...... 2004年 7月 01日 の日記 ......
■[ NO. 283 ]
続・ドイツレクイエム
晴れ。最低湿度27%。これは観測史上7月では最低値だそうだ。

おかげで昼間の気温は上がったが、比較的しのぎやすい。夜になると、連弾庵近辺では摂氏19度まで下がった。

さて先日、ブラームス「ドイツ・レクイエム」のピヤノ・デュオに関してちょっと書いた。それについて追加情報が入ったので報告しておきたい。

拙者は

(1)連弾・声楽なし
(2)2台・声楽なし
(3)連弾・声楽あり
(4)2台・声楽あり

・・・の4種類があると書いた。しかし、話はもっと複雑なようだ。

まず、G.Schirmerから出ている版は「作曲者自編」。楽譜に添えられている「Leonard Van Camp」という人の名前、これは編集・校訂者。この楽譜は「連弾または2台用」の楽譜であるとのこと。

そして、あちこち調べていたら、(1)と(2)に関して「作曲者自編」とする楽譜がCarusという出版社からも出ていることが分かった。Carusの楽譜は、連弾用と2台用、それぞれ別に出ている。

ところが、それだけでない。ある方からメールを頂いて、(4)の場合、テオドール・キルヒナー、フリッツ・シュターデ、アウグスト・グリューテルスの版があるとのこと。おまけに日本人の村谷達也氏という方が芸術現代社から、やはり声楽付き楽譜を出している。これは2台だ。まさか、こんなにいろいろあるとは思わなかった拙者だ。

その上、(3)があることも、どうやら確実だ。拙者、(3)と(4)のCDが都内の店頭で販売されているのを見たことがある。そのときは「また買えばいいや」と「こんなもの、どうせ買う人などいないから、しばらく残っているだろう」との思いで、放っておいた。そして後日買いに行ったら、見事に棚から消えていたのである。松永晴紀先生は、「わたしじゃ、ありません。わたし、買ってません」と仰っていたので、拙者たちと同じ趣向にある方が持って行かれたのであろう。

やはり、どこにでもお好きな方はいらっしゃるものである。

そうそう先日、脳天直撃的な楽譜を見つけた。三善晃先生の超名作・児童合唱と大管弦楽のための「響紋」の2台ピヤノ用楽譜である。ちょっと急いでいたので立ち読みになってしまったが、これ、買う人、いるのかなぁ? どの程度の編曲の出来だか、きちんと見てこなかったのは失敗である。


...... 2004年 7月 02日 の日記 ......
■[ NO. 284 ]
崖っぷち
晴れ。異常に涼しい。

これは、オホーツク海高気圧が関東近辺まで影響を与えてるのが原因だ。おかげで夜になると、エアコンいらずである。暑さに弱い妻は「まるで軽井沢か、北海道にでもいるみたいだ。タダでリゾートできている」と上機嫌である。

一方の拙者は「崖っぷち」だ。あちこちからいろんな原稿を頼まれて、それぞれ面白かったので「はい、いいですよ」と請け負ったまでは良かった。しかしよく考えると、日程的には完全に「崖っぷち」なのである。不肖かずみ、どうやってこの難局を切り抜けよう?

何故、いろんな「書き物」を引き受けるのか? それは、「物書きは、記事を書かなくなると、書けなくなる」からである。拙者だけかも知れないが、新聞や雑誌の記事は、常日頃から何か書いてないと、いざとなったときに「これは」というものが書けなくなるのだ。鮫の大半は、常に泳いでいないと呼吸ができなくて死んでしまう(一部に例外がある)。どうやら拙者、それと同じようだ。

書いていないと、からだの中の「書く」という機能が死んでしまうような気がする。何だか演奏と言う行為と似たようなところがあるようだ。

そうそう、拙者、面白いサイトに行き着いた。「di-arezzo.com」という、フランスの楽譜販売店のサイトである。

フランスの楽譜、拙者がいつも利用しているドイツや米国のサイトでも手に入る。ただ、品揃えは制限されている。いつも不自由に思っていた。フランスに楽譜の販売サイトはないかな・・・と思って。そうしているいるうちに見つけたのが、ここだ。

試しに、いろいろ検索をかけてみた。サイトは重いし、検索もちょっと呆けたところがあるけれど、フランスで出版されている楽譜については、相当をカヴァーしているようだ。これは便利である。

試しに何冊か頼んでみて、うまく行ったら皆様に報告した上で、拙者のサイトからもリンクすることにしよう。ちゃんと楽譜が届くかどうか、今しばらくお待ち下され。面白そうなのですぐにもリンクページに掲載したいのだが、きちんとした取引ができることを確認するまで待とうと思う。


...... 2004年 7月 03日 の日記 ......
■[ NO. 285 ]
夏、初めてのヒグラシを聴いて
晴れ。昨日と同じくらい涼しい。

ただ、「ぱぐ母さん」の様子が、あまり良くない。何だかヨタヨタしている。ご飯はちゃんと食べるのだが・・・。どうしたものだろう。

午後、遅くなってから銀座に出る。気晴らしとショッピングだ。拙者は「山野楽器」にCDを見つけに、ゆみこは「プランタン銀座」に入っている某ブランドのショップへ出撃だ。拙者は、アルゲリッチさま+プレトニョフのデュオのCDを捕獲。妻は収穫なし。

アルゲリッチさま+プレトニョフのデュオのCD、拙者としては珍しく国内盤を購入した。店頭で問い合わせたら、このCDは日本先行発売で輸入盤の入荷はいつになるか分からないというからだ。

拙者は、よほどのことがないと国内盤(日本の現代音楽や日本人録音の国内制作を別として)を買わない。値段は高いし、解説は貧弱だからだ。キングインターナショナルなどは、ピヤノ・デュオの解説者に松永晴紀先生を起用するなど工夫をしており良心的なのだが、ユニバーサル・ミュージックなどアウトだ。どうしようもない解説者を使う。

今回もそうだった。歌崎和彦という人が解説文を書いているのだが、この解説などまったく参考にならなかった。ほとんど素人同然の文章と内容である。この程度の内容なら、はっきり言って誰にでも書ける。こんな文章のために、本当ならばお金など払いたくない。それほど酷い解説である。だけど今回は輸入盤がいつ出るか分からないというので仕方なく買ったのだ。ユニバーサル・ミュージック(の日本法人)、まったく酷い。

それはそれとして、銀座に出たのは「靴」を買うためだ。靴などどこで買っても同じようなものなのだが、「銀座ワシントン靴店」では店員さんがとても親切で、足に合った靴を探してくれるので、仕事用の靴はいつもこちらで購入するようにしている。靴は消耗品だけど、拙者の場合、1つを長く使う。だから、ちょっと高くても(といっても限度はあるが)足にちゃんと合う靴を探してもらいたいのだ。

お店に行ったら、ちょうどバーゲンだ。すごく気に入ったのは高くて買えなかったけど、そこそこのものを安く買えたので満足。東京近辺の読者の方、仕事で使う靴を買うなら、ここがいいですよ。足にぴったり合った靴を探してくれます。なければ作ってくれる。本当は作ってもらいたいのだけど、予算がないのでいつも諦めてる拙者だ。

良い靴が手に入ったので、拙者が大好きなブランドのブティックに行く。時計と、手帳とゴロゴロ(ゴロゴロ引っ張って歩くケース)を見るためだ。拙者担当営業のMさんを呼び出していただいたのだが、生憎と長期休暇でお休み。お店の人は「他の店員で対応しましょうか?」といったのだが、拙者は「Mさんじゃなきゃ、やだ」といって、お店を出てきた。やっぱり長く使う物は、担当の店員さんから買いたいものだ。(それに別に、今日すぐに買うわけではないし)

ブティックを出てきて、「喉が乾いた」と「マグニチュード4」になっている人がいるので、早い夕食。「マグニチュード4」の人が見つけた、ちいさなお鮨やさんに入る。麦酒を一気のみして、その後頂いたお鮨、美味しかった。いいお店を見つけたな。

帰宅して、ぱぐたちの散歩。雲故と疾呼を我慢させてしまったので、可哀想だった。散歩をしてると蝙蝠が大勢で舞っている。いったいどこに住んでいるのかと思うくらいだ。歩いていたら、ヒグラシが鳴いているのを耳にした。今年に入って初めて聞く蝉の声である。からりとした空気が、いっそう爽やかに感じた。

そうそう、帰宅したら大量の郵便物がポストに入っていた。中にブティックのMさんからのカードが。開封してみたら彼女の「お休み予定表」。「長期休暇を取ります。出勤したら、お店にお寄り下さい」。あーれ、入れ違いだった。


