...... 2004年 6月 01日 の日記 ......
■[ NO. 253 ]
投資と価値観
雨。のち曇り。

昨日の猛暑がウソのよう。ちょっと湿っぽいが、気温は上がらない。こんな日に「衣替え」をする人たちは気の毒である。街で見かけた女学生など、夏服の上にセーターを羽織っている。拙者などは、夏服だがジャケット着用なので、それほど涼しくはない。むしろ暑いくらいだ。

今日は準夜勤明けなので、比較的早めに帰宅。21時前には連弾庵に戻る。本当は「今週の1枚」をアップしたかったのだが、疲労が激しいので止めておく。疲労しているときにこうしたものを書くと、往々にして間違えが出るものだ。もっとも最近はいつも疲労しているので、いつ書いても同じようなものなのだが。とにかく今日は止めておく。書こうとしたのがケックランの連弾曲と2台ピヤノ曲なので、ある程度「文章力」でコラムを持たせなければならない。今日はちょっとそこまでの気力はない。このコラムを楽しみにしていて下さる方がいらっしゃるのだが、申し訳ない次第である。

この11月、ウイーン・フィルとベルリン・フィルが、相次いで来日する。値段を見るとS席が、ウイーン・フィルで3万1000円、ベルリン・フィルに至っては3万6000円もする。人それぞれの価値観にもよるが、ビンボな拙者にとっては、とてつもなく高く感じられる。実際、金額だけを見ると本当に高い。

しかし、だ。発想を変えれば、「このオーケストラを、どうしても聴きたい」という人にとっては安いのかもしれない。ウイーン・フィルは現地でもチケットがほとんど取れないので話を横においておくが、ベルリン・フィルなら、余程のことがない限り(席さえ選ばなければ)現地の演奏会のチケットは比較的容易に入手できる。今は便利になって「ベルリン・フィルのWebサイト」で、オンラインで簡単にチケットが購入できるのだ。値段は高くても1万円弱といったところ。

「何だ、日本公演は3倍以上の値段ではないか」とのご意見も出よう。拙者、これが良いことだとは決して思っていない。折角ならば、安いにこしたことはない。

ただ、個人でベルリンまで行って、ベルリン・フィルを聴くことを考えてみよう。運良く1万円のチケットが買えたとする。ベルリンまで往復で13〜15万円だ。演奏会は夜なので、単純に行って帰るだけでも最低2泊はしなければならない。1泊2万円(ルームチャージ)として4万円だ。ご飯は適当に食べるとしても2泊3日で1万円もあれば十分。合計するとだいたい1人、20万円ちょっと。それなら、日本に来たときに3万6000円で聴いた方が安上がりになってしまう。ただし、「どうしても聴きたい」という条件だけど。

拙者は3万6000円でも行きたいと思う。だいたい、在京のオーケストラだって、1回1万円のチケットなんてざらだ。毎月のように、在京オケの演奏会に行ってる人など、大勢いる。こういう言い方をすると変に誤解や曲解する人もいるが、在京オケを4回行くことができるなら、ベルリン・フィルを1回行った方がいいと考えているのが拙者だ。拙者なんて、年に何回もコンサートに行かない。行くときは何故か連続して行くが、行かないときには1年くらい、まったく行かなかったりする。あれこれ考えると、資源の集中投資とすれば、別に3万6000円を払ってもいいと思うのだ。もっとも、運良くチケットが買えればの話だが。

ちなみに妻は、全然別の価値観を持っていて、ベルリン・フィルに3万6000円払うなら、温泉旅行の方がいいと言う。人、それぞれである。


...... 2004年 6月 02日 の日記 ......
■[ NO. 254 ]
取材する側、される側
晴れ。ときどき曇り。

ジャーナリストというのは、取材して記事を執筆したり映像を残したりするのが仕事である。しかし時として立場が逆転し、「取材する側」が「取材される側」になることがある。大抵の場合、あまり良くない状況だ。それにしても、場所や場面は全く違うけど、相次いで「取材する側」が「取材される側」になってしまった事件が起きた。しかも「取材する側」の端くれとしては、非常に悲しい事件である。

ひとつは、イラクに入っていたカメラマン、橋田信介さんが何者かの襲撃に遭い、甥の小川さんとともに命を落とされたことだ。橋田さんと直接の面識はないが、大変に優秀なジャーナリストで、数多くの戦場取材、それも優れた映像と記事で知られている。危険地域に入る時には、命を落とす覚悟をしながらも、慎重に慎重を期して取材に当たられていたという。橋田さんは生前、取材中にポルポト政権に捕まってしまったときのことを「とても恥ずかしいこと」と、どちらかで語っていらした。そう、ジャーナリストとして、危険地域で危ない目に遭ってしまったことを、「自分のミス」として恥じていらしたのだ。その姿勢、分野が違ってもすべてのジャーナリストにとってお手本と言えよう。「何が自分にとっての失敗であったのか」を冷静に分析し、それを恥ずかしいと感じる謙虚なこころをお持ちだったからだ。これは、なかなかできることではない。

これほどまでに慎重だった橋田さんも、予想外とも言える事態で亡くなられてしまった。橋田さんの取材姿勢は、とても立派だったと思う。そして、ご家族には「こういう仕事だから覚悟しておけ」と常々仰っていたそうだ。橋田さんは、イラクで拘束されて物議をかもした、どこかの「飛び込み(自称)ジャーナリスト」と違って、しっかりした実績を上げられてきた方だ。そうした方が亡くなられて、とても悲しい。

しかも記者会見での、ご家族の立ち居振る舞いが、本当に立派だった。ご夫人は、「夫は戦争をずっと取材してきました。わたしは、いつでも覚悟はしていたつもりです。本人も覚悟はできていたと思います」と、淡々と、そしてしっかりとメディアに対して語っていた。自分の夫が殺害されたというのに、ここまで毅然としたメディア対応ができるなんて、家族としては相当のものである。会見の中継を見ていて、こちらが泪をこぼしそうになったくらいである。橋田さんご本人も立派だったけど、ご家族も立派だった。

もう1つは、長崎県佐世保市で起こった、「小学生、学校内殺人事件」である。被害者のお父様・御手洗恭二さんは、毎日新聞佐世保支局長。もし、被害者がご自身のお嬢さんでなければ、取材の陣頭指揮を執らなければならない。それが一転して、「取材される側」に立たされてしまった。

毎日新聞は、各記事が原則署名である。ところが、この事件に関しては、すべて無署名になっている。どなたがお書きになったのだろうか? 御手洗恭二さん、本来ならばご自身で取材して記事を書かれなければならない、あるいはデスクを担当しなければならない立場。それなのに、被害者は自分のお嬢さん。二重の意味で、どれほどお辛かったことだろう。そのご心境は察するに余りある。

御手洗さんの会見中継を見たが、愛するお嬢さんを殺害された立場ながら、気丈に振る舞われていらした。その表情の中に、「取材する側」と「される側」の立場が同居し、とても複雑な顔色を見たのは、わたしだけだったろうか? 見ていて、とても悲しくなった。本当にお辛かったことだろう。御手洗さんを「取材」する側には、彼の同僚の記者もいたはずだ。その記者だって、本当に辛かっただろう。心の底から傷ついた同僚に対して、質問を浴びせなければならなかったのだから。

