マルタンの作品 
Frank Martin
(1890〜1974)


☆ 3つの易しい小品☆
Drei Ieichte Klavierstucke
作曲年代:1955/1937
演奏形態:れんだん/2台4手
原曲:オリジナル
参照楽譜:Universal


非常にエレガントな小品。3曲中、何故か第1曲のみ連弾。他は2台ピヤノ用。作曲時期も第1曲が1955年、2台用は1937年。完全に独立した小品なので--そのようにしか見えません--1曲だけ、あるいは任意の2曲を取り出して演奏しても良いでしょう。作曲者、あるいは出版社が「易しいデュオ曲だから、この際まとめて1冊にしちゃいましょう」と、適当にとりまとめたのかも知れません。まあ、わたくしどもは、出版の現場に立ち会ったわけではありませんので、本当のところは分かりませんが。だとしたら、このUniversalという出版社、非常に良心的です。なお、各曲の末尾に「演奏時間」が記載されています。

第1曲の「Au clair de la lune」(月の光)は、フランス国に18世紀(あるいはそれ以前)から伝わる童謡、ずばり、Au clair de la luneによる変奏曲。日本でも「月夜の道」だったか「月の晩」だったかの表題で歌われている旋律です。「ドドドレミィレェ、ドミレレドォ(以下省略)」という、あの旋律です(歌詞は忘れてしまいました。替え歌なら覚えているのですが)。変奏曲といっても、プリモは旋律をユニゾンで3回弾くだけ。非常に易しく、ピヤノを始めたばかりの方でも十分に楽しんで弾くことができます。セコンダの「伴奏」が曲想と表情に変化を付けます。このセコンダも比較的易しい。初心者とちょっと弾けるようになった方、あるいは先生が、一緒に楽しむのに最適な連弾曲です。和声が徐々に変化し、とても素敵ですよ。

第2曲は「Petite Marche blanche et Trio noir」(白い小さな行進曲と黒いトリオ)。この曲も、ずばりタイトルそのもの。行進曲の部分は見事なまでに全部白鍵で、トリオは、これまた見事なまでに全部黒鍵で弾くようにできています。黒鍵と白鍵がまざるのは、トリオの末尾で主題の行進曲に移行するところのみ。トリオの部分は臨時記号の連続なので、一瞬「ぎょっ」としますが、弾いてみると何と言うこともありません。プリモ/セコンダともに、バイエル修了程度の方なら初見で行けます。ただし、この曲、速度の指定がありません。4分音符=80以上の速さで弾くことが望ましいようです。それより遅いと、ダレます。指定の演奏時間(2分)くらいで弾くのが適切ではないでしょうか。

さて、3曲目。「2台のピヤノのための小さな夜想曲」というサブタイトルのついた「Les Grenouilles, le Rossignol et la Pluie」(蛙、夜鳴鶯、雨)。これもタイトルずばりの曲。蛙と夜鳴鶯の声、そしてしとしと降る雨の音を、かなり直截的に表現しています。必要とされる演奏技術レベルは、第2曲と同程度です。第2曲と併せて、2台ピヤノ演奏のための、恰好の入門曲と言えましょう。