...... 2004年 7月 04日 の日記 ......
■[ NO. 286 ]
総退却
晴れ。からりとしているが、猛烈な暑さ。

朝起きると、酷い頭痛がした。それだけではない。左肩が重く痛む。さらに左手全体がしびれたようになって、とても痛い。鎮痛剤を飲んで、横になる。「ぱぐ」が「一緒に寝よう」というので、かずみ寝室で2人して横になる。せっかく早めに起きたのに、これでは何にもならない。鎮痛剤が効いてきて、眠くなる。

・・・11時過ぎ、再び目が覚める。頭痛は治まったが、肩の痛みが酷い。寝返りも打てない状態だ。依頼された原稿が溜まっているので、今日は朝から執筆にとりかかるつもりだったが、これではパソコンに向かうこともできない。痛くて、泪が出る。鎮痛剤など、まったく効かない。

昼食後も痛みは取れない。普段だったら、休日の昼食後、「お皿と調理器具洗い」をする拙者だが、肩から腕にかけて痛みが酷くてどうにもならない。もう、この時点で今日の執筆は諦めた。開き直って、「完全休暇」とすることにする。片手でマウスとキーボードを操りネットサーフィンをしたり、ゆみことお喋りしたり、ぱぐぱぐしたりして、身体を休める。ゆみこが「これ。弾いてごらんよ」と、日本の歌の連弾編曲をもちかけて、初見で何曲か弾いたが、肩と腕、そして指が痛くて、早々に退却。

夕方、乾いた熱風の中、ぱぐたちの散歩。1日1回は外の空気と日の光を浴びないと健康に良くない。左肩から先が痛くて仕方なかったが、ふらりと出かける。




夕食後、腹ごなしに、近所でやってる「七夕祭り」に出かける。人いきれでむせてしまった。どうも体調が全体的に良くない1日だった。ま、ゆっくり休めたから、それでよしとするか。

肩の痛みは、まだ取れない・・・。


...... 2004年 7月 05日 の日記 ......
■[ NO. 287 ]
弱ってきた、ぱぐ母さん
晴れ。時々曇り。

蒸し暑い日が戻ってきた。体力が奪われる。

「ぱぐ母さん」の調子が、あまりよろしくない。上の歯茎から出血している。腰も、よろよろしている。拙者が出勤している間、妻が動物病院に連れていった。歯は歯槽膿漏でボロボロだそうだ。もう12歳半、仕方がないのかも知れない。でも、1日でもたくさん、長生きしてもらいたい。

「ぱぐ」と「あかね」。我が連弾庵のシンボルである。連弾庵といったら、パグ犬だ。彼らのいない連弾庵なんて、考えられない。大勢のお客様にも可愛がっていただいたし(ぱぐたちを見て、「コワイよ、お母さん」と泣いた人が、約2名いたが)。

さて、先般みつけたフランスの楽譜販売サイト「di-arezzo」に、早速楽譜を注文してみた。すごい品揃えである。特にこれまでの米・英・独のサイトでは入手が難しかったフランスの楽譜が、恐ろしいほどに揃っている。日本への送料も、何冊頼もうが、一律12ユーロと良心的だ。しかも、日本語でトラブル対応をしてくれる。拙者、サイトで楽譜を発注した後、いくつか気になることがあって、日本語担当者の方にメールを書いた。もちろん日本語で。そうしたら、実に丁寧なメールが、日本語で返ってきた。これで楽譜が届けば、万々歳である。結果は、是非こちらで報告したい。

これがうまく行けば、ロシヤを除けば先進主要国で出ている楽譜は、発注から2〜3週間以内で、しかも余計なマージンを取られずに自宅まで運んでもらう算段が確立するのである。乞うご期待!


...... 2004年 7月 06日 の日記 ......
■[ NO. 288 ]
蝙蝠ハウス
晴れ。大変に蒸し暑い。

連弾庵の回りには、蝙蝠が大勢住んでいる。春から秋にかけて、ぱぐたちを夕方の散歩に連れ出すと、蝙蝠たちが大勢、ひらひら飛んでいる。

以前、どこかのサイトで「蝙蝠の巣箱の作り方」というのを見た記憶がある。このサイトを探して、連弾庵にも巣箱をかけてみようかな。「家で蝙蝠、飼ってます!」って言ったら、何となく楽しいもの。

毎年春になると、ツバメが来て、連弾庵の回りをフラフラ偵察している。巣をかける場所を探しているのだ。玄関ポーチの上など最良だと思うのだが、なかなか巣を掛けてくれない。どうしてだろう? ツバメ、連弾庵はお気に召さないのかな? 皆さんのお家で、ツバメが巣を掛けている方はいらっしゃいますか?

・・・と、ここまで書いたら眠たくなった。沈没だ。


...... 2004年 7月 07日 の日記 ......
■[ NO. 289 ]
七夕
晴れ。猛烈な暑さ。

東京都内はもとより、連弾庵近辺でも、最高気温が35度を超えた。

笹の葉、さらさら
軒端に揺れる
お星様、きらきら
金銀砂子

五色の短冊
わたしが書いた
お星様、きらきら
空から見てる

連弾庵では、テラスにある笹が枯れてしまったので、短冊を下げるのを止めた。でも、下げるとしたら、どんな短冊になるだろう・・・?

・家族みんなで健康で楽しく過ごせますように
・給与の下げ幅が、極力少なくなりますように
・拙者の眼の病気が、これ以上悪化しませんように

まあ、こんなところか。
今日、病院の眼科検査に行って、愕然とした拙者であった。光を失うことはなくても、片目の視力はアウトだそうだ。


...... 2004年 7月 08日 の日記 ......
■[ NO. 290 ]
暑さ直撃
晴れ。うだるような暑さである。

東京・大手町では最高気温35度を超えた。それよりかは多少ましな連弾庵近辺でも同様だ。ピヤノがあるリビングでエアコンをガンガン回すと、密閉性の高い部屋であるにも関わらず、3時間くらいで、1.5リットルの洗面器がいっぱいになるくらい水が取れる。

そんな日。ゆみこは松永晴紀先生のレッスンである。心優しい松永先生は、ゆみこの「暑さ嫌い」が分かっているので、レッスン室をガンガンに冷やし、冷たいお茶まで用意して下さった。それでも「ピアノを弾いていると、ぐわぁぁぁあっって汗が出るんだよ」、と仰る方が約1名。「松永先生のレッスンは楽しいのだけど、やっぱ夏は辛い」・・・はあ、そうですか。

拙者も街を歩いていると、何だかアンドレ・ジョリヴェの「ピヤノ協奏曲」が耳元で鳴っている気分になって、蒸し暑い。梅雨明けすれば、もっと素敵な夏日が待っているのに。ああ、夏。抜けるような空、入道雲、熱気、そして燃える恋。こんな中途半端な暑さでなくて、ホントの夏が早くこないかな。

そうそう、そのジョリヴェの協奏曲。楽譜はしっかりHeugelから出ているのだけど、このところ演奏会では取り上げられないし、録音も皆無。もう、賞味期限切れなのかな? ちなみに、この曲、2台ピヤノ用の楽譜もある。誰か弾く人、いませんか?


...... 2004年 7月 09日 の日記 ......
■[ NO. 291 ]
猛暑、3日目
晴れ。3日続きの猛暑である。

昨日ちょっとだけ、アンドレ・ジョリヴェの作品について触れた。実はジョリヴェ、ピヤノ・デュオのオリジナル曲も残しているのである。それも2台ピヤノが2曲。

ひとつは「ホビ族の蛇踊り」という作品。良い意味でもそうでない意味でも、ジョリヴェらしい作品だ。お得意の「熱帯呪術調フレーズ」のオンパレードみたいな曲である。連弾庵にあるCDを聴いたが、最初の1回はいいとして、繰り返し聴くと「・・・・?」。この曲がお好きな方には申し訳ないが、1回聞けば十分な曲である。もっとも、2台ピヤノの演奏会でやったらば、それなりにインパクトのある曲だけど。

それともう1曲、「パチンコ」という何ともふざけた題名の2台ピヤノ曲も書いている。こちらは楽曲未聴で楽譜も未見。いったいどんな曲だろう? でも、何だか内容の想像がつきそうな曲だ。「蛇踊り」も「パチンコ」も、何と楽譜は現役でBillaudotというところから出ている。こうした曲の楽譜を現役で出していて、果たして購入し、演奏しようとする人がいるのだろうか? 「蛇踊り」も「パチンコ」も楽譜の価格は13ユーロ(だったと思う)で大したことないので、コレクションに加えてもいいのだが、でも何だかなぁ・・・。ちょっと気乗りのしない拙者である。読者の方で「パチンコ」お弾きになられた方がいらしたら、是非ご感想をメールで頂きたい次第だ。