・・・「取材する側」の端くれとして、こうした話は、とても悲しい。亡くなられた方の、ご冥福を祈るばかりである。


...... 2004年 6月 03日 の日記 ......
■[ NO. 255 ]
沈没
晴れ。ときどき曇り。

早めに帰宅したのに、お風呂上がりにちょっと日本酒を呑んだら、猛烈な眠気。疲労もどっと出て、そのまま沈没。サイトの更新をしようと思っていたのだが、明日に回す。疲れた。


...... 2004年 6月 04日 の日記 ......
■[ NO. 256 ]
音、そして睡魔
晴れ。気持ちよい気候。

昨夜、早めに沈没してしまったのに、夜中に目が覚めて、なかなか眠れず。結局、明け方になってようやく眠った。

眠れなかったのには、ちょっとした訳がある。家の中で、妙な音がするのだ。最初は「ドン」と何かが“家にぶつかる”ような音だった。最近、連弾庵の近所では、家の鍵を破壊して夜半過ぎから明け方にかけて侵入する強盗が頻発している。もしや、と思って見回りに出たのだが、家の中も、家の周囲も「しーん」と静まり返って、何事もない。実は、この「ドン」は2回目なのである。安心して布団の中に横になると、今度はしばらくして、やはり家の中(というより拙者の部屋のごく近傍)で「ピシッ」と何かが剪断破壊するような音がして・・・。変な音は、いろいろ続き、なかなか眠れない。音が止んだのが午前4時近くだ。何だか分からないが、とても迷惑である。誰だか知らぬが、この忙しくて夜くらい静かに眠りたいときに騒いでほしくない。

こんなことは、この新しい連弾庵に引っ越してきてから初めてだ。おかげで今日は1日中眠くてたまらない。おまけに激しい頭痛もする。オフィスで鎮痛剤を飲んだら、猛烈な睡魔が襲ってきた。必死で睡魔と戦いながらの仕事である。ふぅ・・・。

・・・例によって深夜まで仕事。それが終わったら、サイトの更新だ。

頂いていた演奏会の情報をアップし、楽譜の出版情報も更新した。出版情報を更新する際には、出版社かディーラのサイトに行くことがほとんど。これが「悪魔のささやき」となる。今夜もそうだった。

本当は、ちょこっと買い物をするだけのつもりが、疲れていたこともあって正常な判断力を失い、「ええい、ままよ」と、いろんなものを「買い物かご」に入れて、「はい、お勘定〜!」。で、気が付いたら128ポンドも使ってしまっていた。アルバイト料が出たところなので、ま、いいか。

しかし、このところ楽譜の整理を怠っているため、収拾がつかなくなってきている。早めにデータを登録しないと・・・。

・・・と言うわけで、深夜3時半に沈没である。ああ、明日も仕事だ・・・。


...... 2004年 6月 05日 の日記 ......
■[ NO. 257 ]
不思議な実
晴れ。とても爽やか。

連弾庵の「妙な物音」は、1日だけだったらしい。昨夜は何の異常もなく、比較的安らかに眠れた。

きれいに晴れて爽やかだが、午後から気温が上がる。このお天気も今日一杯。明日からは雨だそうだ。

「糸瓜の実が出来たよ〜」。妻が嬉しそうである。連弾庵のテラスに日陰を作ろうと、妻が糸瓜栽培に精を出している。1階のテラスから2階のテラスにネットを張り、ここに糸瓜を這わせようというのだ。夏が来て、葉っぱがテラスを覆い、大きな糸瓜がぶら下がったら、それは楽しいだろうな。

で、その「糸瓜の実」とやらを見せてもらったのだが、どう見ても胡瓜である。立派な胡瓜だ。しかし妻は糸瓜だと主張する。「ホームセンターで“糸瓜の苗”って言って売ってたんだよ」。しかし、どうも糸瓜としては、蔓の伸びが遅い。おまけに胡瓜みたいな実だ。こうなったら「実」を食べて、確かめてみるしかない。

糸瓜を食べても大丈夫かって? 大丈夫。沖縄では、若い糸瓜の実をチャンプルー(炒め物)に入れて食べる。これはなかなかいけるのだ。

さて、「謎の実」を包丁で切って、恐る恐る口にしてみる。何と、正真正銘の胡瓜だった。それもとても旨い。妻も「実」を囓ってみて、「あ、本当だ、胡瓜だぁ!」。連弾庵産の胡瓜、囓る前に写真を撮っておけばよかった。失敗である。

「しかし、どうして糸瓜の蔓に胡瓜がなるのかなぁ?」。妻は不思議がっているが、大方ホームセンターで糸瓜の苗の中に、胡瓜の苗が混じっていたのであろう。この胡瓜、いくつも「実」を付けている。これで何本か新鮮で完全無農薬の胡瓜が収穫できそうだ。ただし、妻の期待した「テラスを覆う葉っぱ」は実現しそうにない。

暑くてかなわん。夏の午後の散歩は嫌じゃっ!



...... 2004年 6月 06日 の日記 ......
■[ NO. 258 ]
想い出、そして人の輪
雨。

「ぱぐ母さん」の調子が思わしくない。この前の金曜日、散歩の途中で腰が立たなくなり、動けなくなった。妻は「ぱぐ母さん」を抱いて、家まで戻ってきたとのこと。急いでかかりつけの動物病院に駆け込んだ。

甘えん坊の「ぱぐ母さん」(お父さんの顔も、お母さんの顔も知らない。かずみのことが大好きなワンワンである)、完全によたり始めた。今日も辛そうだったので、午前中に動物病院に連れていく。

レーザー治療は、こそばゆいぜっ!


治療をすると元気になるのだが、何だか「元気度」が落ちてきているようだ。もう、心配でたまらない。長生きしてほしいな。

夕方からは「ポロニア・ネットワーク」の演奏会。これにはどうしても出席しなければならない。理事長の川田さんからご招待状を頂いていたし、拙者が友人の「のりこちゃん」と「よしこちゃん」に渡した楽譜を音にして下さるというのだから。

渡した楽譜は、ボルコムの「想い出」。今でこそ、日本でも有名になったが、拙者がこの楽譜を入手した頃は、国内では誰も紹介していなかった。アカデミアなど日本の楽譜ディーラはもちろん、オンラインの楽譜書店でも扱っていなかったのだ。

この楽譜を購入して送って下さったのは、ニューヨーク在住の造形アーティスト「豊永良」さん。メールでお喋りをしていたら「ああ、その楽譜なら出たばかりですよ。購入して送ってあげましょう」とおっしゃって、早々に購入してエアメールで送って下さったのだ。

この楽譜、拙者の研究用だけではもったいないな・・・と思っていたときに知り合ったのが、のりこちゃんとよしこちゃんのデュオ。早速「これ、弾いてみませんか?」と紹介した拙者であった。

それから、長い月日が流れた。

今年の始め、のりこちゃんからメールを頂いた。「あの、ボルコム、弾きます」。そして3月、「仕上げをしたいので、松永晴紀先生のレッスンを受けたいのですが」。松永先生は大変にお忙しい方だ。しかし、このデュオにならば、そしてこの曲を弾いて下さるなら是非ともご紹介しよう・・・と思った拙者だ。

松永先生は、快くレッスンを引き受けて下さった。

そして今日。のりこちゃんとよしこちゃんは、立派にボルコムを演奏して下さった。大変によくまとまった演奏で。「のりこちゃんとよしこちゃん、じょうずに纏めていたね」(妻)。とても嬉しかった拙者である。

