters 絶版
ペール・ギュント第2組曲 Peer Gynt Suite No.2 Op.55 1 pf. 4 hds Orch,Vo,Cho composer Peters、音友 現役
組曲「十字軍の戦士シーグル」 Drei orchesterstucke aus Sigurd Jorsalfar Op.56 1 pf. 4 hds Orchestra composer Peters 絶版?
通りゆく婚礼の行列 Brudefolget drager forbi Op.19-2 1 pf. 4 hds pf. solo composer Peters 絶版
2つのノルウエーの旋律 Zwei nordische Wisen Op.63 1 pf. 4 hds Orchestra composer Peters 絶版
交響的舞曲 Symphonische Tanze Op.64 1 pf. 4 hds Orchestra composer Peters 現役?
トロルドハウゲンの婚礼の日 Wedding Day at Troldhaugen Op.65-6 1 pf. 4 hds pf. solo A.Ruthardt Peters 現役

 以上は、2000年11月29日現在のデータです。なおPetersには、「Complete Works, in 20 volumes, Volume 5」(Catalog Number: EP8505)、「同 6」(Catalog Number: EP8506)という2つの連弾作品集、「Complete Works, in 20 volumes, Volume 7」(Catalog Number: EP8507)という2台用ピヤノ曲集が現役で出ています。誠に申し訳ありませんが、調べた限りでは内容構成が不明です。ひょっとしたら上記で「絶版」としたものも入っている可能性があります。後日調査する予定ですが、お急ぎの方は「Edition Peters」に直接お問い合わせ下さい。ちなみにPetersの場合、紙のカタログに載っていないのに「現役」として販売しているケースがあります。「出版状況」で「?」を付けたのは、本日時点までどうしても現役か絶版かを確認できなかった楽譜です。また、Petersの絶版譜は、同社に依頼をすると原本が手元にあればコピー譜を作成してくれます。ご興味のある方はe-mailで確認してみては如何でしょう? さらに蛇足ですが「ピヤノ協奏曲」は、複数の出版社から2台用楽譜が出ています。本来ならこうしたリストから除外すべきなのでしょうが、Grainger 版が、かなり優れた楽譜でしたので、あえて掲載した次第です。


 
☆ ペール・ギュント第1組曲 作品46/第2組曲 作品55 ☆
Peer Gynt Suite No.1 Op.46 / Peer Gynt Suite No.2 Op.55
作曲年代:1888/1891
原曲:管弦楽と声楽
演奏形態:連弾
参照楽譜:音楽之友社

 

 恐らくGriegの作品中、最も有名な曲と言えましょう。原曲はHenrik Johan Ibsen(1828〜1906)の戯曲「Peer Gynt」に付けた劇音楽(独唱、混声合唱、管弦楽、若干の独奏楽器)から、第1/第2各組曲とも4曲、計8曲を抜き出して組曲としていることは有名ですね。これを作曲者自身が連弾化したのが、この編曲です。蛇足ですがGriegは、この8曲以外にも「Peer Gynt」中の音楽を連弾化し出版した形跡があります。あちこち調べ回ったのですが、どの曲を連弾化しているのか、その全貌は本稿執筆時点で判明できませんでした。

 さて、この編曲。管弦楽曲からの連弾編曲としては、ごくごく定石どおり。派手なトランスクリプションなどは施してありません。しかしながら、さすがはGriegで、かなり演奏効果の上がる素敵な「連弾用組曲」となっています。ピヤニスティックな魅力は十分で、書法上もピヤノで弾く上で、まったく無理はありません。しかも、両奏者の手の接近を極力少なくするなど、相当に気を配っています。

 しかしながら連弾演奏会のプログラムを拝見すると、この曲を取り上げている演奏会は(少なくとも国内では)非常に少ないのが現状です。作品そのものの充実性と編曲の素晴らしさに着目すれば、もっともっと弾かれて然るべき作品ではないか、と言うのが私たちの感想です。もしかすると原曲があまりにポピュラーなので、あえて演奏会で取り上げる方が少ないのかも知れません。

 楽曲構成は以下の通り。管弦楽版とまったく同じです。演奏に要する技術レヴェルは、ツエルニー30番程度〜ソナタ・アルバム程度。ただし、第1組曲の「オーゼの死」(Ases Tod)、第2組曲最後の「ソルヴェーグの歌」(Solvejgs Lied)などは、技術的には易しいものの表情付けを相当うまくやらないと、間延びした、だらしない演奏になってしまうので要注意です。なお、音楽之友社版は第1/第2組曲合本、Peters版は別売です。

第1組曲 第2組曲
朝の気分 Morgenstimmung 花嫁の略奪(イングリードの嘆き) Der Brautraub (Ingrids Klage)
オーゼの死 Ases Tod アラビヤの踊り Arabischer Tanz
アニトラの踊り Anitras Tanz ペール・ギュントの帰郷
(海岸での嵐の夕べ)
Perr Gynts Heimkehr
(Sturmischer Abend an der Kuste)
山の魔王の宮殿にて In der Halle des Bergkonigs ソルヴェーグの歌 Solvejgs Lied