さて、今日は昔からの友達と仕事仲間が集まって、情報交換も兼ねた暑気払い。場所は拙者の希望で、東京・神田司町の「みますや」に決まった。以前、この「日乗」でも紹介した、明治38年から同じ場所で営業している居酒屋である。

お店の最寄り駅である、都営地下鉄新宿線・小川町駅から地上に出ると、息苦しいほどの暑さだった。息をしていても酸欠状態になるような気分。一刻も早くお店にたどり着きたかった。さて、この写真は、表から写したものだ。もう夕暮れだったので、撮った写真は真っ暗けだったのだが、補正をかけたら何とか見えるようになった。


この建物は、大正から昭和初期に流行した「看板建築」という様式である。内部はもっとレトロだ。写真の撮影ができなかったのだが、行かれてみると分かる。昭和初期の飲み屋そのものである。なんだかとても懐かしい気分になる場所だ。酒も料理も、旨い割には比較的安価で庶民的である。4人で、生ビール6杯、サワー1杯、酒は最初に2合を3つ、のちに4合瓶4本を開けた。まあ大した量ではない。

その後、参加者の希望で、銀座へ侵攻。また呑んだ。午前2時過ぎに家から電話。「何やってるのよ。早く帰ってこないと、お家へ入れてあげないよ」。・・・と言うわけで、帰宅して沈没。


...... 2004年 7月 10日 の日記 ......
■[ NO. 292 ]
ピヤノと尺八
晴れ。のち曇り。時々雨。

昨日ほどの暑さではないが、暑いことには変わりない。昨夜は大して呑まなかったのに、積もり積もった疲れが暑さで出て、午前8時半に起きたのだが、朝から退却モードである。しかし、今日は友人の豊岡夫妻、立花夫妻、デュオぽんかんのジョイント・リサイタルがあり、レクチャーをしなければならないため、「退却」などと言ってられない。

今日のコンサートは、ピヤノと尺八のコラボレーションだ。用意した曲は次の通り。

・M.ナイマン:天の涙(尺八とピヤノ)
・別宮貞雄:北国の祭り(ピヤノ連弾)
・佐藤敏直:鳩のいる風景(尺八2重奏)
・秋岸寛久:白雨(尺八とピヤノ)
・田中利光:古塔五景(連弾)

定員50名の会場に60名以上のお客様が入った。聴衆のレベルは相当に高そうだ。それに開演間際になって、何と別宮貞雄先生がいらっしゃった。うーん、下手なことはしゃべれないな・・・。それでも、何とかやってしまう拙者である。

尺八とピヤノ。音質は違うし、音量も違う。この難しい組み合わせを、NHK邦楽オーディション合格の立花茂生氏とピヤノの豊岡正幸氏が見事な演奏を聴かせた。やはり2人とも、相当に耳がいいのだろう。ベーゼンドルファーの輝かしい音質と尺八の渋い音色が、これほどまでにうまく合うとは思わなかった。ナイマン氏の作品(これは立花氏とナイマン氏によりスイスで初演されている)しかり、秋岸氏の作品しかりだ。

ただ、両名に伺ったところ、音色と音量の出し方では、相当な苦労があったとのこと。小さな会場だったからできたことかもしれないけれど、ピヤノと尺八をはす向かいに置き、尺八の音をピヤノの共鳴板を使って増幅させると共に、音色を混じらせるという手段を使った。これはかなり成功していた。ただ、これをやろうとすると、双方の奏者の耳が、よほど良くないとできない。その面で、2人の実力が完全に発揮された演奏となったと言えよう。

別宮先生の作品の演奏者は、ぽんかん。楽譜に忠実なストレートな演奏。お聴きになった別宮先生は、大変に喜んで下さった。大変に上機嫌の先生は演奏終了後、「ぽんかん」たちに「アイスクリームでも食べに行こうよ」とお誘い下さった。これには、もうみんなびっくり。

「白雨」も「古塔五景」も、「これ以上の演奏は、なかなかないな」と思えるほどの名演。お客様の反応も上々だった。皆さん、暖かい目で演奏に接して下さった。

内容は異質だったけど、とても素敵な時間と空間になったと思う。演奏会に協力させて頂いた側として、これほど嬉しいことはない。いらして下さった聴衆の皆さんと別宮先生に感謝である。演奏者の皆さん、お疲れ様でした。

終演後、「打ち上げ」をやったのだが、拙者は疲労のため、ほとんど何も呑めず、軽くお食事しただけ。原宿から連弾庵まで電車で帰る力がなく、仕方なくタクシーにする。帰宅して即座に沈没だ。


...... 2004年 7月 11日 の日記 ......
■[ NO. 293 ]
拡大同窓会
晴れ。のち曇り。時々雨。

暑さは、やや収まった。参議院議員選挙の投票の後は、また都内である。今日は音楽とは関係ない。

3月。拙者が公私ともに大変にお世話になった大学の先生が退官されたことは、すでにこちらで書いた。今日は、多少遅れてしまったものの、先生の退官記念パーティーだ。

ごくごくこじんまりとやって、先生のごく親しい方ばかりをお呼びしたのだが、それでも50人近くになった。拙者が会場に入っていくと、懐かしい、顔、顔、顔。日本の地球物理学界(特に個体地球物理の海関係)や物性物理の大御所がずらり。拙者など、末席である。立食パーティだったので、もう、いろんな懐かしい方とお話できた。嬉しかった拙者であるが、全然何も食べられなかった(立食パーティは、いつもそうである)。

ちょっと理由があって、6人のスピーカーの中に、拙者が含まれていた。きっと偉い方も大勢いらっしゃるだろうから・・・と思ったが、「素晴らしい才能、素晴らしいリーダシップの人に接することは、人生にとって大変な意義がある」というスピーチをさせて頂いた。他の方が、先生の業績について触れられていたので、あえてそれを避けて。

で、こうしたところで、大勢の方に声をかけていただける拙者は、本当に幸せ者だと思う。大した実力もなくて、ただ愚直に自分のやりたいことを必死でやってきた身としては。先生の退官記念パーティだったけど、何だか「拡大同窓会」みたいになって、楽しかった。これもひとえに先生のお人柄であろう。

やはり、わたしは、幸せ者なんだな。


...... 2004年 7月 12日 の日記 ......
■[ NO. 294 ]
がっかり
晴れ。のち曇り。時々雨。

どうにも疲れが取れない。とうとう「今週の1枚」の更新もできなかった。ネタは尽きかけているとは言え、まだもう少し何とかなる。

先日、ドイツのアマゾンから、けしからんメールが来た。拙者が「今週の1枚」のネタにしようと思って、9枚ほど発注したのだが、何と4枚は入る見込みなし。1枚は1カ月経てば入る(他の4枚は既に届いている)。無茶苦茶面白そうなCDだっただけに、入る見込みがなくなってキャンセルになったのは、とても残念(おまけにネタも淋しくなってきたし)。CDが届くのを、とても楽しみにしていたのに。何ともがっかりである。

いつも思うのだが、ピヤノ・デュオのCDって、本当に出た途端に廃盤になったりする。「欲しいな」と思ったときには、手に入らなかったりして。ドイツのアマゾンなどは、品揃えがしっかりしているのに、それでも今回のように「アウト」になることもあるのだ。何だか、ピヤノ・デュオのCDが冷遇されているような気がする。


...... 2004年 7月 13日 の日記 ......
■[ NO. 295 ]
梅雨明け
晴れ。

関東地方も梅雨明けである。妻は、もう何日も前から「梅雨なんてとっくに明けてるよ」と言っていたが、やはり梅雨明け宣言は「気象庁さま」がお出しになるものである。妻やパグたちが「明けた」と宣言してもダメなのである。梅雨明けは、御上から申し渡されるものなのだ。

…と言うわけで、夏本番。連弾庵で「夏だ、サマーだ、燃える恋!」と、半分ダウンしながらもはしゃいでいるのは拙者だけ(ダウンしながらはしゃぐのは、さながら末期的状態でもあるのだが)。パグたちはもちろんのこと、妻も暑さが大嫌い。「早く秋がこないかなぁ」(妻)。諸兄諸嬢は如何であらせられようか?