のりこちゃん、よしこちゃん、ボルコム、素敵だったよ。そして、この2人を上手にご指導された松永先生、感謝します。

ニューヨークの豊永さんと拙者、のりこちゃん、よしこちゃん、演奏会を主催されたポロニアの川田さん、そして松永先生。1つの曲を巡って、いろんな方が輪になった。とても幸せな拙者である。

豊永さん、あなたの下さった楽譜は、とても素敵な音になりましたよ。

みなさん、ありがとうございました。


...... 2004年 6月 07日 の日記 ......
■[ NO. 259 ]
疲労で沈没
雨。夜になって、ときどき晴れ。

疲労が感じられ、早めにオフィスを辞す。帰宅して比較的早い時刻にパソコンに向かうことができたので、まず、返信を出そうとしていたメールを一気に書く。それでも、書かなければならない(あるいは書きたい)方、すべてにメッセージを送ることができなかった。今日、メッセージを差し上げられなかった方、申し訳ない。

溜まっていたサイトの更新もする。先週、更新ができなかった「ケックラン」のピヤノ・デュオについて「今週の1枚」を執筆。今回はちょっと勉強不足だったな。そこまでやって、力尽きた。沈没である。

エアコンをかけてもらって、涼しいぞ!
夏のわしらに、エアコンは必需品じゃ!



...... 2004年 6月 08日 の日記 ......
■[ NO. 260 ]
変奏曲とフーガ
曇り。時々晴れ。夜になって雨。

疲れた。午前1時に、ようやく仕事が終わる。

帰宅したら、「amazon.de」に注文していたCDの一部が届いた。インドネシア出身の若い姉妹デュオ「Sonja & Shcnti Sungkono」という人たちが録音した2台ピヤノもののCDが1枚。これは、ショスタコーヴィチの「2台のピヤノのための協奏曲」など、「2台名曲物」ばかりが入っている。この演奏者は全然知らなかったのだが、松永晴紀先生から「面白いから、ちょっと聴いてご覧なさい」と勧められて買ってみた。

もう1枚、「Andreas Grau & Gotz Schumacher」という、若いドイツ人の兄ちゃん2人が弾いた「Variations & Fugues」というCD。モーツアルト、ベートーヴェン、レーガーの作品が入っている。モーツアルトはKv.426の「フーガ」、ベートーヴェンは作品134の「大フーガ」の連弾版だ。レーガーは「モーツアルトの主題による変奏曲とフーガ」「ベートーヴェンの主題による変奏曲とフーガ」。つまりこのCDは、タイトル通り「変奏曲とフーガ」を集め、しかもモーツアルト、ベートーヴェン、レーガーで上手に閉じているのである。企画としては面白い。

どちらも魅力的なCDだが、今日は力尽きた。聴くのはまたにしよう。・・・と言うわけで「沈没」である。


...... 2004年 6月 09日 の日記 ......
■[ NO. 262 ]
疲労、沈没
曇り。のち雨。

傘を持って出なかったので、帰りにはびしょびしょに濡れた。午前1時近くまで仕事して、メールの返信をして、沈没だ。

心配していた「ぱぐ母さん」、今日は比較的元気である。


...... 2004年 6月 10日 の日記 ......
■[ NO. 261 ]
過去への想い
曇り。蒸し暑い。

外国の古書店に頼んでおいた楽譜が届いた。4冊だが、すべて連弾物である。

楽譜が家に届くのは嬉しい。新品だってもちろん嬉しいけれど、中古には独特の嬉しさがある。思わず前の持ち主のことを想像してしまうのだ。書籍で古本は買っているが、楽譜のように前のオーナーのことを考えることはない。やはりそれは、拙者にとって楽譜ならではのことだろう。

なるほど、中古楽譜は面白い。ほとんど新品同様で、経年変化だけを感じさせるもの。逆に手垢と書き込みにまみれて、拙者の手元に届くもの。どういう訳か分からないけど、楽譜の場合、「これ、わたしが引き継ぎましたよ」っていう気持ちになるところが不思議だ。

書き込みがたくさんの楽譜。前の持ち主、相当に良く練習したんだな、ってとても親近感を覚えてしまう。それに、「こんな解釈で、この曲を弾いたんだ」って、ダイレクトに感じて。

傷一つない楽譜を見ると、「きっと大事にされてきたのだろう」って思ったりもする。

欧州のお金持ちで楽譜を大事にする人の中には、楽譜を買って、それを再度製本に出す方もいらっしゃることを、中古楽譜を買うようになって知った。ピヤノ連弾の楽譜なんて、元からハードカヴァーのものなど少ない。ところが、拙者の手元に集まってきた古い楽譜には、元のオーナーが改めて装丁させたものがいくつもある。そうした楽譜からは、持ち主の「愛」が伝わって来る。

これはピヤノ・デュオの楽譜ではないが、元々はぺらぺらの楽譜を、それは綺麗に装丁させたものがあった。見開きに使ってある用紙は、とてもお洒落でバラをあしらったものだた。その楽譜の中には若干の書き込みがあるが、鉛筆書きで控えめに綺麗に記してあった。きっとこの楽譜の持ち主、センスの良い、とてもお洒落で控えめな女性ではなかったのか・・・と想像した。そうとしか思えない楽譜だったから。楽譜はどれでも愛おしいが、こうした楽譜には、一層の親近感を持つ。そして見えない人に問いかける。「あなたは、この楽譜に何を思っていたの?」って。この楽譜を装丁に出した方は、きっと綺麗な女性であったろう、と勝手に想像する。

拙者は、顔も見えない、もしかしたらこの世にいないかも知れない前の持ち主に心の中で語りかける。「あなたが大切にした楽譜、わたし、しっかり大切にするからね」、と。

そして、どんな古楽譜を見ても、元の持ち主のことを考える。「あなたは、どうしてこの楽譜を買ったの? そこで、なにを感じたの? そして、何を得たの?」と。

今回、拙者の手元に届いた楽譜の中で、いちばん古かったものは、1867年にウイーンで印刷されたものだった。ここまで古いと、きっと何人もの方がオーナーになったに違いない。きっと、何人もの人の思いが、その楽譜にこもっていることだろう。

その楽譜に語りかける。「あなたは、どうやって、ここまで来たの? どんな人たちの手に抱かれてきたの?」。もちろん、楽譜は無言だ。問いかけには、答えない。だけど、楽譜を大切に手にとっていると、「さあ、今度は、お前に預けたよ」という、以前の持ち主たちの気持ちが伝わってくるような気がする。


...... 2004年 6月 11日 の日記 ......
■[ NO. 263 ]
総退却
雨。

疲労困憊である。通常の仕事に加えて、連載エッセイの締め切り。1300字を30分強で仕上げる。何とか間に合った。友人の某氏と、一杯呑みたくもなったが、疲れがひどいのでまっすぐ帰宅。

昨日届いた楽譜は、以下の通り。

・シューベルト:交響曲第8番「未完成」
      (ライネッケによる連弾用編曲)
・シューマン:交響曲第1〜4番
      (キルヒナーによる連弾用編曲)
・シャミナード:エール・ド・バレ Op.30
      (シュテイガーによる連弾用編曲)
・シャミナード:ピエレッテ Op.41
      (シュテイガーによる連弾用編曲)

ライネッケ編曲のシューベルトは、噂には聞いてはいたが現物と対面するのは初めてである。さらっと見たところ、ライネッケらしいピアニスティックな編曲。1867年発行の楽譜だが、140年前のものとは思えないくらい状態がいい。若干破損しているのは、致し方ないところ。拙者にとっては大変に高価だったが、「見つけたのも何かの縁」と、購入することにしたものだ。ただ、このまま置いておくと破損がさらに進む可能性がある。どこか信頼できるところで修復・再製本してもらったほうが良さそうだ。

