トムソンの作品 
Virgil Thomson
(1896〜1989)




☆ ウオーキング・ソング ☆
Walking Song
作曲年代:1945/1952
演奏形態:2台ピヤノ
原曲:映画のための管弦楽曲
編曲者:Arthur Gold & Robert Fizdale
参照楽譜:Schirmer
参考CD:見つかりません

 とても楽しいピヤノ2重奏です。2台ピヤノのための作品というと、どんな曲でもアンサンブルにかなりのテクニックを要求されます。しかしこの曲はとても合わせ易いところが特徴と言えるでしょう。どちらのパートも、バイエル修了程度の技術があれば十分に弾けます。2台ピヤノ作品の、最適な入門曲でしょう。リズムが単純で、とても合わせ易いですよ。2台ピヤノのアンコール曲としても、なかなか利用価値のある曲です。

 旋律も至って単純。亜米利加合衆国西部系民謡調の、親しみやすく、ある意味で懐古調の旋律です。ト長調 > ハ長調 > ト長調 > 変ロ長調 > ト長調 と、その単純な旋律が調性と若干のバリエーションを付加して繰り返されます。ト長調の部分は第1ピヤノが、その他の部分は第2ピヤノがリードします。

 わたしたちは初見の「エイッ、ヤッ」で合わせてみましたが、それは楽しめました。それに楽譜の価格も650円。しかも第1、第2ピヤノ用、両方の楽譜が(すなわち2部)付いて。これは安い! 実にエコノミーな曲であります。コストパフォーマンスは、最高です。

 ただし、楽譜には、アクセントの指定がかなり細かく表記されています。またひとつのスラー中の特定の音にはスタカートが付いていたり。楽譜の指定を厳密に守ろうとすると、かなり神経を使います。楽しむ分には、そんなことは気になくて良いですよ。

 それから、指定に沿って軽快に弾かないと、即座にだらけます。きちんと弾けば午後の陽光の降る田舎の道を、あるいはなだらかな明るい草原を散歩するような、それは素敵な曲になります。ところが旋律の浮き出し方やリズムの刻みが重くなると、うらぶれて疲労感を滲ませたサラリーマンが、寒風に吹かれ、うなだれて家に帰るような曲になってしまいます。オフィスでも家でも、安住の場がない、よれよれのコートを着て人生に疲れたサラリーマンの後ろ姿を見るような演奏に。

 なお、原曲は映画のための管弦楽曲です。ところが、元の映画のタイトルが、よくわからない。楽譜には「from Tuesday in November」とあります。ところがピヤノ2重奏のバイブル、Maurice Hinson「Music for More than One Piano」には「Tuesday in September、松永晴紀・編著「ピアノ・デュオ 作品事典」には「11月の水曜日とあります。本当は、いったい、何月の何曜日なのでしょう???

 もっとも弾く側にはほとんど関係ないことです。作品を楽しめれば良いのですから。また、わたくしたちにとっても、月や曜日は、あんまり関係ありません。「月月火水木金金」のノリで1週間働いているので。わたしたちのような商売だと、盆暮れ正月もないのです。