さて、夏にふさわしいピヤノ・デュオって何だろう? いろいろ考えたけど、3つほど。2つはディーリアスだ。その名も「夏の庭にて」。P.Heseltineの編曲だ。これは美しい。ノスタルジアに満ちた、英国の儚い夏の描写である。この楽譜はUniversalから出ていて簡単に入手できる。

同じディーリアスなら、「川辺の夏の夜」(編曲者同じ)も爽やかだ。弾いていても聴いていても、こころが涼しくなる。これはOxford Univ. Pressから楽譜が出ていたが現在絶版。ただ、中古市場では時々見かけるので、入手は容易かもしれない。以上2つは、小川典子さんとキャサリン・ストットさんがスウェーデンの「BIS」に録音している。夏の夕暮れに、是非とも聴いて頂きたい演奏だ。もちろん、楽譜を入手されて、ご自身で弾いてみられるのも良いだろう。

直接に「夏」とは関係ないのだが、子供の頃の夏休み的ノスタルジアを感じさせるのが、ヴァージル・トムソンの「ウォーキング・ソング」(2台用編曲)。録音はないが、楽譜はSchirmerから出ており現役。ある方が、この曲に関して拙者とまったく同じ感想を述べていらしたのを読んで、大変に驚いたことがある。

皆さんは、このほか「夏」にふさわしいピヤノ・デュオを御存知ですか?


...... 2004年 7月 14日 の日記 ......
■[ NO. 296 ]
35度超
晴れ。

都心は35度を超えるなど恐ろしく暑いが、まだ夏本番の暑さではない。昨日、「夏に似合うピヤノ・デュオ」について書いてみた。で、いっそのことならジョリヴェの「蛇踊り」なんか土俗的で良いのではないか…とおっしゃる方もいらっしゃるかも知れない。

いや、これは、止めた方がいいと思う。まるで真夏の熱帯雨林に入って行くようなものだから。この時期、そのような場所に行こうとされる方は、余程の用事があるか物好きであろう。真夏に、このような曲を弾いたり聴いたりしたらば、不快感が倍増するに違いない。

それだったら、同じ2台ピヤノでフランス物なら、シャミナードの「アンダンテと小スケルツオ」や「交響的二重奏曲」のほうが、お洒落で涼しげだろう。拙者としては、こちらがお薦めだ。

・・・と、ここまで何とか書いたのだが、疲労のため沈没。


...... 2004年 7月 15日 の日記 ......
■[ NO. 297 ]
スタインウェイと白熊
晴れ。時々くもり。一時雨。

東京都が面白いことを始めた。税金滞納差し押さえ品をネット競売しようというのだ。全国でも初の試みである。20歳以上なら、実質上誰でも参加できる。さて、今回の「目玉」は、何とSteinwayのグランドピヤノ「A-188」(ハンブルグ製)である。1998年製で、能書きを読んだところ、なかなかの掘り出し物のようだ。オークションの開始価格が290万円から。ちょっとした自動車を買うようなもの。思わず拙者「むむむ…」となった。

でもなぁ・・・普通に買うより安いとは言え、やはり値段も値段。気軽に出せる額ではない。それに、そんな良いピヤノを持っていても連弾庵では宝の持ち腐れになってしまう。と言うわけで、今回は見送り(当たり前か)。興味のある方は「こちら」をご参照のこと。




帰宅すると妻が「かずみ、また面白い物を見つけたよ」、と大喜びである。何かと思ったら、またも「白熊」。「今度は、別の白熊なんだよ」(妻)。それがこれ。


この前のは、ただの「白熊」だったが、今度のは「南国白くま」とある(よーく考えてみると、かなり炸裂的なネーミングだ)。おまけに「元祖・鹿児島」の文字も。これは鹿児島市にある「セイカ食品」というところが作っているものだ。この前食べた福岡市・丸長食品の「白熊」と、どう違うのかが楽しみだ。なお、サイトを見てびっくりしたのだが、このセイカ食品という会社、かの有名な「ボンタンアメ」を作っている食品会社なのである。

ちなみにこの「南国白くま」、車で5分ほどのところにある「MaxValu」の店舗にあったのだそうだ。何でも少し前、お店に置いてある「お客様の声」の投書ポストに、妻が「白熊を入れて下さい」と書いて入れたら、本当に入荷していたのだそうだ。凄いお店である。

「Steinwayが欲しい!」といいながら、結局は100円の白熊で満足しているあたり、やはり連弾庵は小市民なのである。


...... 2004年 7月 16日 の日記 ......
■[ NO. 298 ]
お薦めサイト
晴れ。時々曇り。一時雨。

雨、と言っても、ざっと短時間に降っておしまい。これでは、余計に蒸し暑くなるだけである。昔経験した、あの夕立の感覚は、何処へ行ってしまったのだろう。

晴れていた夏の空がにわかにかき曇り、激しい雨、そして時に雷。その雨が上がったあとの爽やかさ。何とも言えぬ、風情のある夕暮れ。首都圏に住んでいる限り、あの夏の抒情に浸れることはないのだろうか。ある方が以前拙者に「年々、気候が乱暴になって行く気がします」と仰っていたが、まったくその通りである。

少なくとも20年前には、そんなことはなかった。都心でも。拙者が通っていた学校、北向きの研究室。視野には高い建物がなくて、雷雨の時には稲妻が、それはきれいに見えた。そして、雨が上がって下町に出ると、夕暮れの抒情に満ちていた。ああ、何という心に染み渡る時間と空間であろう。もう、得られぬものなのであろうか。

嬉しいことがあった。

先日こちらで、フランスの楽譜販売サイト「di-arezzo.com」を見つけた話を書いた。早速アクセスして、いろいろ発注した拙者である。このサイト、英語とフランス語が使えるサイトなのだが、前にも紹介した通り、日本人の担当者がいらして、日本語で問い合わせに受け答えしていただける。拙者、ちょっとしたことを日本語で質問したら、ただちにきちんとした答えが日本語で返ってきた。これだけでも嬉しい。でも、今日はもっと嬉しかった。

このサイトの発注・発送状況はサイトで確認できる。拙者はそれで十分だと思ったのだが、こちらから問い合わせもしないのに、担当者の方から下記のようなメールを頂いた。

先般御注文頂きました楽譜(注文番号No.XXXXXX)ですが、7点のうち Chausson :Symphonie en Si Bemol Majeur を除く6点が揃いました。お急ぎかもしれませんので、昨日航空便にて、この6点について、ひとまず先に発送いたしました。10日前後でお手元に届くことと存じますので、宜しくお願い致します。

なお残る1点に関しましては出版元の都合で若干遅れているようなのですが、当社に入荷次第、送らせて頂きますので今しばらくお待ちください。なお、その際の送料はこちらで負担致しますので、ご心配なきようお願い申し上げます。


これには不肖かずみ、感激である。で、返事を書いた。

もしChausson :Symphonie en Si Bemol Majeurが絶版になっていた場合、御社からコピー譜の作成を依頼していただくことは可能でしょうか? 費用はいくらかかっても構いません。難しければ結構です。

そうしたら、すぐに次のようなメッセージが。

確かに楽譜によっては非常に入手が困難な場合がありますね。お尋ねの件ですが、担当に相談しまして分かり次第ご報告いたします。いずれにせよ、なんとかこの楽譜がお届けできるよう、努力したいと思います。Salabert にもプッシュしてみます。

オンラインでの買い物は多いが、ここまでやってくれたところはない。しかも、いくら勝手も手数料/送料は12ユーロで同じ。それに、フランス物の品揃えが凄い。これは、おすすめサイトである。後ほど、本サイトからきちんとリンクして、皆さんに紹介しよう。

さっきまで仕事でハチャメチャだったが、こうしたメールを頂いて、とても嬉しかった拙者である。


...... 2004年 7月 17日 の日記 ......
■[ NO. 299 ]
素敵で幸せな時間
晴れ。

蒸し暑い。猛烈に蒸し暑い。脳味噌がとろけて、バカになりそうだ。おっと、この表現は間違っている。既に拙者はバカなのだから、バカがバカになる、というのは不適切だ。あえて言うなら「バカ度5」が「バカ度8」に発展(?)したと表現する方がいい。

その拙者、暑い中の午後早く、JR中央線のある駅の改札に降り立った。

「三善晃先生にインタビューしてみない?」。7月上旬、こんな夢のような話が舞い込んだ。三善先生は、言わずと知れた作曲界の巨星である。拙者など30年前から氏の作品に接し、いくつかの曲では初演に接することもできた。もう、仰ぎ見るような存在だ。そうした方と、お喋りができるとは! 憧れの巨匠と1対1でお喋りができるのである。もう、何の条件も付けず、即座に了解した拙者だ。