キルヒナー編曲のシューマンは、これは比較的有名。しかし長らく絶版。手元にあるシューマン自身の編曲による、第1、2、4番、ライネッケ編曲の第3番とちょっとだけ比較。第1番の第1楽章を比べてみたが、音の配分ばかりでなく音型もかなり異なる。ここまで違うと編曲の意図(と相違)を調べるには、管弦楽のスコアを参照し考察する必要があるだろう。

シャミナードはいずれも原曲がピアノ独奏曲。原曲を全然らないので、編曲によってどのような効果が生まれたのか、まったく分からず。ちらっと見た限りでは、シャミナードらしい爽やかな曲のよう。この楽譜、「破損がひどいです。それでもよければお求め下さい。その場合それぞれ20%引きますよ」とお店からメール。「それでも良いから送って下さい、と拙者。確かに破損が凄い。ページが完全にバラバラである。でもそれぞれ10ページくらいなので、これなら自分で修復できないこともない。図書館関係にお勤めの方から、図書修復用のテープを頂いている。これを使って直すことにしよう。

と言うわけで、沈没である。


...... 2004年 6月 12日 の日記 ......
■[ NO. 264 ]
菖蒲
曇り。大変に蒸し暑い。

午前中は、沈没モード。午後からどこかへ出たくなる。たまには絵でも観よう。千葉県佐倉市にある「川村記念美術館」に足を運ぶ。ここは初めてだ。予習をしていかなかったので、収蔵品のことは分からなかった。

都心からはちょっと遠いが、道さえ空いていれば、車で1時間もあれば到着する。連弾庵からは、それよりちょっとだけ近い。森の中にあって、なかなか素敵な環境だ。収蔵品もなかなかで、1000点以上あるとのこと。絵画とあまり関係ない(厳密に言うと、あるのだが)企業が開設・管理している美術館としては立派なものである。目玉はレンブラントの「広つば帽を被った男」らしいのだが、クロード・モネの「睡蓮」(1907年版)や、ワシリ・カンディンスキー、ジョルジュ・ブラック、ルネ・マグリットなどを収蔵しているのが何とも嬉しい。1000点強のうち、常時入れ替えで100点を展示してあるとのこと。

広いお庭やきれいなレストラン、林の中の散策路などもあり、1日遊べそうだ。ちょうど敷地内の菖蒲園では、お花が真っ盛り。ここ、千葉県内の文化施設としては、お薦めである。

川村記念美術館 菖蒲園にて



さて、帰宅したら、郵便物配達の不在お知らせがポストに入っていた。おおかた「Seetmusicplus.com」からの楽譜であろう。郵便局はすぐ近くなので、自転車で取りに行く。やはりそうだった。

届いた楽譜は以下のとおり。

・フローラン・シュミット:フモレスク(連弾)
・ゴドフスキー:ミニアチュール第1巻(連弾)
・ゴドフスキー:ミニアチュール第2巻(連弾)
・ゴドフスキー:ミニアチュール第3巻(連弾)

フローラン・シュミットのフモレスクは、文献だけでは存在を知っていたが、楽譜が現役だとは知らなかった。シュミットはたくさんのオリジナル連弾曲を書いているが、現在一般に入手できるのは、そのうち半分。とてもエレガントな作風の作曲家だけに、入手困難な楽譜が多いのは残念である。

ゴドフスキーのミニアチュールは、全部で36曲からなる小品集。36曲全部、プリモが1ポジションで弾けるところが特徴だ。これなら拙者だって初見遊びが楽しくできる。以前は入手が大変に困難だったが、2年ほど前、Warner Bros.が再版し、容易に入手可能になったのである。

実はもう1冊頼んであった。
・フローラン・シュミット:デヴァダシスのダンス
である。これは連弾とソプラノ・ソロ、混声四部合唱のための作品だ。面白そうなので捕獲してみた。そうしたら届いた楽譜は、ピアノ・パートがソロに編曲されている版。これでは意味がない。Seetmusicplus.comにクレームをつけなければ。メールを書こうと思ったのだが、くたびれたので明日にする。

何通かメールの返信を書いたら眠くなってしまった。・・・沈没。


...... 2004年 6月 13日 の日記 ......
■[ NO. 265 ]
連弾のカラオケ
雨。のち晴れ。

午前中は、例によってダウン。午後から今話題の「あさって」という映画を見に行こうと思ったのだけど、昨日も外出して若干疲労があるので、来週にする。ぱぐたちの「お洗濯」をしようともしたのだが、気温が上がらなかったので、妻が「また今度」と宣言した。結局、ぱぐぱぐしたり、先日来到着している楽譜をピヤノの譜面立てに置いて、コトコトと連弾をして遊ぶ。それで1日はお終いだ。

昨日届いた、ゴドフスキーの連弾曲の楽譜には、おまけでCDがついてくる。このCD、曲をそのまま演奏したものと、セコンダだけを演奏したものを収録している。そのまま演奏した物は「模範演奏」、セコンダだけの演奏はプリモ用のマイナスワン、すなわち「カラオケ」だ。昨日も書いたけど、ゴドフスキーの曲、36曲のプリモがすべてワンポジションで弾ける。ある意味で初心者でも楽しめるのである。その初心者用(?)パートを「空」にして難しいセコンダだけをCDに収録している。

ピヤノのある部屋でこのCDをかければ、(本当にうまく行くかは分からないが)プリモがカラオケをバックに練習と演奏が楽しめるのだ。

大昔からマイナスワンはある。しかし連弾の片方・・・というのは今回初めて手にした。拙者は、この困難なセコンダを初見でバリバリ弾いて下さる方が同じ家にいるのでマイナスワンは不要だが、そうした条件の方ばかりだとは限らないだろう。その意味で、とても面白い楽譜だと思う。それに1巻〜3巻まで、どれでも12ドル95セント。内容から言ったら割安でお得である。これは、お薦めだ。
ホタルブクロ(川村記念美術館敷地にて)



...... 2004年 6月 14日 の日記 ......
■[ NO. 266 ]
かつて見た物
晴れ。爽やかだけど、暑い。街を歩くと汗が出てくる。

シャープが8月1日から発売する、45型の液晶テレビの新製品を見てきた。驚くほど鮮明な画像である。同じ薄型テレビでもプラズマ・ディスプレイ(PDP)テレビに比べて、画像は本当に綺麗だ。実は3月、ドイツで行われた「CeBit2004」でデモ機はみているのだが、じっくり本番機を見るのは初めてだ。CeBitのときも「凄い」と思ったのだけど、あらためて見ると、やはり惹かれるものがある。こうした製品を見ていると「日本の製造業、まだまだ世界でもトップではないか」と嬉しくなる。韓国製でも液晶テレビはあるが、比較したところ、画質の良さでは日本の製品の方が格段に上だ。

ただし、価格も高い。この45型液晶テレビ、100万円近くする。こんな高価なものを購入できる人は限られているだろう。目標の月間生産台数も、わずか3000台。もちろん、45型の液晶ディスプレイを生産しようとすると、工場の生産能力(このテレビは、シャープの亀山工場での一貫生産となる)から言っても、現在では限界だろうけれど。

