A.チェレプニンの作品
Alexander Tcherepnin
(1899〜1977)



 
☆ ピヤノへの探訪 ☆
Exploring the Piano
作曲年代:1959
原曲:れんだんオリジナル
参照楽譜:Peters
参照CD:出版されていません
 

実に楽しい、12曲の連弾曲集です。楽譜の表紙に「12 Duets for Beginner and Teacher-Pianist」と記載されている通り、ほんとうにピヤノを始めたばかりの初心者が、先生と一緒になって楽しめる曲集です。しかも、個々の作品の完成度は極めて高く、演奏会に持ち出しても十分に鑑賞の価値があります。

プリモ、あるいはセコンダのどちらかは、とても易しく書いてあります。例えば第1曲ですと、プリモはG音を「とん、とん、とん、とん」と、左右1本の指でノックするだけ。第2曲だとD音を「とん、とん、とん」。それが、相方(先生)と合わせることで、実にエレガントで素敵な小品に仕上がるのです。ピヤノを始めたばかりの人も「ほら、ピヤノって、こんなに楽しいんだよ」と、そして「ね、あなたにもピヤノのアンサンブルに参加できるでしょう?」と、ピヤノそしてアンサンブルの世界に引き込むことができる、それは魅力的な作品です。

以前、あるピヤノ弾きのあつまりで、ピヤノにほとんど触れたことがない人が聴衆として参加していました。そのときわたしは、この楽譜を用意。芸大卒業の「かなり」弾ける方に相方をお願いして、それまで会場の隅で聴き役に回っていた人をピヤノの前に引っぱり出しました。そして「さあ、この音符の通りに、とん、とん、とん、て弾いてご覧なさい」。

結果は…拍手喝采! 楽譜を持ち込んだわたしも、本当に幸せな気持ちになったことは言うまでもありません。

もし、わたしが幼かったころ、こうした楽譜を使ったレッスンを受けていたら、どれほど幸せだったことでしょう。もっともっと、ピヤノを弾く、という行為が楽しめたのに違いありません。

ちなみに、この曲集の第2曲と第9曲は、宴会芸でも使えます。楽譜の指示が「もし、2台のピヤノが用意できなかったら、プリモはセコンダのひざの上に乗って弾きなさい」。これは、絶対に受けますよ。

なお、この作品は作曲者の父親であり、やはり著名な作曲家ニコライ・チェレプニンに捧げられています。