テーマは「作曲家にとってのピヤノ・デュオ」。これは難しい。デュオのことだけを聞けばいいわけではないのだから。その作曲家の全体像を知っているだけでなく、「作曲」という作業についても、一通りの知識は必要だ(拙者にそれがあるとは思えないのだが)。要は「ヲタク」ではダメなのである。おまけに、インタビュー内容を即座に文章にする・・・という要求もあった。まあ、あれこれあって、結局インタビュアーは、拙者に決まった。

「アポイントメントは、あなたがとってね」と言う担当のAさん。拙者、普段の仕事でアポ取りはたくさんやっているし、いわゆるVIPの方ともたくさんお話している。慣れているはずだ。でも、今回は別の意味で緊張した。あまり良い喩えではないが、ファンの方が、ブラピさまやヨンさまに直接電話するようなものである。恐る恐る三善先生にお電話したら、「わたしの家でよければ、いらっしゃい」とのこと。とてもお優しい、丁重なお言葉だった。

と言うわけで、猛暑の午後、三善邸に参上した拙者であった。もちろん尊敬する先生ににお目にかかるので、駅から乗ったタクシーの中で頭を冷やし、「シャキっ」としたことは言うまでもない。そうでなければ、せっかくお時間を作って下さる先生に対して失礼だ。これは通常の取材でも同じことが言える。

三善先生、とっても素敵なお宅にお住まいだった。インタビューは、仕事場でさせて頂いた。その仕事場の雰囲気が、また本当に素敵。先生の作品から感じる繊細さを肌で受ける感覚だ。拙者は思った。「ああ、あの作品も、この作品も、この部屋で生まれたんだ」と。

先生には、前にもほんのちょっとだけお目にかかったことがあり、雰囲気は存じていたが、これがあの巨匠なのか・・・と思わせるほど、謙虚で素敵な方だった。インタビューの初めには硬い表情だった先生が、どんどんにこやかになって行き、それは楽しいお喋りになって。所々で、「ほら、こんなフレーズが・・」って横にあるピアノで弾いて下さって。

途中で、「インタビューの内容とは関係ありませんけどね」と仰いながら、「えっっ?」と言うような「秘話」までご披露下さって。「いやぁ、こんなこと、人に話したのは、初めてですよ」と、本当に楽しそうにお喋りして下さったのには、心から感動した。

たくさんのお喋りをしながら、拙者は思った。「ああ、人を感動させる作品を書く方って、やっぱりお人柄も素敵なんだな」と。

誰かにインタビューする、対談する。それは拙者にとって、どれも心の財産になるものだ。だからこそ、いろいろな方にお目にかかって、お話を伺う機会を作っている拙者だ。その中でも今回のインタビューは、こころの底から感動した、それは幸せな時間だった。

一緒に楽しいお喋りをさせていただいて、三善先生の魅力にますます惹きつけられてしまった拙者である。こんな充実した素敵な時間は、そうそうあるものではない。

対談の内容は8月半ばにある雑誌に出る。のちにご案内するので、ぜひお読み頂きたい。でも、先生からお話頂いた「秘話」のいくつかは、拙者の「宝物」として、墓場まで持っていこうと思う。ああ、何て幸せなんだろう!

そうした時間を下さった三善晃先生、本当にありがとうございました。機会を作って頂いた担当のAさんにも感謝。


...... 2004年 7月 18日 の日記 ......
■[ NO. 300 ]
まだ真夏ではない
晴れ。ときどき曇り。

今日も蒸し暑い。先日の新潟に続いて、今回は福井で水害があった。被災者の方々に、お見舞い申し上げる次第である。関東・甲信は梅雨明けしたが、北陸から北はまだである。そうした時期、梅雨前線の活動が活発になるのは例年のことだ。これだけ土木工学が発展しているのに、いまだに堤防の決壊があるなんて、これは治水行政上の問題ではないか、と思ってしまう。

そして連弾庵近辺。蒸し暑いだけで、ちっとも「真夏っ!」という感覚がしない。抜けるような青空、わき上がる入道雲、そして突き刺さるような日差し・・・これがないと、真夏とは言えない。どうも中途半端なお天気なのである。

そんな今日、ちょっと事情があって、ほとんど半日、パソコンに向かって文章を書いていた。妻は「商売にならない文章書きなんて、良くないよ」というのだが、何かを書くことで普段からの仕事の力(すなわち、物を書く力)を維持しようとしている拙者には、絶好の機会なのである。本業の当番に加えて、仕事とは全く無関係の文章を書くのでパソコンに向かい続けていた拙者だ。

もっとも、こう蒸し暑くては、外出して遊びに出る気分になれない。拙者が「行こうよ」と言っても、妻が「暑いから、やだ」というのは目に見えている。夕方になって、ぱぐたちの散歩のために外に出て、ようやく太陽の光を浴びた。それはそれで気持ち良いが、「本当の夏」でないのが、何となくイヤである。外の空気を吸ったのは、その「お散歩」と夕食に出たわずかな時間だけだった。健康的にはあまりよくないのかも知れない。




「本サイト」の方でも紹介したが、SchottとUniversalが、サイトで「お店」を開いた。これで、英、独、オーストリアの主要出版社は、すべて自社サイトでショップを持ったことになる。これは便利だ。1社の出版物を「これ」と決めて購入するなら各社のサイトに行けば良いし、何社かの出版物をまとめて買うなら楽譜ショップのサイトに行けばいい。どれも送料だけで余計な手数料は取らない。おまけに在庫があれば、だいたい発注から3週間以内に(早ければ5日で)手元に届く。もはやこうなると、日本の楽譜ショップは、ほとんど用なしだ。余程入手が難しい楽譜を取り寄せてもらうか、在庫を即座に必要とするケースでもなければ利用することはなくなるだろう。

インターネットの良いところは、回線さえ繋がっていれば、どんな山奥や離島だって関係なく楽譜が注文できるからだ。こうした状況になって、日本の楽譜ショップは、その存在意義を改めて問われることになるだろう。Y社にしろA社にしろ、これまでのような殿様商売は通用しまい。


...... 2004年 7月 19日 の日記 ......
■[ NO. 301 ]
パグパグな1日
晴れ。

今日も連弾庵周辺には、本格的な夏は来ない。あまりぱっとしないお天気なのに、気温だけは高い。外は熱風が吹いている。

どこにも出かける気にならず・・・本当は行こうと思ったのだが、妻が「暑いところに出るのはヤダ」というし、銀座のブティックに行っても担当のMさんはお休みだし。・・・というわけで、仕事をしながら1日、パグパグしていた拙者である。

先日、遅蒔きながら「伊福部昭の芸術4」というCDを購入した。収録されているのは、「SF交響ファンタジー第1〜第3番」と、「倭太鼓とオーケストラのためのロンド・イン・ブーレスク」である。指揮は、今の日本人指揮者で最も旬で伸び盛りの広上淳一氏だ。ライヴでも接したが、氏のオーケストラ・コントロールは大変に素晴らしい。

これらは、いずれも拙者が大好きな怪獣映画の音楽をメドレーにしたものばかり。拙者、結構こうしたものが好きなのである。SF交響ファンタジー第1番では「ゴジラ」が出てくるし、「倭太鼓とオーケストラのためのロンド・イン・ブーレスク」ではゴジラ映画で出てきた拙者の最も好きな「自衛隊マーチ」が繰り返し出てくる。これがとても楽しい。

無条件で楽しめるCDなのだが、添付の解説も秀逸だ。伊福部氏へのインタビューと楽曲の解説を片山素秀氏という方が書いていらっしゃるのだが、これがいい。過不足無く必要なことをズバリ書いている。大変に良心的だ。どのようなバックグラウンドをお持ちの方が存じ上げないが、こうした文章を書かれるからには、よほど誠実でしっかりした方なのだろう。

・・・というわけで、ここまで書いて、沈没だ。早く本格的な「夏」が来ないかな。「夏だ、サマーだ、燃える恋」。


...... 2004年 7月 20日 の日記 ......
■[ NO. 302 ]
摂氏39.5度
晴れ。

猛烈に暑い。気温がぐんぐん上がる。遂に東京は摂氏39.5度まで上がった。観測史上、最高気温である。ちなみに千葉県の市原というところでは摂氏40度を超えた。

午後、お昼ご飯を購入するために、オフィスから出る。強烈な日差し。抜けるような青い空。噎せ返るような熱気。ああ、これだ、これが夏なんだ、やっと本格的な夏が来たんだ! 「夏だ、サマーだ、燃える恋!」・・・と喜んでいたものの、「今日は贅沢して表通りのお弁当屋さんで、450円の豪華弁当を買おうかな」と出かけた拙者、あまりの暑さに恋などする前に頭がフラフラになって、いつものお弁当屋で例の380円弁当を買って、オフィスに逃げ帰った次第である。