でも、シャープの取締役の方のお話では、2005年には「1型=1万円」の価格になるという。このお話をサイズと価格に当てはめると、20型クラスの普及商品の価格は現行よりほとんど下がらないが、30型以上の大型液晶テレビになると、価格は劇的に下がることになる。100万円近くになる45型テレビだって、40万円台になるのだから。

1970年頃、「未来の家庭」という予想図がよくあった。その中に、大画面の「壁掛けテレビ」が必ずと言って良いほど登場していた。今回シャープが開発した45型の液晶テレビ、厚さは何と8.5mm、重さは30kgだ。これなら十分壁に掛けられる。子供の頃に「未来の家庭」という絵で見たテレビそのものだ。自分では買えないけれど、ちょっと幸せな気分になった拙者である。

何という名前のお花? メモするのを忘れた(沈没)
(川村記念美術館・敷地内にて)



...... 2004年 6月 15日 の日記 ......
■[ NO. 267 ]
Out of Stock
晴れ。昨日と同じ。爽やかだけど、暑い。

無茶苦茶ヘトヘトになって帰宅したら、差出人不明の、真っ白な立派な封筒が届いていた。どうやら異国からだ。開封してみたら、Boosey & Hawkesからである。

Invoiceと何やら書状が入っている。Invoiceを見て驚いた。拙者が先日頼んだ楽譜が、揃いも揃って、全部「Out of Stock」になっているではないか! このサイトで買い物をして何回にもなるが、注文全部が「Out of Stock」になったのは初めてである。正直言ってがっかりした。

添付された書状には「貴殿が注文された楽譜で、Out of Stock のものは、出版社から入荷次第お送りするので、Back Orderとさせて頂きたい」と書かれてあった。まあ、急がないので、それでもいいか、と思った拙者である。

Booseyのショップ、このBack Orderが凄い。以前、サイトでバーンスタイン「ウエストサイト・ストーリーのシンフォニックダンス」の2台ピヤノ版が出ていた。即座に注文したら「まだ出版されていません。Back Orderとさせて下さい」との書状を受け取った。で、「はい、そうですか」と放っておいたら、半年経って忘れていた頃に突然楽譜が届いた。「ようやく出版になりました。最初にご注文下さったので、真っ先に送りました」との書状が添えられて。しかもInvoiceを見たら送料はタダになっていた。そんなことがあったので、今回も気長に待つことにする。ちなみに、拙者が注文した楽譜は以下の通り。

・ショスタコーヴィチ:交響曲第5番(2台)
・ショスタコーヴィチ:交響曲第9番(連弾)
・チャイコフスキー:エフゲニ・オネギンのワルツ(2台)
・ディーリアス:幻想的舞曲(2台)
・ケテルビー:修道院の庭にて(連弾)

何だか、無茶苦茶な選曲である。・・・沈没。

桔梗 (川村記念美術館・敷地内にて)



...... 2004年 6月 16日 の日記 ......
■[ NO. 268 ]
ケータイをお財布に
晴れ。

湿度が低くて爽やかだが、日差しが強いので、外を歩き回ると猛烈に汗が出てくる。今週は若干の会議以外は自由に行動できるので、月曜から好き勝手に取材に回っている。

取材は楽しい。新しいことを吸収できるし、いろんな方とお喋りができるから。今日は何件か回ったうちに、NTTドコモの「iモード FeliCa」の記者発表会があった。もう、あちこちで報道されているから御存知の方も多いだろうけれど、携帯電話の中にICチップを組み込み、電子マネーやチケットの自動発券、コンビニでの支払いなどに、それぞれの端末に携帯電話をかざすだけでできるようにするサービスだ。コンセプトは「ケータイをお財布に」。

でもそれだけではない。面白いアプリケーションとして、マンションの入り口と各戸のドアの鍵に、携帯電話を使う・・・というのがあった。物理的な鍵ではなくて、携帯電話に組み込んだ電子的な鍵を読み取り口にかざすことで鍵を開けるというものだ。それからこのICチップ組み込み電話を社員証に使うというのも、なかなか面白い。携帯電話で、出退勤管理や入退出管理までやってしまおうというのである。これ以外のアプリケーションも、無限に考えられる。このことは、後で某月刊誌のエッセイで書くことにしよう。

しかし、携帯電話の用途も広がったものである。でも、これが良いことかそうでないか。便利の裏側には、危険と不便、それにある意味での“不自由”も隠されているのである。いろいろなデモンストレーションを見せて頂きながら、そんなことを思った拙者だ。
NTTドコモのCFに登場している3人娘



...... 2004年 6月 17日 の日記 ......
■[ NO. 269 ]
I love you !
晴れ。やや蒸している。

「面白い楽譜がありますよ」。ある方が、そう仰って、拙者に1冊の楽譜を下さった。ソプラノ、メゾ・ソプラノ(またはアルト)、テノール、バスの4人と、ピヤノ連弾のための曲だ。

その名も「Liebeslied」(愛の歌)。・・・といってもブラームスではない。作曲者は、J.コリリアーノ。1996年の作品だ。これが笑える。

ワルツなのだが、完全にブラームスのパロディ。声楽パートも連弾パートも大変に充実しているのだが、逆にそれが笑いを誘う。あまりにも面白ので。しかも歌詞は極めて簡単。何と「I love you」だけ。そう、この曲は約4分の演奏中、声楽パートは、旋律を変え、音型を変えて、ひたすら延々と「I love you」と聴衆に語りかけるのだ。これは愉快! これ単体で演奏しても楽しいだろうけれど、ブラームスの「愛の歌」をやった後で、アンコールにやったら、もっと楽しいだろうな。ほとんど、世界の中心で愛を叫ぶような気分になることだろう。

さあ、拙者もやってみようかな。「I love you !」。みなさんも、やってみませんか?

これ、何だろう? 本体から手が何本も出ている…
(川村記念美術館・敷地内の遊歩道にて)



...... 2004年 6月 18日 の日記 ......
■[ NO. 270 ]
未明の急患
晴れ。暑い。

珍しく、仕事以外で午前0時時半帰宅。かなり酔っぱらっている。それでも呑み足りなくて、また呑んだ。Webサイトを巡回して、2時半就寝。メールの返信を書きたかったが、キーボードの打ち間違えがあまりにも多いので断念する。

午前3時半、ウトウトしているところを妻に起こされた。「ぱぐ母さん」の具合が悪いとのこと。一緒になって面倒を見るが、とても苦しそうだ。からだのどこかが痛いらしい。獣医さんからもらっている鎮痛剤を飲ませると、しばらくして落ち着いた。

「ぱぐ母さん」、一応は元気なのだが、時折具合が悪くなる。その頻度も高くなった。とても心配でたまらない。

連庵庵の近くで見つけた。何の花だろう?



