晴れ。
春秋社から、とても興味深いピアノ教本が出た。「シャンドール ピヤノ教本」である。著者はジョルジ・シャンドール氏。シャンドールと聞いて、「おっ!」と思った方は、相当にピヤノがお好きな方か、クラシック音楽のオールドファンの方である。そう、バルトークと親交があり、一世を風靡した、ハンガリー出身のあの名ピヤニストである。
この本は、1995年に出版された「On Piano Playing: Motion,Sound and Expression」の邦訳である。原著は未読だが、この邦訳、なかなか面白い。「ピアノ演奏技術の本質」から説き起こし、演奏に必要な基礎技術をほぼ完全に網羅し解説している。譜例や写真を多用し、読者の理解を助けようとしている点も評価できる。
邦訳に寄せて著者は述べている。
この本は、「音の本質」および「人の身体の仕組み」という二つの要素を絶えず考慮しながら、総合的なピアノ技術を示そうとするものです。ここでは、我々がピアノ・レパートリにおいて出逢う技術上の問題を解決するために必要な、五つの基本的動作が説明されます。これらの動作パターンを適切に用いれば、鍵盤を不用意に押し込んだりすることはなくなりますし、個々の筋肉を適切にコーディネートすれば、腕に疲れを感じたりすることもないでしょう。また、この本で詳しく説明しているように、前腕の筋肉と指とをまっすぐにして、ねじれないよう気をつければ、腱鞘炎になることもありません。
演奏技術ばかりではない。最後には公開演奏のやり方や、舞台マナーにまで言及しており、大変に面白い。是非とも多くの方に読んで頂きたい本である。特にこれからピヤノの技術を本格的に学ぼうとされる方には。それから、ピヤノ講師の方も、手に取っていただけたら、と思う。もちろん新しいことばかりではないけれど、きっと「目からうろこ」みたいな箇所があるに違いない。 |
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