こうした気候は、ある意味、気持ちがいいのだが、そのまま外に立っていたら、脳味噌がやられ「バカ度10」になる。いやその前に、きっと熱中症で倒れることであろう。

このところ、関東・東海・甲信地方では、猛烈な暑さが続いていて、これを「異常気象」とする意見もある。しかし拙者はそれには賛同できない。気温の変化と気圧配置、その他を勘案しても、統計的にスケールアウトするような値ではないからだ。東京に関して言えば、単にヒートアイランド現象とフェーン現象が重なっただけであろう。この程度で大騒ぎするものではない。まあ、東京でバグダット並みの気温が1カ月も連続すれば、確かに騒いでもいいが。




突然、「Boosey & Hawkes」からの荷物が届いた。中を明けて見ると、先日頼んで「Back orderにするよ」と言ってきた楽譜の一部が入っていた。内訳は、

・ショスタコーヴィチ:交響曲第5番(作曲者自編の連弾)
・チャイコフスキー:エフゲニ・オネーギンのワルツ(2台)
・ディーリアス:幻想的舞曲(2台)

である。

ショスタコーヴィチの5番は、当初、Boosey & HawkesのWebサイトでは「2台」となっていたものだ。どうやらそちらが間違いで、届いた「連弾」が正しいらしい。この楽譜、恐ろしく詳細な解説がついている上に、付録としてピヤノ・ソロ用スケッチのファクシミリまでついている。これは豪華だし、面白い。大枚50ポンド出しただけのことはある。

肝心の編曲だが、解説によれば自編。演奏効果はまだ測りかねるが、楽譜は大変に面白い。楽曲の構造がとてもよく分かる。それに弾いても楽しそうだ。今度の休日に、是非妻とやってみよう。

他の曲は、ちらりと見ただけだが、これもなかなか素敵そう。「エフゲニ・オネーギンのワルツ」なんて、2台ピヤノ演奏会のアンコールにお薦めみたい。これについては改めて報告することにしよう。


...... 2004年 7月 21日 の日記 ......
■[ NO. 303 ]
摂氏39.1度
晴れ。時々曇り。

朝の予報では「都心では39度まで上がります」というので、ひょっとして40度突破を期待していたのだが、残念ながら39.1度までしか上がらなかった。

もっとも39.1度と言っても、御存知のように、地面が芝生で、日陰で風通しが良く、地上から1.5mのところで計測したものだ。例えて言えば、爽やかな木陰の中で測ったような気温なのである。当然、アスファルトの上の炎天下では、5度くらい高いわけだ。ぱぐたちが這っている地面など、もっと高いのである。

外で働く方には申し訳ないが、こうした夏も素敵ではないだろうか。拙者はそう思う。ただし、今日は日も陰っていたし、抜けるような青空ではなかった。ただ暑いだけで、とても恋する気分にはなれない。




昨日に続いて、またまた楽譜が届いた。今度は、先ほど本サイトでも紹介した「di-arezzo」からである。以前、いくつかのサイトやお店に聞いてみて、「絶版ですので注文はお受けできません」と言われたものがほとんどだ。

内訳は

・フローラン・シュミット:3つの狂詩曲(2台)
・フローラン・シュミット:詩編47番(連弾と合唱)
・フローラン・シュミット:デヴァダシ舞曲(連弾と合唱)
・ショーソン:ピヤノ四重奏曲(連弾)

である。

もう1冊、ショーソン「交響曲」の連弾を頼んだのだが、未入荷で先送りになった。これは、どれも面白そう。「でもさ、こんなの集めてどうするの?」という妻の意見も、何となく分かる楽譜ではある。でも、見ているだけでも楽しいし、詩編47番など手持ちのCDを聴きながら参照するのもいいと思う。

そうそう、これを書いている最中にdi-arezzoのスタッフ「Muto」さんから、とても丁寧なメールが入った。拙者、長年オンライン・ショッピングをやっているが、ここまで親切なサイトは始めてである。


...... 2004年 7月 22日 の日記 ......
■[ NO. 304 ]
摂氏33度
晴れ。

今日の都心の気温は、摂氏33度である。人間の感覚とはいい加減なもので、この炎天下でも心地よく感じる。昨日、一昨日の猛烈な暑さに、あっという間に身体が適応したみたいである。おまけに夜は急速に涼しくなった。

ただ、身体は、かなりのダメージを受けているようだ。何とか仕事を終えて、午前2時に沈没。もう、音楽を聴く気にも、楽譜を見る気にもなれない。このところの疲労の溜まり具合はちょっと(かなり)堪える。


...... 2004年 7月 23日 の日記 ......
■[ NO. 305 ]
ショスタコーヴィチ
晴れ。

もう、最高気温が何度になったのか、興味はない。また感覚的な暑さがぶり返してきた。遂に、ジャケット、ネクタイ不着用で出勤する。まあ、今日は人に会うわけではないのでいいか。それにしても暑さが堪える。おまけに眠い。出勤する電車の中で思い切り寝た。起きたら、汗びっしょりである。




「これ、無茶苦茶面白いよ。合わせてみようよ」、と妻。何のことかと言えば、先日連弾庵に到着した、「ショスタコーヴィチ:交響曲第5番」の連弾譜だ。「ちょっと難しいけど、これはイケる。特に第4楽章なんか、カッコイイよ」。こうしたものを弾いたら、何だかとても「熱く」なりそうである。


...... 2004年 7月 24日 の日記 ......
■[ NO. 306 ]
何だかなぁ
晴れ

ここ3週間ちょっと、公私ともに激烈な毎日が続いていて、それがいったん収束して、ようやくほっとした。10年使った小銭入れが破損を始めたので、行きつけのブティックに代替品を買いに行く。そして妻に対して半年間の慰労を込めて、ささやかな食事会。

今日は夏らしい1日。連弾庵近辺でも、盛んに蝉が鳴き出した。蝉が鳴かないと、やっぱり本州の夏じゃない。昼間はアブラゼミやミンミンゼミ、夕方にはヒグラシが鳴いている。温度や風といった体感、夏空と入道雲といった視覚、そして蝉の声という聴覚の3つが揃わないと、どうも「夏が来たという感覚になれないから不思議だ。

でも、こうした感覚が持てるのは、幸せなことだ。視覚障害の方には夏空や入道雲を眼にするのは難しいし、聴覚障害の方は蝉の声を楽しむことはできないだろう。それにいろんな理由で外に出ることができず、夏風を体感することもできない方もいらっしゃるだろう。そうした方も、さまざまな手段で季節を感じていらっしゃるだろうけど、5感全部で感じることができるのは、とても贅沢なことだと思う。

ただ、「音」から言えば、金魚売りやアイスキャンディ売りのなど、「夏の物売り」の声が聞こえなくなったのは淋しい。遠い昔、聴いたような記憶がある。それともあれは幻だったのか。




とんでもない話を聞いた。

拙者、このところフランスの楽譜販売サイト「di-arezzo」の日本語担当、Mutoさんとメールのやり取りをしている。Mutoさん、とても親切で本当に親身になって楽譜探しを手伝って下さる。

di-arezzo」に楽譜を注文した中で、Salabertが出している「ショーソン:交響曲」の作曲者自編連弾楽譜の入荷が遅れていることは、以前こちらでも書いた。そして拙者はMutoさんに「もし絶版なら、Salabertにコピー譜を作ってもらえるように頼んで頂けないか」とお願いした。Mutoさんは快諾して下さり、Salabertにプッシュして下さった。

そうしたら、Salabertめ、とんでもない返答をしてきた。

Salabert側で「絶版」にしていない限り、コピー譜の作成はできない。それは在庫があろうがなかろうが関係ない。在庫がなくても、いつ印刷するかは分からない。そして絶版にしたかどうかはSalabert側が決めることだ。ショーソン:交響曲の連弾版はSalabertとしては絶版にした覚えはない。従って在庫がなくてもコピー譜の作成はできない。

何だかメチャメチャな話である。これまでドイツやオーストリアのいくつもの出版社とお付き合いしてきたが、彼らは「在庫がなくて、いつ印刷するかは分からない」状態を絶版として、きちんとコピー譜を作って下さってきた。もちろん当方も必要な対価はお支払いするが、こうした対応は出版社として当たり前のことである。特に楽譜の出版社としては。

それが何だ、Salabert。この回答は。楽譜出版社としての誇りはないのだろうか。音楽文化の担い手としての誇りは。まったく頭に来る出版社である。di-arezzoのMutoさんには、大変なご迷惑をかけてしまった。申し訳ない次第である。

そうそう、以前フランスの別の出版社に、アーンの連弾曲のコピー譜作成を頼んだことがあったっけ。どこだったか忘れたが、連中「うちらに原本はないので、コピー譜など作成できない。欲しければフランス国立図書館に依頼せよ」という返答を寄こした。仕方ないので連中から教わったフランス国立図書館にメールを書いて、コピー譜作成を依頼した。そうしたら、いろんな理由をつけてきて「ダメある」。

フランスの出版社って、みんなこうなのかしら?