...... 2004年 6月 19日 の日記 ......
■[ NO. 271 ]
ホームミュージック?
晴れ。暑い。

妻が2台ピヤノのための小品を練習している。曲は、ワルトトイフェルの「スケートをする人々」。この2台用のための編曲だ。これがなかなか面白い。大変に効果的な2台用編曲である。

ワルトトイフェルと言うと「何だ、ホームミュージックじゃん」と、バカにする方もいらっしゃる。でも拙者は、面白いと思う。こうした作品を無理に嫌う必要はないのではないだろうか。これはこれで、とても楽しいのである。しかし、この曲の2台用編曲があるとは、さすがに知らなかった。連弾用なら、どこかで見たような記憶があるけれど。

今日は久しぶりに、ぱぐたちを洗った。バッチかった。ぱぐたちは普段でも毛が抜けるのだけど、「洗濯」をして乾かすと、いっそう抜ける。家中が毛だらけになる。ま、仕方ないか。

これは、糸瓜ではない。(連庵庵テラスにて)




...... 2004年 6月 20日 の日記 ......
■[ NO. 272 ]
明後日
晴れ。台風が近づいている影響か、非常に蒸し暑い。

ぱぐたち、ピヤノ、それに楽譜を守るため、除湿・冷房をガンガンかける。空調の室外機のところにかる排水口からは、後から後から水が出る。1時間ちょっとで1.5リットルの洗面器がいっぱいになる。大変な湿気だ。これだけの湿気が室内に漂っているかと思うと、何だがゾッとする。

午後から映画。「The day after tomorrow」だ。災害物や怪獣物の映画が大好きな拙者にとって、これは是非とも見なければならぬ。大人気とあって、映画館は人でいっぱいだった。

ストーリーそのものは、至って単純である。ネタばらしはしないが、同行の妻は「最初から先が見えちゃって、ドキドキしないのよね」と仰る。「ハリウッド映画の典型だわ」。そう、それでいいのである。

この映画の面白さは、極論にはなるが、気象理論の組立と、発生する災害を、高度な計算力学を使って表現するか、なのである。突拍子もないことかも知れないが、この映画で表現される異常気象は、ものすごく低い確率だけど理論的には起こりうる(重ねて言うが、もの凄く極端に低い確率である。あくまでも理論上)。

そうした気象理論的な背景があり、今度はそれをどうやって数値シミュレーション+コンピュータ・グラフィクスを用いて、いかにリアルに表現するかだ。その点では、大変に成功した作品であろう。冒頭から、コンピュータ・グラフィクスが大活躍だ。南極の氷が大規模に割れる。これは剪断破壊のシミュレーションだ。3次元の有限要素法を非常に効果的に使っている。New Yorkの大規模高潮。これは計算流体力学の結晶だ。具体的には差分法を使い、3次元の海面挙動をシミュレートしている。この映像効果は素晴らしい。

LAの巨大竜巻による建物の崩壊は、流体計算で得られた応力を建物モデルにぶつけ、3次元の有限要素法で建物の崩壊と飛散をシミュレートする。要は、スーパーコンピュータをぶん回して映像を作る訳である。それを実写と重ねて臨場感を出す。見ている側には、どこからどこまでがコンピュータ・グラフィクスで、どこからが実写か分からない。計算力学とコンピュータ・グラフィクスによる映像表現も、ここまで来たか、という感じだ。これは、是非とも大勢の方にご覧頂きたい。

ストーリーは見え見えかも知れないけれど、ローランド・エメリッヒ監督、良い味を出している。主人公のジャック・ホール教授役・デニス・クエイドはカッコ良すぎ。でも、演技が巧くてさすが。ホール教授の息子サムを演じたジェイク・ギレンフォードは、時間を追うごとにサムが格好良くなって見えていくのを上手に演じていた。ホール教授の危機説に最初から共鳴する英国の気象学者・テリー・ラプソン教授は英国の名優イアン・ホルムが好演。これは渋くてカッコイイ。出色だったのは、ワンちゃんを連れたホームレス役のゲレン・プラマーという役者さん。これは良かったね。

何はともあれ、映像のからくりが分かっていても、楽しめた映画だった。惜しむらくは、でっかい雹が降る東京のシーン。あれじゃ、上海の下町か台北だ。エメリッヒ監督、これはアウト。まあ、外人の印象にある東京なんて、所詮あんなものなのかも知れない。

それから日本語題名は、原題にある「The」が抜けている。これ、とっても変な題名になってしまっていると思うのは、拙者だけであろうか。

梅雨の狭間に・・・でんでん虫はいないかな?



...... 2004年 6月 21日 の日記 ......
■[ NO. 273 ]
微妙な金額
曇り。のち雨。一時激しく降る。大変な湿気。

台風が近づいた。首都圏にはそれほど大きな影響は与えなかったが・・・もっとも新幹線や空の便が大混乱したので、この表現は当たっていないかも知れない・・・一時期、雨と風がいきなり強くなった。拙者はオフィスにいたからさほどのこともなかったが、“被害”に逢ったのは妻とぱぐたちだ。雨が小降りだったので、午後のお散歩に出てしばらく経ったら、いきなりドカンと来た。妻もぱぐたちも、ずぶ濡れになったそうだ。

ちょうどお散歩時だったらしい。周辺から近くの公園に、ワンワンたちが大勢散歩に出ていたとのこと。この人たち、みんなずぶ濡れになったようだ。

さて拙者、ピヤノ・デュオに関する物なら、何でも興味を持っている。先日、フローラン・シュミットの「Dance de devadais」について、この「日乗」で触れた。ソプラノ・ソロと混声合唱、連弾のための作品である。注文して届いた楽譜は、ピヤノ・パートがソロに編曲されたものだった。ディーラに「文句メール」を書く・・・というところまでは、こちらで書いた。その後日談。

ディーラからは、きちんと返事が来た。「出版社に問い合わせたところ、連弾用楽譜は絶版とのこと。ついては、お手元の楽譜がお気に召さなければ、送り返して頂きたい。代金は返却し、送料もこちらで持つ」とのまことに丁重な返事(これは要約である。本当はもっと長い)。ここで拙者は考えた。代金は日本円で800円くらい。送料も400円くらい。そのためにメッセージを添えてきっちりと梱包し郵便局まで運んで「これは印刷物である」と指定し送る手間の方が大変だ。散々迷った末、送り返さないことに決めた。海外のオンライン通販をやっていて、これもリスクのひとつと考えたからだ。

そこで、先方にメールを書いた。「連弾版がないなら、この楽譜を受領します。他の品物と一緒に代金をクレジットカードにチャージして下さい」と。そして、こう書き加えることも忘れなかった。「4手版がないなら、その旨を、しっかりサイトに明示しておいて欲しい。そうでないと、間違えて買う奴が出るぞ。今後の表示改善を望む」。

ただ、これが1冊5000円の品物だったら、どうだろう? 拙者、必ずや、送り返して絶対にお金を返してもらっていたと思う。送料合わせて1000円ちょっと・・・というのは微妙な金額だ。

・・・と、こうしたことがあったにも関わらす、日夜「何か、面白い物はないかな」と、あちこち彷徨っている拙者である。


...... 2004年 6月 22日 の日記 ......
■[ NO. 274 ]
捜し物
晴れ。

台風一過。蒼く澄んだ空。そして熱風。まるで夏を予感させるようなお天気だ。妻は、「もう梅雨は終わりだよ。もう夏だ」と言うが、拙者はそうは思わぬ。また湿った天気がぶり返すことだろう。

心配なのは、ぱぐたちだ。元気は元気なのだが、老齢でだんだん弱ってきている。この夏が越せるかどうか、どうにも気が重い。「夏だ、サマーだ、燃える恋」などと、陽気に振る舞っている事態ではないのである。もっとも「燃える恋」などしたら、妻にぶたれるであろうけれど。

さて、雑誌のバックナンバーを探しているのだけれど、どうしても見つからないものがある。芸術現代社の「音楽現代」で1984年に出たもので、「わたしの選んだ名曲50選」という特集が載った号だ。84年の、どの号かは分からない。これがどうしても読みたい。そこで芸術現代社に勤めている友人に「これ、ありませんか?」と聞いたところ、探して下さったのだが、社では保管していないとのこと。これには困った。

