フランセの作品
Jean Francaix
(1912〜1997)

 

ごく最近まで生存していらっしゃったお方です。しかし、残念ながらお目にかかったことはありません。どちらかというと、管弦楽曲や室内楽曲が有名ですが、素敵な連弾/2台ピヤノのための作品も残していらっしゃいます。

 

☆ オーギュスト・ルノワールによる15人の子供の肖像 ☆
15 portraits d'enfants d'Auguste Renoir
作曲年代:1971年
連弾オリジナル
演奏形態:れんだん
参照楽譜:Transatlantiques

 とてもエレガントな小品集。Renoirが子供を題材にして描いた作品を連弾曲として表現した15曲で構成します。ただし、安手の描写音楽ではありません。あくまでも絵画から受ける印象を音としただけ。S.Rachmaninoffの「死の島」(Die Toteninsel)や、M.Regerの「ベックリーンの絵による4つの音画」(4 Tondichtungen nach Arnold Bokline)と同系列の作品と言えましょう。その意味で、作品の質は高いですね。

 流麗な曲でピヤノ書法上も、まったく無理はありません。連弾曲としても、非常に弾きやすい部類に入るでしょう。演奏会で取り上げても、すてきなステージを作ることができるでしょう。技術レヴェルで見ると、両奏者ともに、ソナチネ・アルバム修了程度で十分に弾きこなせます。プリモは、バイエル50番程度の技術でも、初見で弾ける曲もあり、初心者の発表会でも活用できそうです。弾いていて、とても楽しいですよ

 ・・・でもね・・・どこか“毒々しい”のですね。具体的にそれを指摘するのは難しいのですが、題材となったRenoir作品の持つ、ある意味での“どぎつさと毒”を、如実に曲へと反映させているのです。ある友人がこの作品を「毒のある花」と表現していましたが、言い得て妙です。強いて言えば、和声面で“毒”を感じます。

 ちなみに、この曲、旋律はほとんどプリモが担当します。セコンダは伴奏一辺倒。セコンダにとって、はっきり言って苦労ばかり多い、損な作品です。

 なお、表紙にはRenoirの「Au piano」(ピヤノに向かって)が印刷してあるのですが、粗悪な刷りのため、不気味さが拡張されています。あの「シェーンベルクの表紙」ほどではありませんが、あまり心地よい表紙ではありません。はっきり言って、センスなし。

 また、各曲の冒頭には題材とした絵画が印刷してあるのですが、粗悪なモノクロ印刷のため、単に不気味なだけです。楽譜の印刷自体は丁寧で綺麗なのですが、この「絵」は、ちょっと頂けません。せっかくの作品が台無し。そう、楽譜全体から“毒々しさ”を周囲に発散しているのです。

 全体の構成は、以下の通りです。


スプーンを持つ赤ん坊 Le bebe a la cuiller ハ長調 Andantino
ブルターニュの娘 Jeune Bretonne ハ短調 Moderato
梳る娘 Adolescente se peignant ト長調 Andantino con moto
読書をする少女 Fillette lisant ニ長調 Andante misterioso
2人の姉妹 Les deux soeurs 変ロ長調 Allegro
ルクサンブール公園にて Au jardin du Luxembourg ヘ長調 Tempo di Marcia
青い帽子の少女 Fillette au chapeau bleu ハ長調 Andantino
花束を持つ少女 Fillette a la gerbe ト長調 Presto
カーン・ダンヴェル嬢 Mademoiselle Cahne D'anvers ト短調 Andantino mesto
10 小さな漁師 La petite pecheuse 変ロ長調 Vivo assai
11 青いリボンのグランベル嬢 Mademoiselle Grinpreil au duban bleu ニ長調 Allegro gracioso
12 ピヤノに向かって Au piano イ長調 Moderato di Valse
13 バラ色の羽根飾りの帽子をかぶった少女 Fillette au chapeau a plume rose ト長調 Andantino
14 シャルパンティエ夫人の子供達 Les enfantes de Madame Charpentier ハ長調 Allegretto simplice
15 下級生 Le petit collegine ヘ長調 Vivacissimo