...... 2004年 7月 25日 の日記 ......
■[ NO. 307 ]
(無題)
晴れ。

バテる。昨夜はよく眠れかなったせいか、体調が非常によろしくない。どうも、寝不足と暑さとのダブルパンチで、からだに変調をきたしたようだ。身動きなどしたくない。本も読みたくない。ピヤノも弾きたくない、音楽聴くなんてとんでもない。食事以外は、暗い部屋でじっとしていた。主治医から処方された薬を限界まで飲み、ドリンク剤も合わせて飲んで、何とか元気を出そうとする。

午後遅くなって、妻が「ショッピング・モールに大きなペットショップができたんだよ。行ってみない?」というので、重いからだを起こして、気晴らしに出るとする。

たしかに大きなペットショップだ。いろんな生き物を取り扱っている。でもそれ自体はあまり面白くなかった。面白かったのは、ペット連れのお客が多く、フレンチブルドッグに2頭も会ってしまった。拙者、この手のワンワンは大好きである。飼い主さんに断って、しばらく遊ばせて頂いた。いいぞぉ、フレンチブルドッグ。こんなときに限って、デジタルカメラを家に置いてくる。良い写真が撮れたのに。まったく拙者は抜けている。

ただ、ショッピング・モールはあまりの人出で、歩いているうちに気分が悪くなった。ちょっとお買い物をして、早々に退散である。帰宅して食事。そしてまた横になる。ようやく「今週の1枚」だけ更新して、完全に沈没だ。もう、動きが取れなかった。


...... 2004年 7月 26日 の日記 ......
■[ NO. 308 ]
ゲルギエフ初体験
晴れ。

出勤しなければならないのに、立ち上がれない。猛烈に辛い。しかし行かねばならぬ。今日中に提出しなければならない連載エッセイの原稿を書かなければならないし、拙者がデスクをやってる原稿の取りまとめもしなければならない。おまけに夜はコンサートが入っているので、できるだけ早めに出社して、早い時間に完全に仕事を終えなければならない。処方されている薬を、またまた限界まで飲んで出動だ。

さて今日のコンサート。ゲルギエフ指揮の東京都交響楽団。曲目は全部ストラヴィンスキーだ。

この演奏会に出向いたのには訳がある。妻がある日「ゲルギエフって聴いてみたいよ」という。「今をときめくカリスマさんなんだろ?」。ゲルギエフなら11月にウイーンフィルと一緒に来る。ただ、その時点ではウイーンフィルのチケットが確実に購入できるかどうか分からなかった。ならば手近なコンサートで・・・と探したら、今日のがあった。

もう1つの理由。曲目に「バレエ・結婚」が含まれていたのだ。御存知のように、4台のピヤノが大活躍する曲である。お祭りのお遊びを除けば、正規の編成で4台ピヤノの合奏を聴くことができるなんて、そうそうあるものではない。拙者としてはどうしても聴きたかった。

と言うわけで、理由は異なるが夫婦で利害が一致し、サントリーホールまで出かけた訳だ。

例によって演奏会の感想を結論から言おう。ゲルギエフ氏。噂にたがわぬ敏腕指揮者だ。普通のおじさまなのだが、指揮台に上がるとステージの雰囲気がガラリと変わるから凄い。そして、もの凄い統率力だ。演奏者の力を120%まで引き出して、壮絶な演奏を聴かせる。これには大変に驚いた。プログラムは以下の通り。

・詩編交響曲
・結婚
・春の祭典

詩編交響曲だが、正直言ってあまり好きな作品ではない。それでもゲルギエフ氏の手に掛かると、面白く聞こえてしまうから不思議である。合唱と2台のピヤノ(野平一郎氏・長尾洋史氏)が光っていた。残念ながら、管弦楽、特に金管が生彩を欠いていた。それでも面白く聴けたのだからいいだろう。

結婚。もうこれは圧巻だ。4台のピヤノ(先の2名に児玉桃氏、木村かをり氏が加わる)が素晴らしい! そしてロシア人4人の歌手達の表情豊かな歌唱。ただ、どうも打楽器群がいまひとつ。ピヤノ軍団と声楽陣があまりに凄かったので、霞んでしまったと言った方が適切だ。打楽器を除けば、大変な名演である。ただし妻は「期待してたほど、面白い作品ではなかったよ。聴いていて気分が悪くなった。ピヤノにしても打楽器の延長じゃん。ちっとも華麗でない」。夫婦で評価は真っ二つになる。

春の祭典。これは夫婦一致して「名演」。今日のプログラムでは、この曲で初めてフルオーケストラがステージに揃うことになる。「序奏」のあたりでは、ちょっと生彩を欠き「おやっ?」と思わせるような出だしだったが、「春の兆しと乙女達の踊り」あたりからエンジン全開。あとはもう圧倒的な音の饗宴だ。アンサンブルや音色、楽器同士のバランスにはやや問題点があったが、それを超える迫力。ゲルギエフ氏はこのオーケストラの実力を限界まで引き出すことに成功していた。恐ろしいまでの統率力と言えよう。「東京都交響楽団でここまでやったのだから、秋のウイーンフィルが楽しみだね。しかしこの楽団、よくもここまでの演奏ができたよ。これはゲルギエフのカリスマ性だね」(妻)。

春の祭典が終わって、一瞬の静寂の後、猛烈な拍手と大歓声。ゲルギエフ氏も楽員も嬉しそう。拙者も最前列指揮台すぐ裏(に座っていた)で、大騒ぎ。何度も呼び出されるゲルギエフ氏。カーテンコールは20分に及ぶ。最後、楽員が引き上げても拍手は止まらず。そこにゲルギエフ氏登場で、会場はスタンディングで大歓声。

終わりよければ、すべてよし。こうしたコンサート、幸せだね。「しかし1万7000円は高いぞ」(妻)。


...... 2004年 7月 27日 の日記 ......
■[ NO. 309 ]
お家で「革命」
晴れ。時々曇り。

相変わらず体調不良だが、取材の約束があるため出勤せねばならぬ。おまけにからだも頭も、全然目覚めない。苦しかった。ただ、取材先でお世話になっているOさんが、昼食に誘ってくださり、楽しいお喋りができたのが救いである。取材も面白かったし、Oさんとのお喋りもよかった。これがなければ、1日中オフィスで暗く辛い時間を過ごすことになってしまったはずだ。感謝である。




先日書きそびれたのだが、入手した「ショスタコーヴィチ:交響曲第5番」を弾いてみた。弾くといっても弾き手の片方は拙者なので、たかが知れているが。拙者が弾く前、楽譜が届いた翌日に、妻がCD(もちろん管弦楽である)を聴きながら楽譜を参照して「これは面白い!」。今度は自分がピアノに向かって弾いてみたら「ワクワクするほど面白いし、カッコイイ」。というわけで、先週土曜日、初見の苦手な拙者を巻き込んで、「お家で革命」と相成った。

ちょっとゆっくり目のテンポで、第1楽章から始めてみる。もちろん拙者のことだから、あちこち音は外すのだけど、妻が言うとおりになかなか面白い。これは楽しめる。完全に「管弦楽の骸骨」なので、曲の構造が手に取るように分かるのも愉快だ。それに曲を知っているためか、合わせも全然難しくない。展開部の途中のプリモの指が初見では回らなくなる所まで弾いてみた。これは遊べる。

連弾としては大変出来の良い編曲だ。ピヤノ書法としても無理がない。ただし、きちんとしたステージに乗せるには、相当の工夫が必要だろう。何せ第1楽章など、途中までものすごく音が薄いからだ。あの迫力ある管弦楽を聞き慣れた耳に面白く聴かせようとすると、結構大変である。