国会図書館に行けばいい、と言う意見もでるだろうが、それはあそこのシステムをよく分かっていない人の発言だ。号が特定できていない雑誌を閲覧するのがどれだけ難しいか。

何故、これを探しているかと言うと、以前、親しくお付き合いさせて頂いた、音楽学者の野中映先生が、選者の1人になっていて寄稿しているからである。選者は51人いて、みなそれぞれ「名曲50選」を出したのだが、野中先生のが秀逸だった。何せ選んだのが、「クシコスの郵便馬車」「金婚式」「カッコーワルツ」「森の鍛冶屋」、もちろん「乙女の祈り」も含まれている。概要は分かっているのだけれど、どうしても原文が読みたい。

野中先生とは、だんだん疎遠になってしまい(拙者の責任である)、拙者が何度か引っ越すうちにご住所を書いた名刺を紛失してしまった。そのため、直接連絡を取ることができないのである。

この号をお持ちの方、ないしは野中先生のご連絡先を御存知の方、是非ともご一報いただきたい。この号、どうしても読みたいのである。


...... 2004年 6月 23日 の日記 ......
■[ NO. 275 ]
週の半ばで疲労困憊
晴れ。

やや蒸し暑い。

1日中、仕事に追われる。「演奏会情報」の更新もしたいが、時間なし。ただし、7月のピヤノ・デュオ関連演奏会は、意外と少ないが。

午前2時。ようやく業務終了。明日は午前6時に起きなければならないので、もう確保できる睡眠時間が4時間を切る。即座に沈没。


...... 2004年 6月 24日 の日記 ......
■[ NO. 276 ]
洞爺湖
曇り。

今日は北海道虻田町、「ザ・ウィンザーホテル洞爺」にいる。某外資系有名企業が、日本の経済記者を集めて、ある業界に関する勉強会を開いた。それに出席だ。

「ザ・ウィンザーホテル洞爺か。いいな」と妻。いいも何もあったものではない。こちらは仕事だ。それに朝が早くて、出がけから躓く。普段なら自転車で最寄り駅まで行くのだが、それだと自転車を一晩駅前に置くことになるので、バスで行くことにする。しかし、バスは待てど暮らせど来ない。おかげで電車を2本、やり過ごしてしまった。おかげで、羽田での集合時刻に全然間に合わなくなった。

集合時刻どころか、フライトの時刻にも間に合うかどうか。途中の乗り継ぎは、必死で走る。浜松町まで来たところで、拙者の搭乗券を持って羽田で待ち合わせている広報代理店のミカさんに電話。「今、モノレールに乗ります!」「きゃー、急いでぇっ!」。羽田に着くと、またマラソンしながら電話。「今、地下のエスカレーター、駆け上がっていますっっっ!」「頑張れ!かずみぃ!」。フライト7分前にカウンタ到着。・・・その後のことは、もう書きたくない。空港の長い通路を走りながら、ミカさんがひとこと「朝から疲れていては、もちませんよ。今日の勉強会は盛りだくさんで強行軍ですから」。何だか、目の前が真っ暗になった。

飛行機とバスを乗り継いでホテルまで行く間、ずっと沈没していた。

13:15から勉強会。何と延々6時間で、休憩は15分。内容は面白いが、ちょっとくたびれる。勉強会の後は20分休憩で、続いてディナーをしながらのディスカッション。拙者のテーブルには、招待側の日本総支配人(外人さん)、副総支配人のほか、取材側も拙者を除き偉いさんばかり全部で7人。これが延々2時間半だ。面白かったが、疲れた。

これが終わって、今度はバーへ場所を移して雑談だ。ここでのお喋りも楽しかった。ディナー中も散々ワインを頂いたのだが、まだアルコールが欲しくてヘネシーのXOを浴びるほど呑んだが、まったく酔わなかった(酔えなかった)。みんなでワイワイやっているうち、隣に座った広報マネジャでイケメンのダニエルさんが「明日は、朝、露天風呂にゆっくり入って、その後、乗馬でもやろうかな」。何? 乗馬だとぉ? すると拙者の向かいにいたダニエルさんの部下で美貌のイザベルさんが「乗馬なら、わたしもやります!」。勉強会の翌日は(1)観光、(2)ゴルフ、(3)朝そのまま帰る・・・しか用意されていなかった。拙者は忙しいので「朝そのまま帰る」組に入っていた。乗馬やるんなら、仕事さぼったのに! しかし既に遅し。仕方ないので、イザベルさんと乗馬の話で盛り上がる。

午前1時。部屋に引き上げる。シャワーを浴びるが頭が起きていて眠れない。ミニバーから麦酒を出して、1時間ほどウダウダしてから眠る。

・・・と言うわけで、洞爺まで来ながら、真面目に勉強会だけ参加して帰ることになった拙者である。みんなから「馬鹿正直」だと言われた。
拙者のお部屋。大きなダブルベッドが2つ。
そこに1人。部屋が広くて、画面に全部収まらなかった。



...... 2004年 6月 25日 の日記 ......
■[ NO. 277 ]
馬鹿正直に帰京
曇り。霧が濃い。

朝6時起床。眠い。急いで身支度をして、朝食。ホテルから空港まで、完全に沈没モードだった。

早めに新千歳に着く。時間があるので、お土産を探す。昨夜、オフィスに電話したら同僚のモリ君が「六花亭のチョコレートを買ってきて」と言ってたな。それはいいが、妻が「夕張メロンを買ってくるように」とも言ってた。で値段を見て驚いた。1玉4000円もする。しかも妻は果物をあまり食べる方ではない。そこで家も六花亭にする。お土産屋さんで、ちっこいクマさんがこっちを見ていたのでそれと、白檀でできたちっこいフクロウのお人形も買った。

・・・東京に戻ってきたら、やはり暑い。夜8時まで仕事をするが、今夜も家で仕事だ。早々に退散する。

最寄り駅を下りると雨だった。駅まで車で迎えに来た妻に「お土産、買ってきたよ。六花亭のお菓子だよ」「あれ、夕張メロンはどうした?」「1つ4000円もしたんだよ。それに、あなたいつも果物食べないって言ってるじゃない」「いいや、頂き物なら食べるんだよ」。

帰宅してバッグからクマさんとフクロウさんを取り出したところ、「おやぁ? 自分の分だけ買ってきたね。あ、このフクロウさん、可愛いじゃん。わたし、もらった」。白檀のフクロウさんは、取り上げられてしまった。

社の事情があって、夜、0時を過ぎて、原稿がどんどん原稿が入り出す。仕事を終えたのが午前2時。ようやく沈没。

新千歳空港で見つけたクマさん



...... 2004年 6月 26日 の日記 ......
■[ NO. 278 ]
沈没
曇り。蒸し暑い。

ここ数日の睡眠不足が祟って、眠くてたまらない。ぱぐたちの散歩に出た他は、ほとんど1日中眠っていた。

夜になって多少活動を始めたが、この前、近所の大きなショッピング・モールで買ってきた仁勇(鍋店)の「純米大吟醸・吟の舞」を呑んだら眠くなってしまった(これは、大変に美味しいお酒で、お薦めである)。結局若干の仕事をして、そのまま沈没。


...... 2004年 6月 27日 の日記 ......
■[ NO. 279 ]
早朝起床
曇り。蒸し暑い。

昨夜は23時前という、どんでもない早い時刻に眠ったので、起きるのも早かった。午前5時である。からだは起きているが、頭は完全に眠っている。仕方ないので、布団の中でぱぐぱぐする。

