民族の狭間で

 この「インド・パキスタン・レストラン」。東京都某所に実在いたします。こちら自慢のお料理は、「アトミック・ボム・カレー」。口に含んだ瞬間、核攻撃を喰らったかのような衝撃を受ける点が特徴です。

 この名物カレーは、2種類を用意しております。方や「インド版」、方や「パキスタン版」。双方とも、食べると強烈な衝撃を受けるお料理ですが、スパイスの処方が異なります。それぞれ「地元」のスパイスを適用しているのですね。特にインド版は、ベンガル地方独特のスパイスを利用しております。

 もともとは、核攻撃ほどの衝撃度はなかった、といいます。ところがインド出身とパキスタン出身、それぞれの調理師さんが「開発競争」を繰り返す度に衝撃度が増し、現在の姿になりました。本国同士の核開発競争に負けない、それは凄まじい凌ぎ合いです。

 どちらもナンまたはご飯、それにサラダ、お茶がついて、消費税込み1050円です。さあ、みなさん。一度「アトミック・ボム・カレー」を試してみてはいかがでしょう。一生忘れられない、孫子の代まで語り継ぐような、それは強烈な衝撃ですよ。



・・・・というのは、真っ赤な嘘。本当はこのお店、豊富なメニューを揃えた、上品なレストランです。ランチタイムと、ちょっぴり贅沢なディナーがあります。食べに行った連中の話だと、店員さんは皆さん感じが良いし、お料理もおいしい、とのこと。

 じゃ、なぜお前は食べに行かないのかって? 理由は2つ。わたくし自身は「辛いもの」が苦手なこと。そして、もっと決定的な理由は、お昼代に500円以上使えないこと。いくらランチタイムといっても、このレストランでは、500円で食べられるものは置いていません。


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