妻が「第4楽章もカッコイイよ」というので、指が回らないのを承知で挑戦。これがまた面白かった。拙者、音は外すし、指は回りきらないけど、それでも楽しい。この楽章、上手なデュオがうまく工夫すれば、ステージでも結構イケルかも知れない。また次の休日に、遊んでみようと思う。

ちなみに楽譜の後ろに詳細な解説が付いているが、面倒くさいのでまだ読んでいない。後でしっかり読もうと思う。

皆さんも挑戦してみてはいかがであろう。連弾・革命。


...... 2004年 7月 28日 の日記 ......
■[ NO. 310 ]
楽譜を整理
晴れ。時々曇り。

台風が近づいている・・・といっても変な台風で、小笠原の南東側で出来たのに、進路をどんどん西よりにしている。普通だと進路は北よりになるのだが、太平洋高気圧の影響がものすごく強いので、どんどん西の方に押されて行く。というわけだ。比較的珍しいケースで、年に何度もあるものではない。何年かに一度と言った方がいいかも知れない。

おかげで、関東南部は、ちょびっとしか雨が降りそうにない。雨ばかり降るのも困るが、カラカラなのも、やっぱり困る。身近なところでは砂埃が立ったり公園の植物が元気をなくしたりする。もう少し広い視点で見れば「水不足」だ。新潟や福井では、水害で大きな被害が出たが、首都圏とその周囲で心配されるのは水不足。利根川水系を初めとするダムは、貯水率が9割くらい。9割を切ったところもあると聞く。少しは雨が欲しいな・・・と思う拙者だ。

久々で、楽譜を整理・・・といっても「楽譜リスト」に登録しただけだが・・・をした。20曲くらいあり、登録に1時間以上もかかってしまった。購入したり人から頂いたりしたら、すぐにリストに登録すれば問題ないのに、どうも「せっぱ詰まらないとやらない」という性格のため、まとめてすることになる。この性格は治りそうもないな。

購入したときからバラバラに等しい状態だったシャミナードの連弾曲。これはちゃんと修理しないと楽譜棚にも収納できない。ライネケッケ編曲の「未完成交響曲」。これもあと一歩で崩壊だ(まだ全部のページがくっついているけど)。どこか、ちゃんとした製本屋さんに出した方がいいのかも知れない。

そうそう、楽譜棚そのものも整理しなければ。今のままでは収納の限界に達しているので、もっとよく整理してスペースを作らなければ。先日、三善晃先生の仕事場に伺ったら、数多くの楽譜がそれは素晴らしく整理されてあった。これは美しかった。時折伺う松永晴紀先生の仕事場もそうだ。楽譜棚がビシっとしている。このぐうたらな拙者があそこまで出来るとは思わないけど、少しは何とかしなければならないな・・・と反省することしきりだ。

仕事ができる人は、仕事場もしっかりしているんだなぁ・・・。・・・沈没。


...... 2004年 7月 29日 の日記 ......
■[ NO. 311 ]
熱気
雨。ときどき曇り、一時晴れ。

台風の影響で、時折猛烈な雨が降る。そして雨が上がると、もの凄い湿気と熱気だ。からだが参る。

お弁当を買いに行こうとしてオフィスの近所をフラフラしていたら、同じ社で働いている中国人・Y女史と会った。「暑いねぇ。もうバテるよ」、と言ったら、上海と東京を往復している彼女は笑いながら、「上海なんて、こんなものではないですよ。毎日摂氏39度くらいになって、おまけに蒸しているのだから。東京なんて楽なものです」。そのような暑いところへ行ったら、拙者など動けなくなってしまうであろう。パグ犬など暑さで死んでしまう。もっとも上海にパグ犬がいるのかどうか、分からないけれど。

お弁当を買ってオフィスに戻ってきたら、今度はK編集委員から声をかけられた。「来週、俺は休暇を取るから、連載も休載扱いにしてくれ」。「どちらか行かれるのですか?」と拙者。「ベルギーとオランダに10日ばかり行って来る。永年勤続休暇が余っているのでね」。いいなぁ、西欧か。今年の西欧圏は涼しい。7月に入ってもパリやブリュッセルなど、最高気温が摂氏20度そこそこだ。そんな気候なら、観光も楽しいだろうな。暑さに弱い、どこぞのどなたかをお連れしても「暑いぞ」と文句は言われまい。

ああ、涼しい所へ行きたいなぁ…と思いながら、午前1時過ぎまで仕事をして沈没だ。


...... 2004年 7月 30日 の日記 ......
■[ NO. 312 ]
連弾・我が祖国
晴れ。ただし、連弾庵の周辺では、時折猛烈な雨。

「涼しいところへ行きたい。奥日光など最適だな」と妻が言う。そりゃ行きたいけど、パグたちはどうする。以前なら車に同乗させて、あちこち連れて行けたが、パグ母さんがめっきり弱ってきているので、もう無理だ。あかねも長時間のドライブに耐えられる状態ではない。

パグたちを連れて清里の貸別荘に行ったり、元上司が持っている軽井沢の別荘に長逗留(拙者だけ東京に帰ってきたが)させて頂いたり…良いときもあったな。今は、パグたちに無理をさせないよう、エアコンの効いた室内で過ごさせるのが精一杯だ。パグたちにも長生きしてもらいたいし。

夜、時間があったので先日購入した「スメタナ:我が祖国」(連弾版)のCDを聴く。去年、Supraphonから出た新しい録音だ。音の粒立ちがとても綺麗である。近々「今週の1枚」で紹介することにしよう。

この「我が祖国」の連弾版だが、「弾きたい」と仰る方がたくさんいらっしゃる。ところが残念なことに、現在は絶版だ。中古市場にも滅多に出ない。拙者のところにある「モルダウ」は、アムステルダムの中古市場に出ていたのをある方が見つけ、「相当の対価」を支払って入手したものを、著作権が切れているためコピーをして下さったものである。

実は、東京都内のある音楽大学の図書館に連弾「我が祖国」の楽譜が全部揃っていた。この曲集は、1冊で出ているのではなく、各曲が分冊になっている。ところがだ。その図書館へ楽譜を借りに行った方曰く「モルダウだけ、誰かが勝手に持ち出して、長いこと行方不明になっているとのこと」。まったく悪いことをする奴がいる。蔵書を盗むこと自体もってのほかなのだが、よりによってみんなが見たいと思うものを持ち出すなんて。

ちなみに国立情報学研究所の「Webcat」(これは便利)で検索したところ、日本国内の大学・短大の図書館では、「モルダウ」がなくなった音楽大学以外に、連弾「我が祖国」の蔵書はない(もしかしたら探し方が悪くて見つけられないだけなのかも知れないが)。どちらの図書館かで、この楽譜、お持ちではないだろうか? もし「蔵書にあるよ」というところがあったら、ご一報頂きたい。

なお、手元にある楽譜は「FR.A.Urbanek」というチェコにあった出版社のものだが、この版元、今はない。ただし、Supraphonから出た新しいCDには、「使用楽譜」として「K.J.Barvitius」というプラハにある(らしい)出版社名が記載されていた。散々調べたのだが、この出版社については何も分からなかった。この出版社に関しての情報をお持ちの方がいらしたら、是非ともご連絡頂きたい。よろしくお願いいたします。


...... 2004年 7月 31日 の日記 ......
■[ NO. 313 ]
花火
晴れ。

夏の空である。夏の雲である。空気も夏だ。ようやく夏らしい夏がやってきた。拙者は大喜びである。こんな日に外出したら気持ち良いだろう。が、暑さに弱い人がいるので外出は難しい。

今日は隅田川の花火大会である。拙者、1度も行ったことがない。いつだったか勤務の帰り、JR総武線に乗っていて、たまたま花火大会に遭遇したことがある。隅田川の上を通過するとき、わざとゆっくり電車を走らせてくれ、乗客はちょっとの間だけ花火を楽しむことができた。急いでいる人には申し訳なかったが、JRも粋なことをやるな、と思った記憶がある。

拙者の取材先で3件ほど、この花火が見える「特等席」を持っている企業がある。いつも「花火大会の日、最上階を開放しませんか?」と提案しようと思っているのだが、ついつい忘れてしまうのだ。ここなら人混みに咽せず花火が見物できるのに。ま、世の中、そうは甘くないか。

拙者、何と言ってもあの人混みが苦手で、しばらく花火大会など行っていない。拙者、花火は大好きなのだけどね。