6時を回った頃、階下でドタバタ騒ぐ人たちがいる。のっそり起きあがって、階段を下りたら、ゆみこ寝室の前で「あかね」が、ボサ〜っとしていた。寝室のドアを開けて「どうしたの?」と聞くと、「朝だぁ! 朝だぁ! と騒ぐ奴がいるので追い出したんだっ! もう少し眠らせてくれ〜!」。

仕方ない、あかねの相手でもするか。あかねは「疾呼したいので外に出してくれ」という。連弾庵のキャット・ヘッドの庭に出したら、これでもかっ! と言うくらい疾呼をした。

7時過ぎ。みんなが起きてきて、散歩だ。「ぱぐ」も「あかね」も散歩はしたいけど、あまり歩きたくはない。仕方ないので、朝から例の「自家用車」だ。散歩が終わったら、急激に眠気が襲ってきた。「ぱぐ」が「一緒に寝よう」というので、かずみ寝室で思い切り寝る。階下で、ゆみこがピヤノを弾いているのが、心地よく聞こえる。ただし、2台ピヤノの片方なので、何となく変だ。

・・・何だかんだあって、平穏に過ごした日曜だった。夕方、近所に薩摩地鶏を出す料理屋兼飲み屋で夕食。仕事があるというのに、珍しい焼酎を呑みすぎた。必死で午前2時まで頑張って、沈没だ。

午後の散歩は、暑くて死ぬぜ!



...... 2004年 6月 28日 の日記 ......
■[ NO. 280 ]
ドイツレクイエム
曇り。蒸し暑い。

早朝から仕事。眠くてたまらない。またも睡眠時間は4時間だ。

それはそれとして、ブラームスの「ドイツレクイエム」である。
普段聴いているのは管弦楽+声楽版だ。ちょっと必要があって、いろいろ調べていたら---前から分かっていることが大半だったが---「ピヤノ・デュオ」という側面で4つの版が存在することが把握できた。

(1)連弾・声楽なし
(2)2台・声楽なし
(3)連弾・声楽あり
(4)2台・声楽あり

いずれもブラームス自身の編曲である。(1)で一般の眼に触れるのは、G.Schirmerから出ている版。ところが、その他にCarusというところから出ているのもある。この2つの出版社から出ているものは、同一なのだろうか? ちょっと調べてみたくなった拙者だ。

(2)は、やはりCarusというところから出ている。カタログなどによると(1)とは全然別物とのこと。ちなみに連弾版より2台版の方が安価だ。全部購入して差異を調べてみたいけど、何となく馬鹿馬鹿しい気もする。

皆さんだったら、比較してみたいと思いますか?

ちなみに拙者の調べ方が悪いのだろうけど、(3)と(4)は、どこから出てるか分からない。これも1度参照してみたいのだが、出版元を御存知の方は、いらっしゃらないだろうか。んもし御存知だったらお教え願いたい次第である。


...... 2004年 6月 29日 の日記 ......
■[ NO. 281 ]
白熊
晴れ。時々曇り。恐ろしく蒸し暑い。

コンサートはほとんど行かない拙者たち。それなのに、不幸にしてバッティングするケースがある。片方に行って、片方に行かない・・・って、行かなかった方の方に、とっても申し訳ない。さすがの拙者たちも、同時刻に2カ所に現れるのは難しい。行かれなかった方には、せめてお花とメッセージを送ってお許し頂くことにしよう。

「かずみ、見つけたよ! 見つけたよ!」。帰宅するなり、ゆみこがはしゃいでいる。「思わず買って来ちゃった」。まさか、拙者が欲しがっていた、某ブランドの時計ではあるまいな。それとも、ゆみこが貴重な資金を吸い取られている、フリフリの某ブランドのお洋服か? そんな贅沢などできる拙者たちではないのであるが・・・。

ゆみこが見つけてきたのは、「白熊」である。アイスクリームの親戚。100円。

白熊。

諸兄諸嬢は御存知であろうか。日本国九州にルーツを持つ、アイスクリームともかき氷とも親戚の氷菓である。以前、友人の「くるくるぱみん」さんのサイトで、ぱみんさんたちと「燐寸先生」が話題にして、掲示板で大いに盛り上がっていたものだ。

何でも、アイスクリームとかき氷をぐちゃぐちゃにして盛り上げて、フルーツでトッピングしてコンデンスミルクを配したものらしい。「本家」では大きなグラスに山盛りになって出てくるそうだが、コンビニではパッケージ化したものを売っているとのこと。

なかなか見つけられなかったのだが、遂に発見に至ったのである。パッケージには大きく「九州名物」と書いてある。メーカーのロゴを見ると、一瞬「森永製菓」かと思った。ところが違う。「丸永製菓」である。まことにそっくりで、大変に紛らわしい。まあ、拙者たちにとっては、どうでもよいことなのであるが。

やっと見つけた「白熊」。どんな味がするのだろう? 今週末にでも味わってみることにする。

でも、九州の皆さん、「白熊」って、一般的なのですか?

ゆみこが捕獲してきた「白熊」。
九州名物」と明記してある。
メーカーのロゴは「森永」にそっくりだが「丸永」だ。



...... 2004年 6月 30日 の日記 ......
■[ NO. 282 ]
蒼い薔薇
雷雨。のち曇り。猛烈な湿気。

「青いバラ」。諸兄諸嬢も御存知の通り、「青いバラ」というのは「不可能」を示す代名詞である。そう、バラは、どんなに交配を重ねても、決して青い花はつけることはないのだ。

具体的に言うと、こうだ。バラの栽培の歴史は5000年前までさかのぼれるが、色素発色による青いバラはこれまで存在しないとされていた。バラの花では、「デルフィニジン」という花弁の青色色素を作るために必要な酵素「フラボノイド3'5'-水酸化酵素」という遺伝子が機能していないためである。このため、どんな工夫をしても、青いバラの開発は不可能とされていた。

ところがだ。このほど日本の研究者が、遂に「青いバラ」の開発に成功したのである。恐るべし、日本企業!

「青いバラ」を開発したのは、サントリーである。そう洋酒メーカーのサントリー。サントリーは「青いバラ」を子会社でオーストラリアのバイオベンチャー、Florigene社と共同で、遺伝子組み替えを使って開発した。従来の交配技術による青いバラとは異なり、「デルフィニジン」での優れた発色が得られたという。

サントリーは、1990年に青いバラの開発に着手。パンジーから取り出した青色系色素を作る遺伝子をバラに組み込み、このほど、デルフィニジンだけで発色させることに成功したのだ。

・・・とこんなふうに書くと「何が凄いの?」って思われそうだが、実はバイオテクノロジー分野では(園芸分野でもそうかも知れない)、大ニュースなのである。拙者はこうしたニュースが大好きなので、仕事でやってる某巨大経済・産業ニュースサイトでは、トップ記事として扱わせて頂いた。それだけ、ニュース・バリューがあるのだ。

ところで「青いバラ」・・・と聞いて「どんなものだろう」と、サントリーの広報部から写真を頂いた。これが、それ。
サントリーが開発に成功した「青いバラ」



うーん。どう見ても「青」より「紫」に近い感じがするけど・・・ま、青に見えないこともないね。とにかく凄いニュースには違いない。

それはそれとして、日本の会社も、まだまだ元気だね。こういうニュースを聞くと、何だか嬉しくなる。