ワーグナーの作品 
Richard Wagner
(1813〜1883)



☆ ローエングリン 第1幕への前奏曲 ☆
Prelude for 1st. Act "Lohengrin"
作曲年代:1848
演奏形態:れんだん
原曲:管弦楽曲、独唱、合唱
編曲者:楽譜に記述なし(Hans von Bulow ??)
参照楽譜:Drand
参考CD:連弾はありません

 原曲を、そっくりそのまま連弾化してあります。実にピヤニスティックで弾きやすく編曲してあるのですが、何と言っても原曲が・・・。Lentで、かつ弦楽器の長く「引き伸ばす音」を曲の主体としているので、相当に工夫しないと、間の抜けた演奏になってしまいます。

 どこぞの編曲にあるように、弦で音を保ちながらクレッシェンドする、といった「理不尽さ」はありません。しかし、管弦楽で聴き慣れたテンポ---例えばわたくしが愛聴し、やや快速で演奏しているHerbert von Karajanの全曲盤だと9分10秒---で弾くと、間延びもいいところ。弾く側も、聴く側も苦痛ですよ、これは。対策としては、速めに弾くしかありません。8分前後で弾ききるくらいが、妥当ではないでしょうか。

 加えて36小節目から、セコンダの音が妙に厚くなります。このあたりから終盤にかけて、プリモは思いっきり抜けるような音づくりをしないと、大事な旋律が完全にかき消されてしまいます。かと言って、セコンダが遠慮してしまうと、ダレた演奏になってしまいます。

 また、セコンダは5小節目から19小節目まで、ただ座っているだけ。はっきりいって、ヒマです。こうした問題点(?)さえうまくクリアすれば、ステージに乗せても演奏効果の上がる曲です。指を動かす技術よりも「いかに間を持たせるか」という「難題」が演奏者に襲いかかってくる曲なのです。




☆ ローエングリン 第3幕への前奏曲と結婚行進曲 ☆
Prelude for 3rd. Act & Wedding March from "Lohengrin"
作曲年代:1848
演奏形態:れんだん
原曲:管弦楽曲、合唱
編曲者:楽譜に記述なし(Hans von Bulow ??)
参照楽譜:Drand
参考CD:連弾はありません

 それは楽しい、お祭り騒ぎの連弾曲です。連弾中級者用の、それは楽しい教材となります。もちろん演奏会に持ち出してもOK。

 原曲をかなり上手にピヤノ曲化してあるため、弾きにくいところはほとんどありません。ただし、相当忠実に原曲から連弾曲に編曲したため、トランスクリプションの要素はほとんど感じられません。その意味では、連弾の上級者や「編曲ヲタク」の方々にとっては、あまり面白い代物ではないでしょう。

 わたくしたちのレヴェルでは、丁度良いくらいの難易度なのですが。それでも「真面目に編曲しましたっ!」という「編曲姿勢」が全面に出てしまっているので、さすがにもう少し工夫があっても良いのでは、との感を持たざるを得ません。あまりにも素直にやりすぎです。

 でも、「前奏曲」「結婚行進曲」とも、演奏効果は相当に上がります。いずれもリズムがはっきりしているので、合わせ易いですね。プリモ/セコンダともに旋律を担当していますので、どちらか一方が「下請け」となることはありません。特に音域の関係から原曲「トロンボーンの咆哮」は、すべてセコンダが担当。聞かせどころです。そのあたりに着目すると、連弾化は成功していると言えましょう。

 タイトルや曲調から見ると「結婚式のアトラクションでは使えるかしら?」というご質問も当然でるでしょう。まあ、使えないことはありませんが、わたしたちは、あまりお勧めしたくありませんね

 だって、この歌劇、終結はある意味で「悲劇」じゃありませんか。しかもその悲劇的結末に至る直前の、泡沫の祝祭場面における音楽です。この曲が鳴り響く幸福の頂点から、ヒロインは慟哭の淵に突き落とされるわけです−−もっともヒロインであるエルザの冤罪が晴れたわけなので、完璧救いようのない悲劇とは言い切れませんが−−。そんなシーンの音楽を、よりによって結婚式で使うなど、尋常じゃありません。

 話に聞くところによると、結婚式の中で、この曲を流す式場もあるとか。こうなると、流す側の神経を疑ってしまいますな。それとも「今の幸せなど、泡沫の夢だぞ。こころしなよ・・・」というブラック・ジョーク、あるいは警告のつもりなのでしょうかね。この連弾版にしてもそう。もっとも、結婚式に対する「嫌がらせ目的」でお使いになるのであれば、あえて止めはいたしません。